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金髪の天真爛漫娘

 聖ナカル法国に向かう為、馬車に乗り込んだ俺とソフィアは、見送りに来てくれたお互いの家族の振舞いに顔赤くさせていた。

 主に俺は母さん、ソフィアは父のナルサスさんの盛大な見送りのせいで、羞耻が抜けない。

 法国へは国境を超えての移動になる為、この町から大きな都市へ出て、そこから王国と法国を定期的に行き交う馬車に乗り換えなければならない。

 経由する大きな都市──“マルサイム”へと行く為に、日に五本ほど町から出発する馬車に乗る。

 馬二頭を使って引く大きな車輪の付いた馬車内は、相乗りになっていて最大で八人の人間が乗れるぐらいの大きさをしていた。

 すでに二人の乗客がコの字型に作られている席の一角に座っていて、その二人に軽く挨拶を交わしながら空いてる席に二人で並んで腰を下ろす。

 外からは、ナルサスさんが大声を出しながらソフィアの名前を叫んでいて、母さんが泣き叫びながら俺の名前を呼んでいる。

 中にいる乗客二人がギョッとした表情をしているが、並んで火照る顔を晒している俺達を見て悟ってくれたのか、微笑ましげに見つめられてしまった。


 俺達が乗ったのを最後に出発した馬車は、道中何事も無く、半日で中継地点であるそこそこ大きい街──“バスリス”に辿り着く。

 昼前に出発したので、着いたのは日が暮れ、夜になろうとする頃。

 バスリスで宿を取った俺達は、明朝の日が上り始める早い時間帯からの出発になるにも関わらず、夜まで語り合ってしまい、寝不足のままマルサイムへと向かう馬車に乗るはめになった。

 マルサイムまで終日掛かるというのに眠たそうに欠伸をする俺達は、乗り合わせた中年の女性に、「あらあら」と言われてクスクス笑われる。

 馬車に乗る度に笑われる俺達は、顔を赤くさせながらも、ツイていないとため息を吐いて肩を並べて脱力した。


「やぁ、ソフィアじゃないか!」


 もうすぐ出発するという時に乗り込んできた赤茶色の短髪をした若いワイルド系イケメンが、ソフィアを見付けると人好きするような笑顔で声を掛けていた。


「お久しぶりです、ガウスさん」


 微笑みながら返したソフィアが、小さく頭を下げる。


「どこか出掛けるのかい?」

「はい、ギルドの仕事で聖ナカル法国に」

「さすがは、ギルド期待のSランク様。各国から引っ張りだこだね」

「い、いえ、そんな……」


 ガウスと呼ばれたイケメンからの賛辞に、ソフィアは恥ずかしそうに小さく手を振りながら謙遜した。

 そのまま不自然のないよう声を掛けながら、さり気なく空いているソフィアの左隣に座ったイケメンのテクニックに、俺は感嘆の声を漏らしてしまう。

 すると、俺の存在に気づいたガウスさんが、首を傾げながらこっちを見てきた。


「彼は?」

「わたしの幼馴染のシオンです。

 別の用件なのですが、法国に行くので一緒に向かってます」


 並んで座っていたので俺の事を連れだと判断したのか、そうガウスさんがソフィアに問いかけると、紹介をしてくれる。


「初めまして、シオン君。

 俺は冒険者のガウス、よろしく頼むよ」

「は、はい。シオンです。

 よろしくお願いします」


 ガウスさんからイケメンスマイルで自己紹介された俺は、少しどもりながらも無難な挨拶を返した。

 そのまま右手を差し出してきたので、しっかりと握り返して握手を交わす。

 なんとなく、握る手に力が入っているような気がするが、気がする程度なので気にしないでおく。俺に宣戦布告したところで、何の意味もないし、勝てる気もしない。

 なのでガウスさんから勘違いされないよう、軽くソフィアの方に視線を向けてから向き直り、ガッカリと肩を落として小さく首を振る。

 その俺の素振りで理解してくれたのか、笑みを強くしたガウスさんは力を緩めてくれたのか、握られている右手の負荷が減った気がした。


 あぶねー。また、勘違いされたわ。

 でも、こういう時の対応なら完璧だ。何度も経験があるからな。

 ソフィアと一緒に居ると、どうしても「お前には負けない」アピールをされる。

 俺をライバルとして認識してくれる男気は嬉しくもあるが、迷惑でもあるので出来ればやめて欲しい。

 平和主義な俺は、極力人と争わないよう生きていきたい。

 ソフィアに迷惑を掛ける男は全力で対応するが、それ以外は穏やかに見守らせて欲しい。

 それにしても、もうイケメンとの出会いがあるのかよ。法国に着く前からこれじゃ、あっちに行ってからも凄そうだな。

 でも、ソフィアは何度も行ってるみたいだか、あらかたのイケメン金持ちとは知り合いになってるはずだ。だから、ソフィアが一年間暮らしていく中で、そのイケメン達にはうまく好感度を稼いで攻略して欲しい。


 手を離して握手を終えた俺は、そんな事を考えながら少し横にズレてソフィアから距離を取る。

 その俺の動きに気づいたのか、ソフィアがチラリとこっちを見てくるが、ガウスさんから話を振られたのですぐに視線が外れた。


 それからは、時折俺に話を振りながらも、大体は二人で会話を続けている。

 話の中で出てきた情報によると、ガウスさんはAランクの冒険者みたいだ。ギルドからの要請で、マルサイムのやや北西の方角に馬車で丸一日掛かる距離にある【グランド・ヴォルカン】という、休火山に行くらしい。

 なので、この馬車で半日ほど移動して、途中の地点で降りて、また別の馬車に乗り換えるという話だ。他の冒険者も別の街のギルドから、個別に移動してきて現地集合になっているらしい。

 結構な冒険者が集められているそうで、なんでも、休火山の火口付近で【フレイムサラマンダー】が暴れていて、近隣の村が困ってるとか。

 噴火する可能性があるのかとびっくりしたけど、その心配は全くないらしい。ただ単に、火山での採掘作業に支障が出るというので、討伐依頼が出されたみたいだ。

 その程度のモンスターが火口で暴れるぐらいで、なんでたくさんの冒険者が必要なのかわからないけど、多分とんでもない大量発生をしてるんだろう。だから、わざわざAランクの冒険者まで招集して討伐する事態に発展したのかもしれない。


 隣の会話に聞き耳を立ててる俺は、二人で旅をしているのに、ぼっちになるという珍しい体験をしながら、馬車が出発するのを待っていると、金髪の少女が慌てて飛び乗ってくる。

 その少女が乗ったことを確認した御者のおじさんは、中に出発の合図を送ってから馬車を走らせた。


「げぇっ?」


 余程急いで走ってきたのか、膝に手をついて呼吸を整えている少女の顔に覚えがあった俺は、思わず首を絞められるような声を上げてしまった。

 そんな俺の声を聞いたソフィアとガウスさんが、不思議そうにこっちを見てくる。そして、ソフィアが首を傾げながら声を掛けてこようとしたところで、息が整ったのかキョロキョロと座る席を探していた少女が、びっくりした顔で俺を指さしてきた。


「ああ~~! シオぉ~~ン!!」


 そう、狭い馬車の中で叫びながら走ってきて、俺が座る手前で踏み切って飛び、空いている右隣の席にドスンッと着席した。

 明らかなマナー違反の迷惑行為に、乗り合わせる乗客の全ての目が向けられているが、全然気にした樣子のない少女は、俺の腹に顔を寄せる形で抱きついてくる。


「暴れんな! 抱きつくな!」

「いいじゃぁ~ん。久しぶりだねぇ~、シオぉ~ン」


 腰までガッチリと腕をまわして頬ずりしてくる少女の頭を掴んで離そうとしながらそう言うが、なかなか力が強くて離れない。

 しばらく格闘していたが、ようやく気が済んだのか腰にまわされていた腕が外れ、上体を起こしてた少女がニコリとした笑みを向けてくる。


「太ももに押し付けてた、あたしの胸の感触はどうだった?」

「しらねーよ!!」

 

 恥ずかしげもなくとんでもない事を聞いてくるので、思わず大声で言ってしまう。

 そこで、ハッとなった俺は呆然と見ている中年の女性に頭を下げて謝った。それに、「最近の若い子は凄いわね」とクスクス笑いながら皮肉を言うと、気にしてない素振りで軽く手を振り、読んでいたであろう膝の上に載せた本を眺めはじめる。

 女性がそこまで怒っていないことに、ホッ胸を撫で下ろすと、チョンチョンと左肩を叩かれた。

 叩かれた方──ソフィアが座る方に顔を向けた俺は、背筋が凍った。


「どちら様?」


 俺が顔を向けるとすぐにソフィアが、そう聞いてくる。

 口は笑っていた。

 だけど、目が笑ってない。

 そしてよく観てみると、口は笑っているというより、どこか引き攣っているように見える。

 そしてなにより、恐ろしい。もう、怖いを通り越して、恐ろしい。

 何故だか知らないけど、このまま殺されそうな気がした。


 こえー。

 なんで? すげー、こわい。

 騒いでたこと、そんなに怒ってるの?

 でも、俺じゃなくて、コイツに怒ってくれよ。どちらかと言うと、俺も被害者の側だよ。とばっちり受けて、おばさんにも『最近の若い子は、(公共機関で恥ずかしげもなく迷惑行為をするからある意味)凄いわね』って皮肉言われちゃったじゃん。

 絶対あのおばさん、家族とか知り合いに今日の事話しちゃうよ。しかも、イケメンと美少女の中に凡顔が一人居て浮いてたって、笑われちゃうよ。

 唯でさえ、美少女のソフィアが居るだけで注目を浴びるのに、イケメンのガウスさんも増えて更に注目度が上がってる。そこに、この天真爛漫少女が加わって暴れてたら、見てくださいと言ってるようなもんだ。俺はもっと、静かにゆったりとした旅を楽しみたいんだ。

 ……あっ! もしかして、ガウスさんといい雰囲気だったのか? それを邪魔されて怒ってんのかな? 楽しそうに話してたし、空気読めよ的な感じで怒ってるのかな?

 ど、どうしよ? 助けてガウスさん!


 そう助けを求めるようにソフィアの隣に居るガウスさんに目をやるが、複雑そうな表情をしたまま、関わりたくなさそうに視線を外された。

 多分、逃げたんだ。

 でも、それは責められない。だって、俺も同じ立場だったらそうするから、気持ちがわかってしまう。


「初めまして! マリナです!」


 どうすればいいのか分からず、固まったままの俺の後ろから、右肩に両手を乗せてひょっこりと顔を出した、件の少女──マリナが、ソフィアに向かって満面の笑みで名乗る。


「ソフィアです」


 首を傾けながらニコリと笑うと、ソフィアも自己紹介をした。

 さっきまでよりはまともな笑顔になったが、未だに恐ろしい雰囲気を纏ったままである。その為か、愛想の良いソフィアにしては、なんとなく素っ気ない返しだった。

 そんな、ソフィアが放つ異様な雰囲気に気づいていないのか、はたまた気づいていて気にしていないのか、マリナは全く怖がってる樣子はない。呑気に記憶を掘り起こすような顔を向けて、首を傾げながら俺の横顔を見つめてくる。


「ソフィアさんって、シオンの幼馴染の?」

「ぉ……おお、そうだ」


 そう、どもりながら答えた俺は、ソフィアが恐ろしい事と耳元で話しかけられる事との、二つの要因で動揺してしまい狼狽える。

 マリナは、俺がよく話題に出していた人物だとわかったみたいで、納得した表情をして頷いたが、何を思ったのかイタズラっぽい顔でニヤつくと、俺の右耳に息を吹きかけてきた。


「うひゃっ!」


 あまりのくすぐったさに奇声を上げた俺は、右耳を守るように手で塞いでマリナから離れる。


「お、おい! 何すんだ!」

「『うひゃっ!』だって、あははははっ!」


 俺が抗議するのを無視して、マリナは奇声をバカにするように真似をしたあと、腹を抱えながら笑い転げた。

 またもやうるさくなった車内に、中年の女性がこっちに視線を向けて、クスクスと口元を隠しながら笑い始める。

 マリナに遊ばれた怒りと、それを全くの他人に見られて笑われる羞恥に、俺の頭に血が上り始める。


 こ……この、クソガキ!

 毎回、毎回、俺をおちょくりやがって……!

 ムカつく! あー、ムカつく!

 今日という今日は許さねぇ! せっかく、“人懐っこい”とオブラートに包んで評価してやったのに、この態度ッ!

 平和主義で、人と争うことを極力避てきた俺だが、もう我慢できねぇ!

 【ミューエ・ゲフェングニス】の刑だ!!

 口にすることすら憚られる、この禁断の魔法で、お前のその生意気な面を絶望に染めてやるッ!!


 俺がマリナから今まで受けてきた数々の揶揄する出来事によって、積もりに積もった感情を爆発させようとしていると、


「仲良いんだね……」


 と、ソフィアが言ってきた。

 その声に反応してソフィアを見ると、俺が馬鹿にされていることに気づいているのか、眉を寄せて“哀れむ”ような表情をしているので、間髪入れず、


「どこがだよ!」


 と、返してやった。

 俺が歯ぎしりしながら怒りの形相でいるのと、少し言葉がキツめだったこともあってか、かなり驚いた表情で目を丸くしている。

 そんなソフィアの表情に、俺は失っていた冷静さを少しだけ取り戻し、感情を押し殺すように目をつぶった。


 くそっ! 落ち着け! 落ち着くんだ、俺!

 ソフィアは何も悪くないじゃねーか! 八つ当たりすんなよ!

 そうだ、悪いのはマリナだ!

 だが、ここは落ち着け。ムカつくけど、落ち着け。

 いつもの事じゃねーか、マリナのちょっとしたおふざけだ。いつもなら、笑って受け流せるじゃねーか。

 寝不足で、イライラしやすくなってるだけだ。どうせ馬車の中で長く過ごすんだから、ソフィアがガウスさんと交流を楽しんでる間寝てればいい。

 マリナも居るが、コイツもよく談笑中に寝たりしてる呑気な奴だから、馬車の移動なんて暇すぎて飽きて寝ちまう。邪魔な二人が寝てれば、ソフィアだって心置きなくガウスさんと会話を楽しめるはずだ。

 そうだ、そうしよう、それがいい。それまでの我慢だ。

 

 そう、自分に語りかけながら、少しずつ高ぶった気持ちを落ち着かせていき、大きく深呼吸を繰り返す。

 そうしていると、段々と頭が冷めていき、いつも通りの思考が戻ってきた。

 だが、未だにマリナが笑い転げているであろう声が聞こえてくるので、少しイラッとするが、また一度大きく深呼吸をすると、その熱も冷めたので目を開く。


「怒鳴って、ごめん。落ち着いた」


 俺が怒ってしまったせいで不安げな表情をしているソフィアに、頭を下げて謝罪する。


「う、ううん、大丈夫。

 わたしもよく知らないのに、怒らせるようなこと言ってごめんね」


 そう気遣ってくれるソフィアは、申し訳なさげな表情をしていて、俺が八つ当りで怒鳴ったせいか僅かに瞳が揺れている。

 それを見て激しく自己嫌悪に陥るが、今はソフィアの動揺を取り除くことに集中しようと考え、首を振りながら真剣な表情を続ける。


「ソフィアは何も悪くない。

 寝不足もあって、コイツの態度にいつも以上に腹が立ったんだ」


 目尻に溜まった涙を指で拭っているマリナを指差しながら、怒鳴ってしまった原因を伝えた。

 寝不足なのはソフィアも一緒だから、嘘を付いてるとは考えないし、マリナの態度だって褒められたものじゃないと思ってるはずだ。

 そう予想した通り、俺の突然の激昂もマリナの悪戯と寝不足が原因だと信じてくれたようで、微笑みながら頷いてくれる。

 その樣子にホッと胸を撫で下ろしていると、マリナをチラッと見たソフィアが、首を傾げた。


「知り合いの子なの?」

「そう。ギルドの仕事の時に、たまに会うんだ。

 その時に、ちょっと談笑するぐらいの仲」

「そうなんだ」


 ソフィアにマリナとの関係について話していると、笑いから立ち直ったマリナが、俺の横の席に今度はゆっくりと座った。


「ごめん、ごめん。

 ちょっとからかいすぎた。怒らないでよ」


 ヘラヘラ笑いながらも、顔の前で両手を合わせながら頭を斜めに倒して、申し訳なさを表現しているのか眉をハの字にして謝ってくる。

 反省してるようには全然見えないが、ここで怒鳴ってしまえばまた迷惑を掛けてしまう。湧き起こる感情を我慢しながら、大人な俺を取り戻すように紳士的な対応をとる。



「なら、反省しなさい」

「は~~い! ごめーんね!」


 そう言って、マリナは懲りた樣子を見せずにチロリと舌を出す。

 その態度に、俺が握り拳を震わせて堪らえるように歯を噛み締めていると、気持ちを汲んでくれているような表情のソフィアが、震えている右拳に両手を優しく添えて宥めるように慰めてくれた。


 その後のマリナは、大人しくはなっていないが、座りながら元気な樣子で話しかけてくるので、それに付き合ってやりながら、ぼっちから抜け出せたことを内心ホッとする。

 俺がマリナと話を始めたので、ソフィアとガウスさんも会話を再開した。マリナが増えたことで俺への気遣いも要らなくなったから、心置きなく楽しめることだろう。

 その点では、マリナが馬車に乗ってきてくれたことに感謝した。

 詳しくは教えてくれなかったが、マリナもガウスさんと同じ場所で降りる予定らしい。ギルドの仕事で行くのかと聞いたが、秘密だと言って答えてはくれなかった。

 なので、ガウスさんからの情報だけど、フレイムサラマンダーが暴れてるらしいから気を付けろと、心配する気持ちもあって気遣いの言葉を掛けておく。それに、笑顔で敬礼をしながら了解の意志を伝えてくるマリナに、なんかどっと力が抜けた。もう少し、危機感とか持って欲しいものだ。

 マリナも俺と同じ薬草を採取する場所に来てるのだから、Gランクのはずだ。Aランクのガウスさんが出向くぐらいのクエストだから、Gランクのマリナがフレイムサラマンダーに襲われたら大変な事になる。

 だけど、休火山に近づかなければそんな危険も無いだろうから、そこまで心配しなくても大丈夫だろう。

 そう考えていると、今度はマリナからどこへ行くのかと聞かれた。

 なので、俺が法国に一年間ほど修行に行ってくるという話をすると、かなり驚いた表情をしていた。色々と質問されたが、話の内容が内容だけに信じてもらえるのか分からず、適当に言葉を濁しながら受け答えする。

 そんな俺の対応に不満だったみたいで、ブスッとした表情で拗ねていたが、その後なにやら怪しげな笑いを浮かべた。また俺をおちょくるネタにするのかと思ったのでその事を指摘すると、何でもないと誤魔化された。気にもなったが、深く追求してまたマリナが騒ぎ出しでもしたら、ストレスが溜まりそうなので大人しく引く。


 そうこうしている内に、いつの間にか半日が過ぎていて、馬車がマリナとガウスさんが降りる地点に到着する。

 ガウスさんがニカッとしたイケメンスマイルで「またな!」と爽やかに声を掛けてくれながら馬車を降り、

 マリナがふざけて寂しそうな振りをしながらまた抱きついてきたので、頭を叩いてさっさと降りていくよう言うと、ニコニコと笑いながら手を振って降りていった。

 二人を見送りつつ、中にいる乗客を軽く見回すと、騒がしくして迷惑を掛けてしまった中年の女性もどこかの停留所で降りてしまったようで姿は無い。

 マリナが降りたのを最後に馬車の乗客が俺とソフィアだけになり、乗ってくる人も居ないので、そのまま馬車が走りだした。


次回か、次々回で法国に到着したい。

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