第六話 商業都市ブルドオムスの過ごし方
この物語はフィクションです。
この物語の舞台はこの世界とよく似た別の世界であり、実在もしくは歴史上の人物、団体、国家、領域その他固有名称で特定される全てのものとは、名称が同一であっても何の関係もありません。
無事ギルドにて開拓者の登録を終えたオウカとシィーアは、そのままミレットに先導されて商業都市ブルドオムスにあるショッピングモールを歩いていた。
当然、オウカとシィーアの二人はこの都市に詳しくないのでただミレットの後ろをついていってるだけなのだが、周りの景色を見るだけでも退屈しなかった。
商業都市というだけあって非常に多くの店が並び建っている。服飾・食料品・日用品・娯楽、そして武器や防具をメインに扱う専門店もあり、それぞれが独自の色を持っているようで個性的だ。
客層としてはこの都市に住む人もいるだろうが、大半が旅行による観光客か遠方から来ている人々で賑わっている。
オウカも初めてブルドオムスに来たときにはあまりの人の多さに茫然としたものだが、それはシィーアも同じようだった。建ち並ぶ巨大な建物を見ては目を丸くし、無数に行き交う人々を見ては開いた口が塞がらない状態になっている。
そんなシィーアを見ながらオウカが苦笑していると、先行していたミレットが立ち止まって振り返った。
「ここが目的の場所よっ」
ミレットの指差す方向をオウカが確認すると、そには若者向けのポップな装飾をした女性用服飾の専門店が建っていた。
嫌な予感がオウカの脳裏を過ぎった。
「じゃあ、俺は近くで時間を潰してくるから、終わったら合流しよう」
足早に逃げようとするオウカの肩を、猛禽類にも似た鋭く強い力で掴む者がいた。
もちろん、ミレットである。彼女は微笑みながら、この場から立ち去ろうとするオウカに優しく話しかける。
「あら、オウカともあろうお方が敵前逃亡なんて無粋な真似、しないよね?」
「いや、俺が敵前逃亡だなんてそんなことするわけないだろ。ただ少し人に酔ったみたいで、休めるところを探そうとしてただけで……」
「なら、この中でも休める場所として椅子はあるから大丈夫よ。もっとも、店内で男一人じっと座っていられるのならだけど」
「だったら、俺が入っても空気が悪くなるだけだし、それに意味ないだろ」
「そんなことないわよ。だって今日はシィーアの服を選ぶんだから」
「なら尚更のこと俺はいない方がいいじゃないか」
「何言ってんの、オウカはシィーアの保護者的立場なんでしょ? だったら自分のお金で彼女に服を買ってあげなさいよ。
それともオウカはこれから先もずっと、彼女をあの服装のままにしとくわけ?」
そう言われては反論の余地も無い。確かにオウカもシィーアの今後の服装には困り果てていたし、先程のギルドで使いきれない程の報酬を貰ったことを考えると、ミレットの言う事に一理あるとさえ思えてくる。
イリアの話では三十分以内にオウカの口座に振り込む手配になっているそうで、もう既に入金されているはずだ。
現在のシィーアの服装はミレットのお古であり、彼女の細い手足には不釣合いな大きさの服を修繕して何とか見れるようにしている状態だ。
元々自分の服装には拘らないオウカであったが、シィーアの服装に関して自分がアドバイス出来ることなど何も無いに等しい。要するにファッション雑誌など読んだ事がないのだから、無いものから知恵を絞る事など出来るはずもない。
オウカは隣にいるシィーアに目線を移すと、自分の名前を呼ばれたことに気付いたのか、彼女は真剣な眼差しでこちらを見ていた。
なんだかシィーアの眼差しが、凄い期待で輝いて見えるのは気のせいだろうか。
「主がシィーアの服を選んでくれるのか?」
「あ、いや、俺じゃなく、ミレットが」
「主は選んでくれんのか……?」
頼むからそんな捨てられた犬のように潤んだ瞳で見ないでくれ、とオウカは罪悪感に駆られて、助けを求めるようにミレットを見つめた。
仕方ないなぁ、とばかりにミレットは溜め息をつくとシィーアの頭を優しく撫でた。
「大丈夫よ、シィーア。オウカもちゃんと選んでくれるから心配しないで。女性の服だから基本はわたしがアドバイスするけど、選ぶのはオウカだから」
ミレットのフォローに思わず、「ちょっと待て」と言いそうになったオウカだったが、シィーアの喜ぶ姿を見て、それでもいいかと思い直した。
ここ最近、シィーアの感情は豊かになってきている。人と触れ合うことで、彼女の心が育っている証拠だろう。
出会った頃はその非常識な行動の連続に、本当に彼女は人間と同じ生活が出来るのか少し心配していたが、この様子だと問題ないようである。
これはオウカにとっても嬉しい変化だが、そうなってくると後々困るのがブルドオムスの『種』を破壊した後である。シィーアはきっと付いて来る。そのときに彼女とどう接すればいいか分からないのだ。
元々この都市に来る前のオウカは、自分一人でそれを成そうとしていた。それが可能であることは、自分の身体を流れる血が証明してくれるはずだ。
もちろん『種』を破壊することは、オウカの力を以ってしても熾烈を極めることになるだろう。途中で死亡する可能性はある。だが、それでもいいと思っていた。
自分の血を絶やす事はオウカにとって、数ある目的の中の一つでもあるのだから。そんな自分が今はブルドオムス限定とはいえ、シィーアとミレットの二人と仲間になり、イリアという友人も出来た。
滑稽な話に聞こえるかもしれないが、オウカ自身この仲間たちに助けられている。それは武力的な助けではなく、オウカ・ライゼス個人として扱ってくれている関係にだった。
彼女たちはオウカの血の秘密をまだ知らないから、こうして普通に接してくれているだけなのかもしれないが、それでもオウカには有難かった。
だからこそ、ブルドオムスの『種』を破壊した後について考えてしまう。シィーアはオウカが望めばずっとこの関係を維持してくれるだろうが、それは個人の感情や行動を縛る行為でもある。
答えの出ない思想の袋小路にオウカが陥っていると、パァンと爽快な音と衝撃が頭に響いた。
「何、ボーっとしてんの。さっさと中に入るわよ」
手をひらひらさせながら、ミレットはオウカの顔を覗き込んでいた。オウカの頭を叩いた犯人は悪びれることもなく、いつも通りの調子でそこにいた。
下手の考え休むに似たり、という大昔に使われていた言葉をオウカは思い出して笑ってしまう。
急に目の前で笑い出したオウカをミレットは気味悪いものでも見るように、後退りながらシィーアの陰に隠れた。盾にされた彼女といえばそれを迷惑そうにしながらも、笑い続けるオウカを不思議そうに眺めている。
「ちょ、ちょっとどこか悪いところにでも当たった?」
「いや、すまない。ちょっと、ツボに嵌ってな」
まだ少し笑いの抜けきらないオウカをミレットとシィーアの二人は処置なしとして、「わたしたち先に中入ってるから」と言うとスタスタと歩いて行ってしまった。
オウカはそんな彼女たちを追うのだが、未だ笑いは治まらないらしく、店内ではミレットたちがフォローするまで特殊な変質者として見られるのであった。
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ギルドの数ある部屋の内、唯一窓の無い一室でその会話は行われていた。
「はい、先程我らの教主様がブルドオムスにて、開拓者の登録を完了されました」
部屋の明かりを消しているのか、室内は闇に包まれていた。その中で枯れ木のように痩せた男は通信機を使って誰かと話しており、その表情は恍惚で歪んだ顔をしている。
見る者が見れば、まるで蛇のようだと思っただろう。内面から溢れるその嗜虐性と狡猾さは、いくら高級なスーツを身に纏っても隠すことが出来ないでいる。
もっとも彼が本性を表に出しているのは、ここが彼専用の部屋だからでもある。普段はその本性を蛇のように隠し、自分にとって最高級の餌を吟味しているため、この都市――ブルドオムスで気付く者はいない。
男がこの立場に昇り上がったのも、自分の道を歩く鈍重な獲物を喰らってきたからでもあった。時に罠に嵌め、汚職を被せ、暴力と言う名の甘美な手段で彼はこの道を歩いてきた。
それもたった三年の月日でこの都市のギルドを思うがままに出来る立場に彼はいる。それ程までに彼は優秀であり、人の弱みを見抜く才能とそれを心ゆくまで堪能しながら利用する才能に恵まれていた。
だが、その所業に気付く者はいない。いや、言葉を変えよう。男の行為に気付く者は全ていないくなった。
そんな彼も崇拝する人物がいる。それこそが、今男が話している相手だった。
「聖母様、私は罪深い、目の腐敗した愚者でございます。初めて教主様のお姿を拝謁致しましたのに、その威光に気付けなかったのでございます。
聖母様が私めの腐った眼を抉り抜けと仰られるのであれば、今ここでそれを成す所存でございます」
通信機の先にいる聖母と呼ばれる者に、男は深々と頭を下げた。彼はいつでも両目を抉り取れるように瞼に爪をたてて、その言葉を待つ。
しかし男の行為は未遂に終わる。聖母から彼へ向けて、二三の言葉が紡がれる。
その言葉に男は涙を流しながら感謝する。
なんと寛大なお方なのだと、あまりの感動に男は立っている事が出来ず、赤いカーペットで設えた床に膝から崩れ落ちる。
「あ、ありがとうございますありがとうございますありがとうございます。我らの聖母様、貴女様の寛大なお心に触れる事が出来、私は歓喜の極みにございます」
通信機に向けて、ズルズルと床を這いずる男の姿はまさに大蛇のようであった。
再び男へ向けて聖母の言葉が紡がれ、男の顔は歓喜から狂喜へと次第に変貌する。口は端まで裂けるように口角を広げ、それとは反比例するように瞳孔は小さく収縮した。
それでも男は通信機越しとはいえ、崇拝する聖母の御前であるために慇懃にも似た口調で確認する。
「よ、宜しいので御座いますか? わ、私のような者が教主様の血を享受させて頂いても……」
男の質問に対する答えは是。教主の血肉は万物の共有すべき財産であり力であると、聖母は告げた。
(これ程の報いがあるだろうか。いや、私には過ぎたる褒美であるが、これまでの実績と私個人を評価して頂いたからこそ聖母様も仰って下さったのだ)
男は恭しく、聖母に感謝の意を述べた。延々と終わるの事のない美辞麗句を、彼の口は滑らかに吐き出し続ける。
やがて聖母の従者が「後に控えた聖事が有るゆえ、これにて拝謁の儀を終了とさせていただく」と言うまで、男の賛辞は止む事が無かった。
一方的に終了された通信機の無通音に、男は「あのような無粋な輩が何故、あのお方の傍にいるッ」と憤慨を隠さずに床を強打する。毛足の長いカーペットの衝撃吸収性を以ってしても、受け止めきる事の出来ない衝撃は軽く建物を揺らす程となった。
通常の人間とは思えない異常な腕力が、男もある種のギフトを保有していることを思わせる。『肉体強化』か『強力』の類のギフトでなければ、このようなことを細身の身体で起こせるはずがない。
その打撃で冷静さを取り戻したのか、男は立ち上がると胸元に入れた小さな箱――生位磁石を抜き出した。
この中に教主様の血が入っていると思うと、頭の天辺から足のつま先まで甘い痺れに酔いそうになる。これを私が自由にしていいのだ、と思うと今まで築き上げてきた功績に対する評価や賞賛など瑣末なものにさえ思えてくる。
男は慎重に、繊細なものを扱うように生位磁石を顔の付近に寄せる。カパァと開いた口から爬虫類を思わせる舌が伸びて、箱をまるで飴でも溶かすように嘗め回す。
「ああ、この中に、力が、教主様の血が……。でも、今はダメだ。今は、まだお預けだ……。しかし、この抗い難く毒々しいまでの誘惑が堪らない」
男の持てる精神力の全てを以って箱を遠ざけると、元あった胸ポケットに戻した。大量に分泌された唾液で箱は濡れていたが、その濡れた感触が彼に教主様の血は自分の傍にあると実感させる。不快に感じるどころか、更に男を恍惚とさせていた。
「ああ、近い内にこの血を享受出来ると思うと、本当に楽しみですねぇ……ふ、ふふ」
男のくぐもった笑いが、真っ暗な室内で陰湿に響いていた。
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『フリーフィールド』と呼ばれる、ブルドオムスの中でも広大な面積を誇る施設にオウカはいた。横長に並べられた椅子に一人で座り、静かにその先にあるものを待っていた。
一緒にいた女性陣二人は、この施設を利用するために受付で記入などを行っている。
「おい、俺から言った事だが……本当にあいつと戦うのか?」
隣に立つ大男を見ずに、オウカは「別にこれが初めてじゃない」と簡素に述べた。
「まぁ、お前さんがそれでいいならいいが……。ったく、こんな客は初めてだぜ」
禿頭を撫でながら、大男は呆れたように受付をしているオウカの対戦相手を眺めた。
仲間には上下関係は通常存在しないが、組織の中でそれは存在する。開拓者とは『ごっこ遊び』ではないために、こうした力の優劣を示す機会が必ずやってくる。
結果として、オウカと対戦相手が戦うことになったのだが、その原因は彼の横に立っている大男にもある。
登録の承認までまだ時間がかかりそうだ。何故こうなったのか、オウカはこれまでの経緯を思い返した。
女性服専門店に入ったミレットは水を得た魚のように嬉々として、シィーアに似合いそうな服を片っ端から着せていった。
シィーアも初めは戸惑いがあったようだが、そこはやはり女の子。彼女も最終的には自分から服を選び、それをオウカにファッションショーと称して見せ付けていた。特に服のどこどこが良いとか、もう少しこうしたら良いといったアドバイスまで無知な彼に要求してきたのだから、肉体よりも精神的に甚大な被害を受けたのであった。
一通り試着を終えると、シィーアは気に入ったものを更にリストアップして合計九枚の私服と下着を購入した。勿論、全てオウカの支払いである。
また何を思ったのか、ミレットも自分用の新しい服を選んでオウカに「これお気に入りのブランドなんだ。だからお願いっ」と、彼女自身も開拓者として稼いでいるであろうに『買って攻撃』をしてくる始末。僅かな抵抗の末、気付くと彼は支払いを済ませていた。
これでこの難所から脱出出来ると喜んでいたオウカに、更なる追撃がかかる。
ミレットが「どうせだから、武器とか防具も揃えちゃいましょう」と、意気揚々と言い出したのだ。オウカとしては自分やシィーアには要らないだろ、と思っていたのだが、テンションの上がったシィーアは興味を示してしまった。当然、彼の意見は多数決で却下されることとなる。
それならこの大量の荷物は邪魔ということで、受付の女性店員に郵送の手続きを依頼して三人は店を出たのであった。それを見送る店員の顔は非常に明るいもので「またお越し下さいませーっ」と、深々と頭を下げるのであった。
ここでの支払いは一千二百ダル程になる。オウカなら悠々と二ヶ月は過ごせる金額が、一瞬で消え去るのは信じ難いものであった。
相場として、一月に一般人が消費する金額は八百ダル前後だとなっている。食費だけなら一月、二百ダルもあれば十分だ。
食べ物や日用品に関する金額は千年前に比べると比較的低下してきたが、反対に伸びているのが武器や防具などの開拓者の必需品となっている。それらは価格もピンきりで、磨耗しやすい物は安価で、磨耗の少ない頑丈な物は特化鉱物やギフト保持者の『抽出』と『形成』の使用を必要とするために、並みの開拓者では手が出せないものとなっていた。
ちなみにシィーアはお気に入りの中から一着を選び、既に着替えている。前回と同じく黒を基調としたもので、ワンピースの上に薄手ながらも頑丈な生地のケープコートを羽織っていた。オウカが一番初めに「よく似合ってるよ」と言った服装であり、シィーアも満足しているようだ。
オウカは当初、今回の報酬で貰った二万一千ダルは多くて使い切るのに苦労しそうだな、と思っていたのだが、それは間違いだったようだ。もしかしたらこの金額だけでは足りず、自分がコツコツ溜めてきた貯金も使わざるを得ない事態に陥る可能性が浮上してきたことに、オウカの顔色は青ざめていくのであった。
今度もミレットの先導する形で武器と防具を扱う専門店へと向かう。
着いた場所は先程の店からそれほど離れていない距離に立地しており、人の行き来も多いところだった。外から見た限りでは店舗の大きさも変わらない。違いといえば、先程の店が女性客をメインとした集客目的の外観に対して、この店は至ってシンプルに『アタック&ガード』の看板を掲げているだけであった。何とも言えないネーミングセンスである。
ミレットがその店の扉を開けて「おやっさんいるー?」と入っていき、オウカとシィーアの二人も彼女の後を追うように入店した。
入店して早々オウカの視線に飛び込んだのは、捻り鉢巻を毛一本生えていない禿頭に巻いた大男であった。巨漢という言葉が相応しく、その身長は優に二五〇にも及び、この店の制服であろう社名ロゴを印字した黄色地のTシャツを、パツパツに盛り上げた筋肉がこれでもかと自己主張している。年齢は四十代前半に見えるが、肉体的な衰えを感じさせない立ち姿をしていた。
ミレットはそんな大男に怯えることもなく、気軽に声をかけていた。多分、彼が『おやっさん』なのだろう。しかし、こうして見るとまるで大人と小さな子供のように見える。
暫くすると大男は、出入り口で立ち尽くすオウカたちの方へ床を揺らしながら近づいてきた。別段走っているわけでもないのに床が揺れるなど、その体重も相当なもので、彼が放つ体重の乗った攻撃は中級サイズの魔物と張り合えるはずだとオウカは判断した。
「お前さんがオウカで、そっちのちっこいのがシィーアか。武器と防具を探してんだってな」
見た目に反して大男は愛想は無いものの、しっかり二人の面倒を見る気のようだ。シィーアは『ちっこいの』呼ばわりされたことに文句を言いたそうだったが、オウカが彼女の頭をポンポンと叩くので未遂に終わった。
「そうだが、あんたは?」
「バージェンズ・オオギ、この店の店長だ。ミレからお前さんたちの装備を揃えるように頼まれたんでな、こうして挨拶しに来たってわけだ。まぁ、おやっさんとでも呼ぶがいいさ」
バージェンズ・オオギことおやっさんは、照明の光を反射する頭頂部を掻きながら無愛想に自己紹介すると、近くにあるテーブルと椅子を指差して「商品説明ならあっちでやるから適当に座んな」と言うと、自分用に拵えたのか通常の椅子よりも二回り程大きい椅子に腰掛けた。
実に個性的であるが取り扱っている商品に関しては問題ないだろう。何しろミレットが紹介する店である。彼女らのパーティが実力で伸上がっているのは確かだろうが、それはサポートする側の力もあってというのが実態であり、一般的なものだ。
オウカとシィーア、そしてミレットの三人はそれぞれ椅子に腰掛けると、おやっさんが取り出した書類の束に目をやった。
ファンタジーに有りがちな武器や防具を店に並べる営業スタイルは、実のところ廃れてきている。昔はそれが普通だったが、現状はおやっさんがオウカたちに渡したカタログなどで注文、またはカスタマイズを依頼するのが現状となっている。それは高価な武器や防具を盗む輩が存在するためであり、予防策として取り上げられている新スタイルだった。
もっとも、この店を襲撃するような馬鹿がいれば、結果は見えたも同然である。
では、実際に命を預けられる装備をカタログだけで決められるかというと、普通に考えてまず有り得ないという問題が発生するのだが、そこはきちんと考慮されたシステムを用意していた。
それは、服装と同じく試着、または握り心地の確認などである。
武器や防具を扱う店には必ずと言っていいほど、店内に別室が設けられており、その空間は幅四メートル×奥行六メートル×高さ四メートルと広く作られている。また壁は対衝撃・斬撃用特殊炭素加工された繊維を幾重にも重ねる事で出来ているため、不埒なことを行おうものなら出れないように監禁されたところで、警備隊に引き渡される手筈となっている。
オウカとしては特に購入の予定はなかったが、それでもシィーアの装備を整えるためとミレットに言われてはもう抗う術もない。
「シィーア、何か欲しい物ってあるか?」
「分からんのぅ。シィーアにとってはこういった衣類を着るのも初めてじゃし、主に任せるのじゃ」
そりゃそうだよな、とオウカは溜め息をついてカタログのページをペラペラと開く。
そして先程の買い物で私服などは買ったが、肝心の封印区域内での移動に必要な安全靴などはまだ購入していないことを思い出した。
シューズのページを探しながら、オウカはシィーアに尋ねる。
「ところでシィーアは速さを活かした戦闘が主体だよな?」
「そうじゃな、この身体でも力は変わらぬはずじゃが、それを活かした方が良さそうよのぅ」
自分の身体をぺたぺたと触りながら、シィーアは自己判断した。その評価にオウカは特段驚く様子もなく、自己を魔人と称するくらいならそれくらいは規格外でないと困るとさえ思っていた。
繰り返すが彼女は現在、人の形を模っているがその実、人ではなく元魔物である。見た目とは裏腹に強大な力を内包しており、それは軽く人間を凌駕する存在だ。
だからこそ、その幼い見た目に騙されて油断していると、痛い目を見るのは必然でもある。
オウカは目的のページの中から、一番安い滑り止めの付いた安全靴を選んで注文しようとした。これはオウカが今までの旅で身に付いた節約術だったが、どうにも今回は相手が悪かったようだ。
注文しようとオウカが指差した瞬間に、無言の重圧が圧し掛かってくる。
「おい……。俺の店でこんなチンケな商品を売らせようってのか?」
「ホント、オウカって買い物センス、まったくと言っていいほどにゼロね」
酷い言われようであるがこの場合、おやっさんとミレットの意見が正しかった。オウカは自分を比較対照として選んでしまったのである。彼を擁護するのであれば、強靭な肉体を誇るオウカの身体能力に通常の装備では損耗も激しく、そして邪魔なだけであった。それ故に、装備品を一番安い物で揃える癖が付いてしまったのである。
さすがにこれはオウカに任せられないと思ったのか、おやっさんは面倒臭そうにカタログを手に取ってミレットに確認した。
「おい、ミレ。この坊主は金持ってんだろうな?」
「たんまりとっ」
何故にお前が答えるんだと突っ込みを入れたかったが、オウカは戦力外通告をされた身である。ただ大人しく、おやっさんが選ぶのを待つしかなかった。
ただ一人を除いては。
「少しよいかの」
シィーアはどこで覚えたのか、礼儀正しく挙手をして発言の許可を求めた。
「なんだ、ちっこいの?」
再度侮辱とも言える言葉でシィーアのこめかみに青筋が浮き上がったが、彼女は何とか堪えた。
ここで問題を起こしても、主であるオウカに迷惑がかかると判断したのだ。
「……ふぅ、シィーアは人間が身に着けておるあの邪魔な物はいらん。必要なのは、我の動きを阻害せん物じゃ。現に主もそうであろう?」
「……何言ってんだ、こいつは。
おい、ミレ。こいつらは開拓者を舐めてんのか? そうだってんなら、俺はもう金輪際この馬鹿共に売る商品はねぇ。もちろん、紹介したお前らにもだ」
一気に空気の張り詰めた緊張感が走る。おやっさんが言ってるのは本気だと、ミレットは冷や汗を流しながらオウカたちに注意した。
「ちょ、ちょっとシィーアっ! 今すぐに謝りなよ、さっきのは全ての開拓者に対する侮蔑と同じ行為だよ。
それにオウカも黙ってないで、シィーアに謝るように言ってよ」
「何を言っておるのじゃ、お主は? シィーアはその禿げ頭に要望を言っただけじゃぞ。何をそんなに焦っておる」
「……それは、不味いって」
青褪めるミレットは、恐る恐るおやっさんの方を見て、そして後悔した。彼女は心の中で、「終わった。何もかもが終わった」と絶望していた。
長年通い詰めて信頼関係を築いたこの店に、もう二度と出入りは出来ない。この店では禁句とされていることを、シィーアは言ってしまったのだ。パーティの仲間たちには何と謝罪しようかと、ミレットは一人これからのことを考えだすと、酷く憂鬱な気分になってくる。
ミレットにとって頼む綱はオウカだけなのだが、彼は何を考えているのやら、無言で事の成り行きを見守っている。彼女が再度、シィーアに謝罪するようお願いしようとしたところで、おやっさんに動きがあった。
ゆらっと椅子から立ち上がったおやっさんの全身は怒りで赤く染まっており、見るもの全てに恐怖を与える表情をしていた。彼は太い人差し指をシィーアに向けると、無理やり平坦にした声で忠告した。元々店員として客に対する敬意が少なかっただけに、今は微塵も感じられない。
「おい、ちっこいの。俺は『禿げ』じゃねぇ。これは剃ってんだ」
「なんじゃ、禿げ。シィーアも『ちっこい』のという名ではない」
両者とも譲れないものを主張し合うが、一向に譲る気も無い。竜虎並び立つというよりは、鬼魔並び立つと表現した方がしっくりとくる。勿論鬼がおやっさんで、魔がシィーアだ。彼女はいつの間にか椅子の上に立って、その身長差を埋めようとしていたが、土台無理な話であった。
一触即発の空気の中、ミレットは昼行灯を決め込むオウカに小さな声で詰問した。
「ねぇ、オウカはシィーアの保護者でしょ。何でこんな事になってんのに注意しないのよ」
悪い事をしたら注意するのが大人の、保護者の責任でもある。それを放棄しているかに見えるオウカに、ミレットは失望に近い感情を覚えていた。
「別に注意するのは、シィーアだけじゃないだろ。オオギっておっさんも正直正しいって言えないしな。だから、こうしていがみ合うんだよ。
お互いに理解出来ないなら、方法は二つしかない。己が正しいと認めさせるか、無視するか。それを見極めてからでも遅くないと思うぞ」
オウカは客観的な感想をミレットに伝えると、再び無言で睨み合う二人を注視した。
確かにオウカの言う事は一理ある。だけどそれだけで納得出来ないのが実情なのだが、自分ではこの事態を治めることが出来ないため、オウカに倣って今は事の成り行きを見守ることに専念した。
まず先制を切ったのはシィーアからであった。彼女は薄い胸を反らすようにして、自分の考えを提示する。
「そもそも、何故人間はあのように邪魔で無骨で無駄な物を着飾るのじゃ。あれでは本来の動きを阻害するだけではないか」
一方、おやっさんは肩を軽く竦めると鼻で笑い、シィーアの未熟な意見を叩き伏せにくる。
「おいおい、お前の頭はお花畑なのか? 徒手空拳、防具なしで何が出来るってんだ。
剣は敵を斬り、刺し貫くのに有効な武器だ。槍は薙ぎ払い、遠距離から刺し殺すことに長けている。槌も同じで、その重量を乗せた一撃は敵を叩き潰し、生半可な防御を紙くずみたいに弾き飛ばす。
反対に盾は敵の攻撃を受け止め、弾き、逸らすことで反撃への繋がりとなる。鎧は重いが、その重さと頑強さが敵とのぶつかり合いで体勢を崩さずに済むこともある。兜も頭上の攻撃に対して利があり、不意の事態で装備者の命を守ってくれる。
全ての装備が、無駄なんて言葉で一括りにされる謂れは絶対にねぇんだよ」
おやっさんもこの店を経営するだけあって、装備に対する愛着や揺らぐ事の無い信念を持っていることが今の話で分かる。
でなければ、商業都市で店を開業しようなど無謀の沙汰である。賑わう店があれば、衰退して経営が成り立たなくなる店も存在する。だからこそこの都市で生き残るためには、顧客のニーズに応え、ときには新しい流行を生み出す必要がある。それが出来ない者には、現実的に廃業という道しか残っていない。
そうした経緯と発展の果てに、商業都市ブルドオムスはここまで大きな都市に成長することが出来たのだ。
オウカやシィーアは知らないが、この店――『アタック&ガード』は開拓者の中でも非常に信頼のある店だが、一見は入店することすら許されない場所でもある。そのため開拓者になったばかりのビギナーたちは、知り合った古参のパーティなどに紹介状や仲介をしてもらってやっと入店することが許されるのだ。
バージェンズ・オオギが築き上げた信頼とは、それだけ苦難の連続を乗り越えたことを意味する。知らなかったとはいえ、シィーアがそれだけ彼のプライドを深く傷つける物言いをしたのだと分かる。
だからこそ、おやっさんの次の行動は当然であった。
「装備がどれだけ戦いに挑む者の助けになるのか分からん奴に、俺の商品を売りたくもない。さっさと消えろ」
人は自分が大切にしている物を傷付けられて、大人しくしているほど愚鈍ではない。それがプライドであれば、ご尤もである。よく『プライドなんて犬の餌にしてしまえ』などの言葉を聴くが、あれは大半が信念を持っていない者の慰みである。しかしながらそういう人間に限って、『生き延びる』ことに長けた者が多いのも確かである。狡猾な者はそれらを伏せて、虎視眈々と相手の喉元を喰い破る起死回生を狙っているのだが、それを万人に求めるのは難しい。そのため、こういった無聊を慰める表現が生まれるのである。
これ以上会話もしたくないというのが、おやっさんの全身から感じられる。
ここまでかと、オウカはこの会話の分水嶺を感じた。どれ程無様であろうとも許して貰えるよう謝罪して、今まで通りミレットたちだけでも続けて通えるようにと思案していたのだが、シィーアはまだ戦の幕を閉じてはいなかった。
「申し訳ない。そなたがそれ程までに武具や防具に心血を注いておるとは知らなかった。これは我の過ちである。謝罪を表すためにも、一つ我の申し出を聞いてもらえぬであろうか?」
深々と頭を下げるシィーアにおやっさんは勿論のこと、ミレットも唖然としていた。これまで高慢な態度を取ってきた彼女が自分の非を認め、それを許して欲しいと謝罪しているのだ。怒り心頭の状態であっても、彼女の話を聞いてみようという気にはなる。それが美少女なら尚更だ。
「あ~……その、なんだ。言ってみろ」
癖なのか禿頭を掻きながら、おやっさんは先を促した。
「感謝する。申し出というのは他でもない。我らの武力をそなたの眼で見極めてもらいたいのじゃ」
「……何でわざわざ、お前らのお遊戯を見ないといけねぇんだ」
「その言、確かにその通りじゃ。しかし、何故我らがこうまでそなたらの言う『装備品』を蔑ろにした物言いなのか、知りたいとは思わぬか?」
オウカやシィーアが常人とは比肩出来ない実力を持つからこそ、この苦悩は常に付き纏う。ただそれを分かって貰おうにも、言葉では理解できない場面もある時はどうするのか。簡単だ、実際に見てもらえばいいのだ。
シィーアはこの提案を挙げる事で問題の解決を図ったのだが、人間これまでに感じた負の感情を捨てて真剣に話を聞こうとする者は少ない。
「……思わねぇな。ったく、無駄な時間を使っちまったぜ」
おやっさんもまた、その例に漏れずにいた。威圧的に「出て行け」と出入り口を指差すと、彼は店の奥に引っ込もうと背を向けた。
「ま、待つのじゃッ。我の話は終わっておらんぞッ」
シィーアはその背中に声をかけるが、聞こうとしない者にはその効果はない。人間との駆け引きをするには彼女は正直過ぎたのだ。
店の奥にある扉におやっさんが手をかける瞬間、今まで沈思黙考していたオウカの口が開いた。
「ミレット、すまなかったな。こんな度量の狭小な奴がいる店を紹介してくれて。シィーアも気に病む必要はないぞ」
言いたいことを言うとオウカは席から立ち上がり、出入り口の方へ歩いていった。それに続いて、シィーアも席から降りて彼の後を追う。
ミレットはというと状況が一転も二転もしているせいか思考が追いつけず、未だに一人取り残されるように席に座ったままでいた。
張り詰めた空気にその声はよく響いた。
「おい、今何て言った?」
おやっさんはオウカたちに背中を向けたまま、怒気を孕んだ声で確認する。
「いや、悪かった。眼識のない奴にこいつの装備を任せられないからな。それが分かっただけでも良かった。感謝する」
ガンッ――
大きな衝撃音にオウカは目を向けると、おやっさんが鋼鉄製の壁をその拳で陥没させていた。彼の肉体は、シィーアと舌戦をしていた時よりも赤く染まっていた。体型や肌の変色から『鬼化』のギフトを保有していることが見て分かる。
『鬼化』ギフトの特性は『肉体強化』を上回る潜在能力を秘めていることだ。常時発動型の能力でもあり、肉体成長にもその効果は表れる。しかし、このギフトを保有する者は少ない。理由は発動の要となる感情の浮き沈みによって、その効果が影響するからでもあった。必要な時に最大限の効果が発揮出来ないのであれば、使い勝手のいい『肉体強化』に分がある。対抗策として精神高揚剤などを使用する者もいるが、最終的に破滅しか待っていない。
そうして現在オウカの目の前には、完全に『鬼化』したおやっさんの姿があった。
「表に出ろ」
通常『鬼化』した状態では精神的に安定しないことが多いのだが、おやっさんの様子を見る限り使いこなしているようだ。この店を開業する以前は有名な開拓者だったのかもしれない。
オウカは相手が自分の張った罠に掛かったことを確信した。挑発的な言葉を敢て使ったのも、おやっさんに自分の実力を見せるための場と機会を用意する必要があったからだ。尤も仲間が誤っているとはいえ、非難されているのをただ黙って見るのが耐えられなかったからというのが最大の理由なのかもしれない。
おやっさんことバージェンズ・オオギの実力は確かなものに違いない。それでもオウカにとって梃子摺る相手ではないことは確かだ。故にこれは、オウカの我が儘である。あわよくば、ミレットの件も今まで通りでいられるように力尽くで頼んでみようと、腹黒いことも考えていた。結果としてミレットに嫌われることとなっても、彼女たちの力で築き上げたおやっさんとの信頼を自分たちの所為で崩す必要はない。
だからこそ、この状況はオウカが待望していたものである。
「いいだろう。場所はどこにする?」
「この近くに『フリーフィールド』って施設がある。開拓者が利用する場所だから、そこなら問題ねぇ」
開拓者が利用する場所というのは、それだけ特殊で頑丈な施設ということになる。そこならばお互いに思う存分に戦えるということだ。
男二人が店から出ようとするのを、少女の声が呼び止めた。
「主よ、何を横から割り込んでおる。これは我の問題じゃぞ」
シィーアはその瞳に怒りを表していた。
「それは俺が引き受けたんだ。お前は気にするな」
「……気にするなじゃと。主がこの場を去るというのならば従ったが、そうではなくこの者と戦おうと言うのなら話は別じゃ。
我の戦を掻っ攫う気ならば、主とて容赦はせんぞ」
シィーアの纏う気配が濃厚になり、オウカの肌をピリピリと突き刺す。この場にいる誰もが、隠されたシィーアの実力を垣間見た瞬間である。おやっさんも無意識に、彼女に対していつでも動ける構えを取っている。
「俺に譲る気は無いのか?」
「毛頭無い」
この緊張感漂う中で、オウカは嘆息するとシィーアを正面から見つめた。
「なら、仕方ないな。どっちがおっさんと戦うか、決めないとな」
シィーアもオウカの言葉に納得して首肯するが、ついていけないのは回りだった。
「おい、どういうことだ?」
おやっさんは困惑したせいか、少し『鬼化』が薄れた状態でオウカに問いただす。それに対して彼の答えは簡素で分かりやすかった。
「別にあんたと戦う前に、こいつと勝負するだけさ。で、勝った方があんたと戦う」
「ちょっと本気ッ!?」
オウカの説明に反応したのは、今まで事の推移を見ていたミレットだった。彼女にとっては何故そうなるかが理解出来ないでいた。どうして仲間同士で戦う必要があるのか。どうしてこうなってしまったのか。全てが悪い方向へ向かっている気がする。
そんなミレットにオウカは手を翳して、落ち着いて話を聞くように指示する。
「俺たちは仲間だが、『ごっこ遊び』でやってるわけじゃない。強力な力を持つ分だけ、お互いの意見が分かれる事もある。その際、禍根が残らない解決方法が必要となってくる。
会話で解決出来るのならそれに越した事は無いが、今回はそうじゃなかった。ただそれだけだ」
オウカの言っている事は分かるが、理解したくないのだろう。ミレットが再び口を開こうとしたところに、今度は巨大な手が向けられて抑止となる。
おやっさんは『鬼化』の抜けた元の姿に戻っている。何か思案している様子だったが、考えが纏まったのか静かにオウカとシィーアの二人を見下ろした。
「お前らは俺に勝てると思っているんだな?」
怒気の感じられない、静かな問いかけに二人は是と答えた。
「面白い。だったら先にお前らが戦って、勝った方が俺の相手だ。容赦しねぇぞ」
と、おやっさんは好戦的な笑みを浮かべる。彼もこういったシンプルな方が分かりやすいし、気性に合っている。
ミレットは一人だけ取り残された気分で、勝手に分かり合ったような雰囲気になっている三人に『類は友を呼ぶ』という諺が思い至った。これだから戦闘狂は手に負えない。
「もう勝手にすればいいでしょ! でも怪我したら絶対に許さないからねっ」
これにはミレット以外の三人とも共通した感想を述べた。
「それは無理だ」
「それは無理だな」
「それは無理じゃ」
……本当に、戦闘狂とは手に負えないものである。
今回も一週間ぶりの投稿となっております。
いつも読んでいただいている皆様、そして初めてここまで一気に読んでいただいた皆様、誠にありがとうございます。
前回の話で流通する貨幣についてご指摘を頂きましたので、少し修正致しました。
宜しければ前話の後半部分をご確認下さい。
誤字脱字やご意見・ご感想などございましたら、お気軽にご指導いただければと思います。