第二話 封印区域
この物語はフィクションです。
この物語の舞台はこの世界とよく似た別の世界であり、実在もしくは歴史上の人物、団体、国家、領域その他固有名称で特定される全てのものとは、名称が同一であっても何の関係もありません。
「おーい!」
昼の太陽の下、オウカが下を向いて歩いていると、少女の明るい声が遠くから聞こえてきた。
きっと誰かと待ち合わせをしているのだろう。そして、待ち合わせの相手が来たところなのだ。
オウカは他人事のように考えながら、未だテンションの戻らない状態で下を見続けた。
「おーい! 君だよ、見習い君!」
「ぐっ……」
オウカがテンションを直下させていた理由は、その左腕の腕章にあった。
腕章自体問題ない。何かの折に着けることは必ずある。
あるのだが、その腕章に表示されている文字が問題だった。
『開拓者見習い(仮)』
これこそが、イリアが満面の笑みでオウカに渡した物だった。
当然、オウカは拒否したのだが、これを着けないと開拓者の試験が受けれないと言われては着けざるを得ない。
そんなやり取りがあった後で、殊更それを強調されて呼ばれたのだ。
それは屈辱以外の何物でもないだろう。
今度こそオウカは声がした方へ頭を上げて、思いっきり視線をぶつけた。
並大抵の者であればその視線に含まれた威圧に飲み込まれるのだろうが、そこはイリアの紹介する開拓者というだけあって問題ないようだ。
「そうそう君だよ。何で無視するかなっ」
そう言って彼女は両腕を腰にまわして、いかにも注意していますといったポーズをとった。
その姿がどこかで会ったような既視感をオウカに与える。
それもつい最近に会ったような。
目の前の少女の容姿を改めて確認する。
淡い栗色の髪は肩ぐらいまでのミディアムで整えており、くりっとした瞳は琥珀色。服装は動きやすさを優先した七分袖の白シャツに、同じく七分丈のモスグリーンのカーゴパンツ。
更に胸部と手足の両方に強化プロテクター、そして腰にはダガーが装備してある。
彼女も間違いなく美少女の部類に入るのだろうが、彼女の浮かべる表情の豊かさと服装から、どちらかというと可愛いらしさを感じてしまう。
「……もしかして、イリアの家族か?」
オウカが何とか自分で導き出した答えを述べると、少女は微笑んだ。
「正解。正確には妹だけどね。
ミレット・フォウントです、よろしくっ」
ミレットはオウカに勢いよく右手を差し出した。
オウカ自身は姉とのギャップに面食らっていた様子だったが、あまりのフランクさに微笑んで、同じく右手を出して握り返した。
「オウカ・ライゼスだ。こちらこそ頼む」
オウカはてっきりすぐ手を離すのだろうと思っていたのだが、なかなかミレットは手を離さない。
不思議に思ったオウカが、彼女に目で問いかけると、
「ふーん、お姉ちゃんが言ってたような人には見えないけどなぁ」
思いっきり気になることを言われた。
それに対してオウカは、人のいい笑みを浮かべながら確認する。
「一体イリアは俺のことを何って言ってたんだ?」
「えっと、腹黒そうなんだけど、意地悪でもあって、でもいい人そうだとか」
素直に暴露してくれたミレットに感謝しながら、オウカは楽しそうに笑った。
「そうか、イリアはそんなことを言っていたのか。
開拓者になって再び会うのが楽しみだ」
実のところ、オウカはそんなに自分の評価を気にしていなかった。
気にしていたのは、イリアが仕事でもプライベートでも自分を押し殺してストレスを溜めてしまう気質なのではないかというところだ。
特に先程のギルドでグランという男が声をかけたときなど、イリアは一瞬怯えた表情を浮かべていた。
正直他人事と言われてしまっては如何しようもないのだが、少し気をつけていた方がいいだろう。
だが、その心配も杞憂のようで家族には気兼ねなく接しているらしい。
それはたぶんこの子や家族がそういったストレスを解消しているのだと、オウカは目の前の少女を見て納得した。
オウカとミレットは同時に手を離して、これからのことを話し出す。
「イリアに言われてここまで来たが、これから俺は何をすればいいんだ?」
「今回はオウカが開拓者の適正があるかどうかの確認だから、門の中に入ってから詳しいことを話すよ」
ミレットは巨大な壁に設置された、高さと幅が同じく五メートルの門を指差す。
それに従ってオウカは改めて都市と封印区域の境に目を向ける。
間近で見るとその壁の威圧感はかなりのもので、さすがのオウカでも呆然と最上部まで眺めてしまった。
「やっぱ、初めて見る人にとってはこの光景は壮観だよね」
脇からミレットの声を聞き、オウカは苦笑する。
「ああ、こんな光景は都市ならではだな」
オウカは同時にその壁の中から感じる気配に、好戦的で獰猛な感情が沸き立つのを感じた。
「それよりもオウカ……ここに来るまでに装備とか準備しなかったの?」
ミレットはそんなオウカの黒い喜びに気づかなかったのか、当然の疑問を口にした。
「装備ならしているぞ」
ほら、とオウカは腰に提げた二振りの剣を見せる。
「いや、そうじゃなくて防具のことを言ってるんだよ。
見た限り、それ何の『防護』もかかってないよね?」
ミレットの言うとおり、オウカの服装は通常の服に違いない。
開拓者の中には大金を出してまで衣服に『防護』の効果を付与してもらう者もいるが、明らかに店で防具を買った方が安く揃えることができる。
つまり『防護』付きの衣類で着飾るのは、金持ちの道楽という意味合いが大きい。
「今からでも買いに行こうか?」
親切心とオウカへの不注意を指摘する形でミレットは提案をしてきたが、当の本人は首を振り断った。
「防具を付けると動きが鈍るから、このままでいい。
それに現役の開拓者の実力も確認したいしな」
ミレットは姉のイリアと同じような呆れた表情で、長い溜め息をついた。
「前言撤回。お姉ちゃんが言ってたこと、何となく理解した。
でもこれだけは守って。危ないと思ったら私を置いてでも必ず逃げること」
さっきとは打って変わって、ミレットの真剣な表情にオウカは無言で肯く。
「オーケー。じゃあ、行こっか!」
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門の中に入るのは、はっきり言うと簡単だった。それもこれも、現役の開拓者が同行してくれているお陰だろう。
中に入れば、すぐに封印区域という訳ではなく、広くて長い通路をメインとし、複数の通路に分かれていた。魔物が都市へ侵入することを防ぐための対策の一つでもある。
もっとも、普段からメイン通路は頑丈な防壁が降りているため、オウカとミレットの二人は別の通路から封印区域へと向かっていた。
ここまでの道すがら複数の門番やスタッフとすれ違ったのだが、その全員がミレットを見かけると、それぞれ挨拶してきたり、手を振ったりしてきた。
「ずいぶん人気者なんだな」
オウカは分かりきったことを確認するように述べる。
「昔からここに住んでいるからね。みんな顔見知りだよ」
この人懐っこさがミレットの魅力であり、いるだけで周囲が明るくなるのだから当然のことなのかもしれない。
しばらくオウカとミレットが雑談しながら歩いていると、目の前に入ってきたときと同じ形式の門に突き当たった。
「ここから封印区域だけど、準備はいい?」
「大丈夫だが、実際俺は何をすればいいんだ?」
元よりこれはオウカが開拓者になれるかの試験だったはず。その条件が分からないままというのも些か間抜けな気もする。
「そうだったね。今回の条件は、この封印区域にいる魔物を三匹倒すことだよ。
もちろん、危なくなったら私もフォローするから心配しないで」
「特に魔物の指定はないのか?」
「ギルドの依頼によってはそういったのもあるけど、今回はなし。
ただ『種』が近くなればなるほど、そこに生息する魔物の強さも格段に上がるから気をつけてね」
「了解した。
ちなみに参考程度なんだが、依頼で複数の魔物を討伐した際にギルドへの申請はどうするんだ?」
魔物は『種』の周囲に自然と湧き出すようで、未だにその実態が解明されていない。そのため、長期間放置しておくと封印区域から溢れ出すことも可能性として挙げられている。
しかしながら、そのような事態になることは各都市のギルドが正常に運用している限り、まず起こりえないことだといえる。
オウカの疑問にミレットは更に疑問を投げかける。
「その質問に答える前に確認なんだけど、オウカは狩猟ってやったことある?」
「あるがそれがどうした?」
「それなら簡単なんだけど、通常生き物を殺めるとそこに残るよね。
でも封印区域などにいる魔物は違っていて、倒すと体の一部を結晶にして後は消え去るの。それも魔物によって残る結晶は決まっているから、間違えることもないし。
で、さっきの回答なんだけど、何々を何匹討伐するって依頼があったら、それに見合った結晶を回収してギルドに提出すればいいってわけ」
「なるほど、それなら確かに個人でも運べるし、分かりやすいな。
だが、集めた結晶はどうしているんだ?」
これまでにも多くの開拓者が回収してきたであろう結晶の数を考えると、その数は膨大なものになるはずだ。
「それに関しては魔動炉の燃料とかに使われてたりするから、たくさんあってもデメリットはないよ」
「すまん、魔動炉ってのは何だ?」
質問してばかりだな、とオウカは思いながらも、ここで聞けることは聞いてしまった方が早いとして尋ねた。
「ん~、魔動炉っていうのは封印区域を囲った壁の特殊フィールドを発生するのに稼動している装置のことかな。
ついでに言うと、特殊フィールドってのは魔物が発する気配みたいなものらしいよ」
「つまり、擬似的に壁を縄張りと思わせているってことか」
「そうそう! そんな感じかも!」
魔動炉の常時稼動にどれだけの結晶が使われているのか定かではないが、確かにそれなら多くあるに超したことはない。
「すまない、色々と聞いてしまって。
だが、ミレットのお陰で助かった。ありがとう」
オウカの言動を見ていると不遜な感じが多く見られるが、礼を弁えるということはしっかりしていた。
ミレットはしばらくの間、オウカの感謝の言葉に驚いていたが、嬉しそうに微笑むと、
「いえいえ、ギルドの先輩として当たり前のことですよっ。
それじゃあ、そろそろ中に入りますかっ」
門の開放レバーを引いた。
重い音をたてながら開くその門を見ながら、オウカはやっとここまで来たと、ミレットとは違う意味で微笑んだ。
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一言で表すと森。
そんな光景が門の向こうには広がっていた。
現在、オウカとミレットの二人が立っている場所は、門から近くの広場のような空間だった。
「噂には聞いていたが、ここまでとはな」
森とはいっても、ただの森ではない。
それぞれの木々の一本一本の大きさが通常の数倍になって生えているため、まるで自分たちが小さくなったかのような錯覚に陥りそうになる。
まだ昼だというのに、高い位置に覆い茂る葉や枝のせいで辺りは薄暗くなっている。
「オウカ、ここに入ったからには呆けていられないからね」
ミレットも真剣な面持ちで周囲を警戒している。
その言葉にオウカは浮ついた精神を落ち着かせる。
「すまない、気をつける」
すると人間の臭いに釣られてやってきたのか、一匹の魔物が奥の暗がりからこちらを窺うように近づいてくる。
「グリーンドッグか。この辺りだとまだ弱い部類の魔物だから、一人で大丈夫だと思うよ」
ミレットは魔物を見据えて、オウカに説明する。
グリーンドッグは名前の通り、全身を植物で侵食された大型犬といった形状をしていた。
相手はまだこちらの様子を見ているようで、じっとしている。
オウカは魔物が動かないのを見て、
「ミレット、アイツを倒してきてくれ」
とミレットに場違いなお願いをした。
「え、ええええええええええっ!?
な、え? わたしがやるのって、何こんなときにふざけてんのっ!」
当然ミレットは怒ったが、オウカは真面目に答える。
「いや、ふざけてなどいない。まずは手本を見たいと思っただけだ」
「む、そう言われると確かにすぐは戦えないか」
実際のところ、オウカとしてはあの程度の魔物など一瞬だが、ミレットの実力を判断する材料が欲しいため、それを手本という名の建前でお願いしてみたのだ。
「じゃあ、わたしがアイツを倒すから、よく見ててね」
そんなことは露知らず、ミレットは腰のダガーを抜き取って構えを取る。
グリーンドッグもこちらの敵意を感じ取ったのか、体を絞るように低くして唸り声をあげる。
後はお互い無言で走り――交差した。
ミレットが一瞬早く大地を蹴ってグリーンドッグの頭上を取り、右手に持ったダガーでその無防備になった首の付け根を一閃し、勝負は決まった。
無駄がなく、そして手馴れた動きであることは、離れた場所から見ていたオウカでも分かった。
ミレットが着地するころには、首と胴体の分かれたグリーンドッグから黒色の煙が吹き出て、しばらくすると最後には緑色の牙のような結晶だけが残った。
他に敵が居ないことを確認して、ミレットはオウカに手を振る。
「おーい、どうだった? 参考になった?」
「ああ、いいものを見せてもらった」
ミレットの大体の実力を今の動きで把握したオウカは満足そうに頷く。
「だったら今度こそ、オウカの番だから気合い入れてよっ」
戦闘による疲労もなく、いつもの様子でミレットは走ってオウカのもとへと戻る。
しばらく二人は無言で当てもなく歩いていたが、痺れを切らしたのかミレットは立ち止まった。
「……どうした?」
「もうっ、何であれ以降魔物が出てこないのよ!」
オウカが声をかけると、ミレットは地団駄を踏んだ。
「俺に聞かれてもなぁ……」
「それはそうだけど、普通は一時間も歩いていたら何度か魔物と遭遇するはずなのに……何で今日に限って出てこないのよ~」
ミレットの言うとおり、二人はあの後、開拓者が通りやすいように整備された道を道なりに歩いていたのだが、あれ以来魔物の出てくることもなく、ただの散歩という微妙な時間が過ぎてしまっていた。
「せっかく機会があったのに、わたしが一人で倒してしまうなんて……。
あれじゃあ、わたしがオウカのチャンスを奪ったみたいで……本当にゴメンね?」
「いや、あれは俺がミレットに頼んだことだから気にしないでくれ。
それに現役の開拓者の動きというのが間近で見れて、ホント勉強になったから」
思わぬミレットのネガティブな一面を見てしまい、慌ててフォローするオウカ。
元が色々と考えているだけに、素直な感情には弱いようだ。
「でもどうしようか? もう少し歩いてみる?」
「それなんだが、少しだけ時間をもらえれば、魔物の気配を探すことなら出来ると思う」
オウカは先程の魔物が発する気配を覚えていたのだが、敢てそれをミレットに言わなかったのは、ミレットもそういった技術を会得しているだろうと思っていたからだった。
しかし、ミレットの言動を見るにそのようなものは持ち合わせていないらしい。
「え? それって魔物の位置が分かるってこと?」
「そんなところだ」
「それって『探査』のギフトを持ってるってことじゃない! 何で早く言ってくれないのよっ」
「いや、俺はそんな便利なギフトは持ってない。それに気配を探すって言ったろ?」
早合点しかけたミレットに、オウカは訂正を入れる。
『探査』というギフトは能力者の適正能力にもよるが、対象となる存在、または物に対してある程度の場所や距離を把握する能力を表す。
「俺のはさっきみたいな魔物の気配を感知する技術であって、ギフトじゃない。
たまたま俺の師事していた方がそういったことも教えてくれたんだ」
「へぇ、すごい便利な技術だね。それってわたしも覚えられるものなの?」
先程の不満げな表情とは打って変わって、ミレットは興味津々で尋ねる。
「ああ、はじめは時間がかかるだろうが、ミレットならコツさえ覚えれば大丈夫だろうな」
ミレットの素質の高さから、オウカは素直にそう答えた。
「やった! じゃあ、今度教えてよね。楽しみにしているから!」
「分かったが、その前に課題をクリアしないとな」
喜ぶミレットにオウカは苦笑しながら約束をすると、目を閉じて魔物の気配を探った。
普段は目を閉じなくても近くにいれば分かるのだが、ミレットの言うように一時間も歩いて魔物の姿はおろか、その気配を感じることがなかった。
ここに来るまでに聞いた話やここが封印区域であることを考慮すると、まず通常では起き得ない状況なのだろう。
(観光気分はここらでお終いだな)
静かに、オウカは気配を探す範囲を広げていった。
目を瞑ったオウカを見ながら、ミレットは昼にあったやり取りを思い出していた。
ミレットが所属しているパーティはこの都市では結構有名で、若手が多いながらも依頼の達成率がかなり高いということもあって、彼らを指名で依頼が入ることもある。
主に封印区域の中でしか生息しない植物や鉱物の採取を得意としたパーティだったが、少なくとも魔物との戦闘において他のパーティに引けをとらない実力者の集まりでもあった。
今日の依頼はまさに指名の内容で、とある場所から薬草の採取とその周囲の探索ということもあり、ミレットたちは早くから門の中にある控え室で入念な準備をして待機していた。
そこに顔見知りの門番がやってきて、イリアから連絡が入っていることを伝えた。既に控え室の設置された通信機に繋がっているらしく、受話器を取るとイリアの声が聞こえてきた。
「依頼の前にゴメンね」
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。まだ出発まで時間あるし」
出発の時間まではまだ三十分もある。パーティのメンバーも思い思いに装備の確認や、柔軟などして時間を潰していた。
「それでどうしたの?」
「ん~……それが、ね」
いつもの姉にしては歯切れの悪い話し方に、ミレットは疑問に思った。
「何かあった?」
「何かあったって程じゃないんだけど、ミレットにお願いしたいことがあって……」
話を聞くと、オウカというギルドに登録しに来た青年が結構な曲者で、それでいて何だかこちらの母性をくすぐるのだとか――何だか本当にいつもの姉らしくないなと思いながらミレットは、今もどこか楽しそうに愚痴っているイリアの話に割り込んだ。
「つまり、わたしにそのオウカって人の監督官をやって欲しいってこと?」
「……結果からいうとそうなるわね」
「いいよ。お姉ちゃんからの頼みだし、断るわけないよ」
「ありがとう!」
「で、いつからやるの」
「……今日は無理かな?」
「え、今日!? 無理だよ、これから依頼があるって分かってるでしょっ」
「そうよね、でもオウカのことだから一日放っておいたら何か仕出かしそうで」
ミレットの頭の中でオウカという青年の姿はかなり最悪なものになりつつあったが、そこは実際に会ってみないと判断できないと考えるのもミレットという人柄でこそだった。
そして家族以外でイリアが人を呼び捨てにするなんて初めてのことじゃないだろうか。
個人的にも会いたくなったミレットは姉に一度断りをいれる。
「とりあえず、仲間にも聞いてみるから少し待ってて」
「うん、ごめんね」
ミレットが受話器を押さえて振り返ると、会話から大体の事情を把握したのだろうリーダーのケビンが軽く肩を竦めて、
「急ぎの用なんだろ? 今回の依頼は危険じゃないし、イリアさんからのお願いを優先してもいいんじゃないかな」
周りの仲間を見て言った。
彼らもリーダーと同じ意見らしく、問題ないとジェスチャーで返してくれた。
「ありがとう」
早速、ミレットは待たせていた姉に了承の旨を伝えると、向こうもほっとしたようで「これから門に向かわせるから」と言って通話は切れた。
その後、オウカに会って姉が言っている姿とは印象が違うと思っていたが、話しているうちにミレットは姉の言うとおりだと実感した。
いい意味でも悪い意味でもオウカはマイペースなのだ、とミレットが結論を心の中で出すと同時にオウカの瞳が開いた。
一瞬ミレットはどきっとしたが、そんな動揺を知らないオウカは次の言葉を告げた。
「……少し、急いだ方がいいな」
初めまして。水々火々と申します。
若輩者ではありますが、今回初めての投稿をさせていただきました。
稚拙な文章ではございますが、皆々様これからも宜しくお願い致します。
私の仕事柄、大変申し訳ないのですが更新にムラがございますので、ここで先に謝罪をさせていただきます。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
近々、更新できればと思いますので宜しくお願い致します。