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89日目 ネタ切れ……

 今日の桐屋蘭子、コーディネートはこーでねーと。

 上下共に中学の体操着(ジャージ)靴はお母さんのパンプス。

 ちなみに、下のジャージの膝は破けてる。


「いってきます」

「おねえちゃん。きょうもでかけるの?」

「お昼には帰ってくるよ」

「蘭子あんた…その格好で出かける気!?」


 3月30日木曜日。

 昨日カンパルノ妹と電話をしたら会って話そうと挑戦状を叩きつけられた。

 ヌンチャクを腰に装着し、蘭子出撃。

 元々話があるのはお母さんなんだけど、お母さん今日仕事なんだけど、コミュニケーションが取れない女、カンパルノ妹は私の話も聞かずに電話を切ったのでこんな事に……



 相変わらず財布は見つからねーし電車賃もねーんでヒッチハイクを敢行する。

 国道沿いで親指立てて腰を振ってたら早速1台捕まった。


「忘ヶ崎駅まで連れてって」

「かしこまりました」


 ヒッチハイクで捕まえたにしては中々の乗り心地だった。しかも助手席に乗ろうとしたら後ろのドアが自動で開いた。

 すごい……


「おじさん仕事なにしてんの?」

「は?」

「プリウスってかっこいいよね。私も買おうと思ってんだけどさ……ところで、車の上に付いてる丸っこいの、アレ何?」

「アレ何って……行灯あんどんですか?」

「アンドン……?名前付けてんだ。もしかしてペット?」

「お客さん……変わってますね」

「へ?」


 約束の時間は10時。現在時刻は10時半。ヒッチハイクが過去一ストレートに成功したので30分の遅刻で到着できた。快挙。

 10時が午後でなければカンパルノ妹は既に待ってるはずだ。


 やたらキラキラしたジャケットと青い薔薇を胸に刺したカンパルノ妹はすぐに見つけることができた。悪趣味だ。


「マイプリンセスっ!!」


 私を見つけたカンパルノ妹は目に涙すら浮かべてる。控えめに言って怖かった。

 目的地に着いたら後部ドアが勝手に開いた。今までこんなヒッチハイクなかったから正直、感動してる。


「ありがとうおじさん。お礼はいつか…」

「1,690円です」

「は?」

「は?て…いや、料金、1,690円です」

「金とんの!?先に言ってよっ!?」

「そりゃそうでしょ!?タクシーなんだからっ!?」






 …あれ、個タクって言うらしい。個人タクシーの略。タクシーってみんな同じ車だと思ってたから、あれはヒッチハイカーを引っ掛ける為の罠に違いない。


 まぁ払えと言われても素寒貧のうえ収入の見込みなしなので、とりあえず走って逃げた。

 追いかけてきたカンパルノ妹が払ってくれたらしい。


「逃げるのはあんまりじゃない?」

「そんな事言ったってよー…」

「まぁいいや……会いたかったよマイプリンセス。どうして連絡してくれなかったんだい?」

「家出してたんだって」

「え?なんで?」

「黙れ。そんな事より今日は話がある。孫は?」

「孫?孫は呼んでないよ?今日は僕と君、2人だけのパーリナイさ」

「なにがパーリナイだこら。夜まで拘束するつもりか?私は昼までに帰る」

「そんな事言って……大丈夫、マイプリンセス。君の気持ちは分かってるから…」

「ふざけんな」


 何としても昼までに話を終わらせて帰る。その決意表明として私はマルイウィーク2階のペットショップ『奇珍倶楽部きちんくらぶ』へ足を運んだ。


「動物デートか…そういうのも悪くないね」

「ヤドクガエル見せてください」


 ヤドクガエル--

 北アメリカや南アメリカの熱帯雨林に分布する体長約6センチ程の小型のカエルの総称だ。

 宝石のような美しい色彩からなる見た目は美しく、ペットとしての人気も高い…

 ……が、このカエルはアルカロイド系の神経毒を持つ。自然界でも指折りの威力を持つその猛毒は20μgで人間の大人を死に至らしめるんだって。


「カエルが鳴いたら帰る……ってな」

「どうしてそんな危険物を…(汗)」

「絶対明るいうちに帰るって言う決意表明」

「……そ、そんなに帰りたいのかい?(汗)」


 ……それにしてもこいつ、可愛い。

 真っ黒で円な眼をこちらに向けて手のひらの上でちょこんと座る姿…なんだか……


「マイプリンセスっ!それ毒があるんだろう!?素手で触ったらアブナイっ!!」


 カンパルノ妹は無知ゆえの恥を晒しているけど、ヤドクガエルの毒は餌から摂取され体内に溜まっていくものだ。

 ブリード個体なんかは無毒な餌で育てられているから、毒を持ってないんだって。

 この子もそうらしい。


「……あの、この子いくら?」

「1万円です」

「えっ……安いっ」

「マイプリンセス?君はタクシー代すら持ってなかったじゃないかっ」


 店員さんに聞いたら床材とか紫外線ライトとか色々準備は必要らしいんだけど…とりあえずうち(美堂家)には観音寺に使ってた60センチ水槽があるので…


「買っちゃった」

「僕がね?」


 自宅まで送ってくれるサービスもあるとの事だったけど、お母さんに見つかったら怒られるからやめた。

 今は両手で包んでる。


「カンパルノ妹、色々準備してね?」

「マイプリンセスが喜んでくれるなら…」


 さて。早く帰らないといけない理由もできたのでさっさと要件を済ませよう。とりあえず今の私を取り巻く状況については説明しといた方がいいだろう。

 手近な所にラーメン屋があったので入る。


「へいらっしゃいっ」

「マイプリンセス、ここの払いは……」

「お前だよ」

「(´;ω;`)」


 なんでも家系ラーメンなるものを出してくれる店なんだとか…


「マイプリンセス、まずは僕から話があるんだ」

「チャーシュー麺、麺大盛り、ほうれん草抜き。あと餃子2皿ね。カンパルノ妹もはよ注文しろ」

「他人のお金だと思い切りがいいね(涙)」

「お客さん、うちは食券なんで……って!?なんですかそのカエルはっ!?」


「ゲコッ」


「ヤドクガエルですけど?」

「ヤドクガエルっ!?うちはラーメン屋だよ!?何連れ込んでくれてんの!?」

「知ってるわ。悪いけど、誰と、何と来店しようが文句を言われる筋合いはないよ。こっちは客だよっ!!」バンッ!!

「店には店のルールってもんがあるんですけど!?」

「ダメなの!?」

「……まぁいいけど」


 いいんだ。

 駅前なのにガラガラな店内。G〇ogleマップでの評価。そこから導き出される結論として、この店にとって私達は貴重な客に違いなかった…


 客も入ってないくせによく駅前なんかに店構えられたな。


 食券を買ってきたカンパルノ妹に「食券を食うなよ?」と釘を刺しながら……


「マイプリンセス」


 カンパルノ妹が真剣な顔をする。


「まずは話がある」

「聞いてやろう」

「僕らが最初に作ったチャンネルあるじゃない?…今は『セクシー姉妹の日常』に乗っ取られてる……」

「うん」


 私の推しでもある。地球が終わる前にセクシー姉妹のみーたんとうーたんにも会いたい。


 チャンネルを乗っ取られたのを思い出してか目の周りを真っ赤っかにしながらカンパルノ妹がお冷をぐびぐび飲みつつ、こんな事を言った。


「マイプリンセスがどーしても収益化したいからって僕の姉さんがオーナーになってるじゃん?」

「うん」

「その姉さんの口座にね……収益が振り込まれてた」


 なんだって?


「どうやらセクシー姉妹の日常はチャンネルを乗っ取りはしたけどそれ以外はそのままで…よーするにセクシー姉妹の日常の広告収益がそのまま振り込まれてるんだよね」

「…………それっていいの?」

「なにが?」

「だって……私らが稼いだ金じゃないじゃん?」

「そもそもチャンネル乗っ取ったの向こうだからっ!!(怒)」


 こいつネコババする気か?


「……ちなみにそれ、いくらくらい?」

「これくらい」


 スマホの電卓にはゼロが沢山。カウンターに置かれた私のラーメンにはほうれん草が沢山。

 ほうれん草抜きって言ったのに(怒)

 でもこんな事どーでもよかった。


「……チャンネルを作った時の話覚えてるよな?カンパルノ妹」

「ん?」

「取り分の話だよ。私が8、お前ら2人で1ずつ」

「え?全部やるよって言ってたよ?」

「キオクニゴザイマセン。ゼンブ、ランコノ」

「……まぁもちろん、このお金はマイプリンセスの物だよ。孫もきっと異存はないはずだ」

「イマスグ、ソノカネ、ワタシノコウザニ、フリコメ」

「分かったよ、姉さんに伝えるよ」


 この都合のいい女はなぜか嬉々としてスマホを弄りだす。そんな横顔に向かってこっちの本題を叩きつける番が来た。


「お母さんにY〇utubeやってるのバレた」

「そうなんだ。あれだけ話題になったからね」

「やめろって言われた」


 カンパルノ妹の指が止まる。


「……え?」

「今度の日曜、うちに来て。お母さんから話があるらしい」


 ********************


「ぴぎゃあああああああっ!!(涙)」

「……らっ…蘭子っ」


 カンパルノ妹と別れて私は泣いた。

 美堂家のマンション前でアスファルトに膝を擦り付けてすり減らしながら天に向かって慟哭を飛ばす私を、コンビニ帰りの陽菜が死んだ魚の目みたいな目で見つめてる。


 私の手のひらの上ではカエルがひっくり返ってた…




 なんかカエルには人の体温って熱すぎるらしくて、手に包んで持って帰る頃には煮えてた。


「ぐすん…ごめんよ……H・M」

「……タコの次はカエルなんだ…てか、それ名前?なんの略?」

「ヒナ・ミドウ」

「……え?」


 悲しいけどお別れだね。君のお陰でこんな時間に帰ってこれたんだ…

 お墓を作ることにした。

 こーちゃんは観音寺が昇天した時マンション前にお墓作ってたけど、管理人さんから敷地内に勝手に埋めるなって陽菜ママが怒られてたから、敷地外の近くにしよう。


 色々悩んで考えた末、マンション前の横断歩道の所にした。


 ガガガガガガッ!!


「全く…考えてみればこんなマンション前に横断歩道なんて危ないと思わないのかね…小さい子供が住んでんだけど(怒)」


 ガガガガガガガガガガッ!!


「……蘭子っ!それ!なに!?」

「は!?」

「……それ!!なに!?」

「なんだって!?」


 ガガガガガガガガガガガガガガッ!!


「……それ!!なに!?」

「…これ!?」


 ガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!


「削岩機だけど!?」

「……え!?なんで!?」

「は?」

「……どこから!?」

「どこからって…!そこからっ!!」


 マンションの近くで道路工事やってんの。昼食って外で寝てるおっさんからパクった。


 ガガガガガガガガガガガガガガッ!!


「……まずいよ蘭子!公道を勝手に掘ったら、多分犯罪!!」

「遺体を放置するのも犯罪!!」


 H・Mを早く埋葬してやりたいんだよ…


 道行く人々がその光景に目ん玉をひん剥いて腰を抜かしながら通り過ぎていく。

 これ以上H・Mを好奇の目に晒す訳にはいかないので、深さ15メートルくらいのところで止めておいた。


「陽菜、埋めるから生コン盗ってこい」

「……(汗)」

天国むこうでも達者に暮らせよ……H・M(涙)」

「……数センチのカエル埋めるのにこんな大穴…」

「元気で暮らせよ…」


 H・Mを穴の中に……そして向こうでお金に困らないように財布も一緒に入れてあげた。


「……あれ?それって…」


 陽菜のをね。


「……ぎゃあああっ!!私の財布!?」

「よせっ!もう助からないっ!!」

「……ふざけないでよ!?何してくれちゃってんの!?」

「陽菜…どうせ大した額入ってないだろ?」

「……犯罪だっ!!これは犯罪だよっ!!お前も一緒に埋めてやるからっ!!」


 親友より財布だってのか?コノヤロウ。


「……ごろじでやるぅ!!」

「おいよせ、やめろ…それよりさー、みんなで雅の家に行くって話、どうなってんの?陽菜、ちゃんとみんなの予定とか聞いたか?」

「……お前も落ちろ!!」

「分かった分かったって。生コン盗って来たら財布拾ってきてやるからさ」

「ぬがーーっ!!!!」





 ……その後通報を受けて駆けつけた警察官により、謎の大穴が発見され、中から2名の女性が救出されたらしい。

 大穴を空けたのが誰なのか。2人がなぜ落ちたのか警察はしんちょーに捜査を進めるんだって。


 大穴の中に落ちた2人がその中で友情を深めたのは内緒の話だ。

 今日は特にこれ以上何も無かったからこれで終わりっ!!


 地球滅亡まであと11日…

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