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87日目 ね、チューしよっか?

 3月28日火曜日…


『おはようございます、目が覚めテレビのお時間です』

「さやちゃあああああああんっ!!!!」


 桐屋蘭子の朝は早い。



『ゴガーーッ』ウィーン

「かっこいい」

「……良かったね、こーちゃんくん」


 美堂家のリビングに響くダイナソーの咆哮。昨日私達が死力を尽くして完成させた『サイボーグ・ダイナソー2』は元気に稼働してる。

 目、口の中、関節部分、尻尾の先っちょと背中のトゲトゲが紅蓮に光り、大迫力の咆哮が鳴り響く。太い両脚がフローリングを踏みしめ闊歩する様はまさに白亜紀の王者だった。


 ……まじで大変だった。


「おー、完成したの。かっこいいね」


 これを買ってきた陽菜パパが実に無責任に感想を述べる。そんな朝の光景を眺めながら私は外出の支度を始めてた。


「こーちゃん、お姉ちゃん出かけるけど一緒に来る?」

「いかない。だいなそーであそぶ」


 今のこーちゃんにとってダイナソーは姉をも上回る存在感…将来はお姉ちゃんと結婚するって言ってたのに…今やダイナソーと挙式する勢いじゃないか。


「蘭子、今日ご飯は?」

「……ちなみに、ご飯なに?」

「めざし」

「要らねぇ」

「……と二郎系ラーメン」

「それは要る」

「それはそうと、あの話ちゃんとお友達にした?」


 我が母の言うあの話とはY〇utube仲間の事である。


「あー……うん、するする。スルメイカ」

「頼むわよ。お母さんも次のお休みは予定空けとくから」

「うんうん。雲黒斎うんこくさい

「てか、いつになったら財布見つかんの?」

「んなもん警察に聞いてくれ」



 さて、出かけるか……


 ********************


 お家デートしない?


 風花灯からのそんな提案に私はドキドキしながら応じた。昨日、『サイボーグ・ダイナソー2』を完成させた風花さんは帰り際に「明日ね」とウインクしながら帰宅。私の心をざわめかせて離さなかった。


 風花さんにお呼ばれ……恐らく、史上初……


 ドキドキとムネムネを胸部に…青空の下を歩く。今日も呑気に桜吹雪が舞っていた。


「……あと14日かぁー…」


 4月10日に降ってくる恐怖の大王は今だにその気配すら感じさせない。直径10キロの宇宙からの爆弾は一体何光年先から飛来するのか……

 そろそろ気配くらい見せてもいいようなものを……


 平常運転の青空は憎たらしいほど青かった。





 私のイメージでは風花さんっていいとこのお嬢様で、なんか、いい感じにオシャレな街のタワマンとかでオ〇ンジーナを揺らしながらバスローブ姿で下界を眺めてるのかと……


 思ってました。



 東京の下町みたいな雰囲気の、世代じゃないのに昭和の懐かしさを感じさせるような場所。こんな場所が近くにあったなんて…とぼけーっとしながら眺めつつ、歩く。

 平屋の木造家屋が道沿いに並んで、道では春休み中の子供達が遠慮なく遊んでる。ベーゴマでもやってそうだけど、そこは令和。顔を突き合わせてゲーム機をポチポチしてた。


 風になびく洗濯物の香りを感じながら別世界に紛れ込んだような気分になりつつ歩いてたら……


「桐屋さん」


 私を呼ぶ声が前方から聞こえた。


 顔を上げるまでもなくその落ち着きのある美声の正体に気づき……


 そして、ちゃんちゃんこを着て背中に赤ちゃんを背負った風花さんの姿に流石に驚いた。


「こっちこっち」

「おんぎゃっ!!」


 背中の赤ちゃんをあやしながら手招きする風花さんの足下にはこーちゃんくらいの天使達がわらわらと集まって、風花さんに甘えるみたいにしがみついてる。


 ……え?かわいい。


 ぽかんとしつつ風花さんの方へ向かって歩く。そして、風花さんの背後に建つ、震度3でぶち倒れそうな平屋を眺め……


「ようこそ」


 変わらない神秘的な微笑みを浮かべる風花さんに歓迎され、風花家訪問が始まった。


 ********************


 風花さんには自分含めて10人の兄弟姉妹が居るらしい…


 ボロい平屋の中は見た目に違わず、ボロかった。

 茶色くなった畳の上に糸のほつれた座布団が敷かれ、時代を感じさせる丸いちゃぶ台の上に端の欠けた湯のみが置かれた。

 それを眺める私の周りは小学生くらいの子供達に包囲される。

 珍しそうな顔をして私をジロジロ見てる。


「ごめんね、狭くて汚いけど…」

「あ、いえ。お構いなく……」

「おんぎゃっ!おんぎゃっ!」


 赤ちゃんが泣いてる……


「末っ子なんだ。産まれたてホヤホヤだよ。抱っこする?」

「……え?いいんですか?///」


 風花さんから宝物をお預かりし、抱っこ。小さいけど力強い。そして暖かい。お乳の匂いがする。さっきまでぐずってたのに私が抱っこしたらキョトンとした顔をして泣き止んだじゃないか。


「はわわわわわわ…」

「ふふ。お客さんが珍しいのかな?」

「きゃわわわわわ……」


 こーちゃんが赤ちゃんだった頃を思い出す。


「おまえだれ?」「どっからきたの?」「灯の友達か?」


 私を包囲した子供キッズ達がひよこのようにピーチクパーチク。やはりここは天国か?


「……賑やかな家だね(ハァハァ)頼みがあるんだけど…(ハァハァ)……あの…ペロペロ、してもいいかな?(ハァハァ)」

「いいよ」

「……いいんだ…///」


 いただきます。


「んべろんっ」

「きゃーーっ!!」「こいつっ!へんたいだっ!!」「おねえちゃんたすけてっ!!」


 ……逃げられた。


「おんぎゃっ!おんぎゃっっ!!」

「あっ…はわわ……おー…よちよち…ごめんよごめんよ…あっ、すみません、お返しした方がいいかな?」

「うん。では、お預かりします……」


 ぐずりだしたから赤ちゃん様を風花さんに返却。すぐに泣き止んだけどムスッとした顔を私に向けてる。かわいい。


「桐屋さん抱っこ上手だね…こーちゃんが赤ちゃんだった時、抱っこしてた?」

「そりゃもう抱っこのし過ぎで僧帽筋引きちぎれたもん」

「やりすぎだね…みーちゃん、羊羹あったっけ?」


 赤ちゃんをあやしながら奥に声をかける。風花さんの声に不機嫌そうな声が応じて、隣の部屋のボロい襖が開いて、中から可愛らしい顔立ちの女の子が出てきた。風花さんと同じ金髪、同じ髪型。双子と言われても信じそうなくらいそっくりだけど、顔に幼さが残ってる。


「次女」


 と風花さんが紹介してくれた。


「ども」と無愛想にお辞儀する彼女は私らとそんなに歳も変わらないと思う。彼女は下の弟妹達にまとわりつかれながら台所に向かう。


「みんな春休み中か…ほんとに10人きょうだいなんだね…大変だ」

「まぁね……私と次女がお母さん代わりだから」

「……お母さん、居ないの?」


 訊いて良かっただろうか?

 風花さんは気を悪くした様子もなく呆気からんと「うん、父子家庭」と教えてくれた。

 知らなかった。片親なんだ……

 しかも暮らしぶりを見るに…あまり裕福とは言えなさそうだ。母子家庭のうちより貧乏。


 ……まぁ今のうちよりはマシか。なんせ桐屋家は今、家無いからね。


 次女ちゃんが羊羹を3切れ出してくれた。もぐもぐしてる。恐らく1切れ食われた…


「どもありがと。ねー中学生?」

「……そッス」

「そーなんだ。お姉さん今年高校生」

「……そッスか」

「何年生?」

「……今年2年ッス」

「そっかそっか。お家の事して偉いねぇ」

「……ウス」

「ところで……猛獣狩りに行こうよやる時…いつもあぶれるタイプ?早々にグループ作っちゃうタイプ?」

「……そもそも参加しないタイプッス」

「それは良くな--」


 突然後頭部に衝撃がっ!


「わはははっ!!スーパーキックっ!!」


 男の子に後ろ頭蹴られた。


「こらっ!人の頭蹴るな!!」


 次女ちゃんが弟君を窘めてる。無愛想だけど、こういうの見るとしっかりした子なんだと分かる。


 ……多分中学同じだよな?後輩との絡みなんか全然無かったから知らなかった。


「……ねぇ、知ってる?御嶽原先生、教え子とデキて今同棲中なんだって」

「……そッスか」

「今ね、木場に住んでる」

「……そッスか」

「君のクラスの担任、誰?」

「……明智先生」

「ほぅ……悪くないね…あの人のおじいちゃん、岡山にすっげー広い土地持ってんだってよ?固定資産税、いくらか知ってる?」

「……知らねッス」

「100万円」

「……マジっすか?」

「5000平米だからね」

「…………へぇ」

「……すげーだろ」

「……あの」

「ん?」

「……固定資産税って…毎月払うんスか?」

「いや、年一一括か4回に分けて」

「…………てことは…分割で25万くらい?」

「うん」

「……やべぇッスね」

「やべぇだろ」

「…………へぇ」

「……」

「…………」

「……」

「もういいッスか?」

「うん」


 それだけ言って次女、消える。襖の隙間からチラリと見えた座卓の上には教科書が開いてあった。


「……真面目ちゃんだ」

「あの子があんなに人と喋るのは珍しいよ。桐屋さん、気に入られたみたい」

「そーなんだ」

「……ねぇ、びっくりした?」


 何が?と問うまでもない。答えないでいると風花さんは自宅を見回して笑った。


「こんなボロ家で、しかも片親で…貧乏で。なんかさ、私は資産家の娘とか暴力団の組長の娘とか、色々噂されてたらしいじゃん」

「いや、まぁ……風花さんにはもっと華やかなイメージあったけど…」


 改めて平屋を見回す。生活感のある、ごちゃごちゃして、騒がしくて狭い…


「これはこれでイイ」

「……ありがと。桐屋さんはどーしても呼んでおきたかったんだ…地球が終わる前、にね」


 ……えっ!?


「信じて……んの?」

「……君が言ってたんじゃないか」


 ウインクしながらそんな事を言う風花さんの真意は、相変わらず分からない。


 ********************


「私と次女がお父さんと最初のお母さんの子でお母さんはフランス人とのハーフだった」

「ほえー……」

「長男の一郎太と3女のマコと次男の平助が次のお母さんとの子で、このお母さんとは長かった、2年くらい?」

「ほえー……」

「でー4女の…………」


 風花さんはフランス人とのクォーターらしい。

 風花家の大黒柱は相当な節操なしらしく、お母さんが取っかえ引っ変えらしい。ちなみに、最後のお母さんとは半年前に別れたんだって。


「お父さんなんの仕事してんの?」

「乾物屋」

「……ほえー…」


 なんてリアクションしたらいいのか分からなかった。とりあえず、ほえーって言っとく。


 なんて…特に何をするでもなく風花さんと駄弁ってたら過ぎてく時間。気づけば外が暗くなってた。


「……今日が終わっちゃうね」

「……そーだね」


 下の子供達に取り囲まれながらしんみりとそんな事を言う風花さんの横顔がなんだか寂しそうで…

 私は胸に引っかかってた事を問うてみる。


「……やっぱり信じてるんだ」

「なにが?」

「地球滅亡の話」

「……滅亡するんでしょ?」

「どうして信じる気になったの?普通、信じないけど」

「あはは。桐屋さんが突飛な事を言うのはいつもの事だし」

「それはつまりまともに取り合ってないということでは…?」

「……地球が明日まで無事だなんて保証もどこにもないからね」


 そこら辺に散らばってるのは次女ちゃんの教科書だろう。この前まで使ってた歴史の教科書を拾い上げて風花さんがペラペラとページをめくってる。

 …因みに次女ちゃんの勉強はきょうだい達に妨害され、進捗は芳しくないらしい。


「人間の歴史って色んな事があったじゃん?明日核戦争が始まりますーって言われても、それを否定する事は出来ない。実際始まっても、私達には何が起きてどうしてそうなったのかも分からなくて、あ、始まったんですねー…くらいにしかきっと思えない」

「もっとリアクショしろよ。核戦争だぞ?」

「だから地球が滅亡すると聞かされても、あ、そうなんですねーとしか思わないかな」


 それと滅亡の予知を信じる根拠がどう繋がるのか……よく分からん。この独特な思考回路が風花さんの特徴なのかな。


「信じてんなら気になんないの?どーして私がそれを知ってるのかとか…」

「同じことだからね。何を言われてもそーなんですね、で私は終わっちゃうから」

「……信じてるってか、キョーミないんスね」

「そうとも言えるかもしれない。でも…友達の言うことだから、信じるよ」


 風花さん……///


「さて、地球滅亡まであと少し…今日は満足できたかい?」


 芝居かかった仕草で顔を覗き込んでくる。顔がいい。外国の血が入ってるからこんなに美人なのかこいつは…


「満足」

「そうは見えないな」

「なんでやねん」

「君の顔はまだ満足していないと言っている」


 この桐屋蘭子のむにむに頬っぺを指で押してから、大仰な仕草で立ち上がった風花さんが声高に宣言するのだ。


「まだまだ今日は終わらないぜーっ。こんなんじゃ終わらせないぜーっ」

「……」

「……泊まっていきなよ、今日」


 ……なんか今日、テンション高いな。









 泊まることにしました。


「らんこ、ぶちゅっ」「ちゅっ」

「にゅふっ!ぶへへへへっ///」


 桐屋蘭子、幼児からの執拗な頬っぺチュー攻撃を受けて完全に撤退する術を失う。全身がトロトロに蕩ける幸福を感じつつ、陥落。快楽の坩堝へ…


 台所からは風花家特製ボ〇カレーの香りが漂ってきてた。


 ボロっちいちゃぶ台を次女ちゃんが布巾で拭いてたからお手伝いしましょう。


「あ、私も手伝うよ。布巾貸しな?」

「いや、もう終わるんで……」

「貸せって。ぺっ!ぺっ!お姉さんに任せなさい」

「……手に唾つけた手で布巾受け取ろうとしないでください」

「お姉ちゃんから聞いたんだけどさ、君、私の事好きになっちゃったんだって?」

「なんの話スか?」

「……お父さん好き?」

「……好きなわけないじゃないっスか」

「実は私も母子家庭で、片親で貧乏なんだ」

「……そッスか」

「……なんか、運命、感じちゃうね…///」

「……別に…」

「…………ね、チューしよっか?」

「……は?」

「おいで……」

「……(ゾクッ)」

「んちゅーーっ///」

「ちょっ……待っ……あっ!姉貴っ!この人マジで…なんなんっ!!あっ♀」


 んぶちゅっ♡


「ただいまー」


 その時平屋の玄関が音を立てながら自己主張激しめに開かれて、のっそのっそとくたびれた声が聞こえてきた。

 台所の風花さんが「今日カレー」とだけ返した。風花家流の挨拶だろうか?


 んちゅ♡


「お父さん、今日お客さんが居るんだ。昨日話した、桐屋さん」

「おー……いらっしゃ…………何してんの?」


 ぶちゅ♡


「ぶはっ!こいつっ!!助けてっ!!んんっ!!♀」

「ちゅっ♡ちゅっ♡……はぁ、はぁ…上手だね…子猫ちゃん♡ぶちゅ♡」

「んんーーーっ!!♀」

「…………いらっしゃい…ごゆっくり(汗)」



 風花パパはあまり風花さん達とは似てなかった。お母さんの遺伝子強。

 角刈りに無精髭を生やした、ガサツなおっさんって感じ。

 ただ、ちゃぶ台を家族と囲んで座った時、ガサツなおっさんは優しいパパに豹変する。


「ん〜かわいいでちゅね〜っ!まんまでちゅよ〜」

「……おぎゃ…」


 末っ子を腕の中に拘束して口をすぼめてるその姿に私は同志の匂いを感じた。

 そしてなんでだろう……次女ちゃんの事が気になる。私を惹きつける何かがあるなこいつ。フェロモンが出てる。


「今日の晩御飯は具なしボ〇カレーだよ」

「みんな座れー…桐屋さんも、沢山食べて言ってくださいね」

「あっはい。いただきますお父さん。お父さん敬語とか使えるタイプなんスね。意外ッス」

「がははっ!さぁみんな、手を合わせて」


 いただき--


「父よ、あなたのいつくしみに感謝してこの食事をいただきます。ここに用意されたものを祝福し、わたしたちの心と体を支える糧としてください。私たちの主イエス・キリストによって。アーメン」

『アーメン』

「……(困惑)あ…らーめん…(汗)」


 土方のおっさんみたいな見た目で敬語使われてキリスタンとか、蘭子の中で解釈不一致。

 そしてこのカレー、ガチで具が入ってない。


「うわーごちそうだ!」

「今日はどうしたの?」

「やったぁ!カレーだ!」


 ……しかし食卓は湧いていた。


「……苦労してるんだね、ぐすんっ」

「あっ!姉貴っ!!この人ずっと私の手を握って離さないっ!!」


 次女の悲鳴に微笑みを返しながら秒でカレーを流し込んだ風花さん。隣で風花パパが「しかし灯が友達を連れてくるなんてなー」と嬉しそうだ。


「いや実は心配してたんですよ。灯には友達がいないんじゃないかって…でも安心しました。たしか…高校も同じだとか?」

「4月から同じ高校に通ってやります」

「そうですか、引き続き、灯の事をよろしくお願いします」

「頭とか下げられるタイプの人なんですね」


 お母さんを取っかえ引っ変えな人だからきっとろくなオヤジじゃねぇんだと思ってたけど、良かった良かったと目尻に皺を寄せて笑う顔には、いい父親の雰囲気が溢れんばかりに滲んでる。


 なんか色々とイメージと違うけど……



「じゃあみんな…手を合わせて…… 尊いおめぐみをおいしくいただき、ますます御恩報謝につとめます。おかげで、ごちそうさまでした」

『ごちそうさまでした』

「食前はキリスト教で食後は浄土真宗なんだ!?」


 いい家族なんだな。


 ********************


 お風呂……次女ちゃんと頂きました♡

 ツヤツヤでピチピチで、大変けしからんでした。ご馳走様でした。いや… 尊いおめぐみをおいしくいただき、ますます御恩報謝につとめます。おかげで、ごちそうさまでした。

 次女ちゃんはまだ湯船でのぼせてます。色んな意味で♡



 風花家にプライベートの概念はないらしい。

 居間に布団を散乱させて雑魚寝だ。そのせいか部屋の電気を消した後もくすくすと笑い声、ライダーキック、スペシウム光線が止まらない。

 こりゃ長女は大変だ……


 そんな風花さんは私と同じ布団で密着してた。来客用の布団はないとかで、風花パパか風花さんという選択の余地のない2択を迫られた。

 奥の方で小爆発。風花パパの屁だった。


「桐屋さん、寝る前にスマホいじったら眠れなくなるよ?」

「お母さんに今日は泊まってくるって連絡してんの」

「今!?」


 …しかし、お母さんが4人も居るなんて不思議な家だ。どうしてこんなことになったのか。

 訊きたいところだけど、他人の家庭の事情にズカズカ踏み入るのはよろしくない事で…


「……なんで風花さんのお父さんって何度も結婚と離婚を繰り返すの?」


 訊いてみた。


「運命の人を探してるんだって」

「あの歳で?」

「うん、未だにね。多分まだ、家族は増えるんじゃないかな?」

「どーして運命の人じゃないのに子供作っちゃうの?」

「ベッドの中じゃなきゃ分からない運命もあるんだって」


 訊くんじゃなかったぜ……


「……ふふ」

「なんだよ?急に…鼻毛でも出てる?」

「耳毛なら出てるけど……違うよ。楽しいなって……」


 至近距離で顔をクシャってして笑う風花さんの顔は見た事なかった。こんな無邪気な顔もできるんだ。


「……今日は楽しかったかい?」

「……うん。風花さん、どうして今日私を呼んだの?」

「……思い出作りだよ」


 地球滅亡の言葉が頭を過ぎる。

 思わず至近距離から見返す風花さんの顔。風花さんも私の事を至近距離から見つめてた。

 眠たげなような……のぼせたような瞳で……


 やだ、ドキドキしちゃう///


「…………ちゅ…チューする?///」

「初めてなんだ…友達とお泊まりなんて…桐屋さんの家が直ったら、今度はみんなでお泊まりさせてね?」


 無視すか……


「……なんで風花さんはさ…私と友達になったの?」


 なんでこんな事を訊くんだろうと思いながらつい口を突いて出た言葉。私の脳裏にはまだ話した事もなかった頃の、教室の片隅で物憂げな表情を浮かべる彼女の姿があった。


 風花さんは虚を突かれたような顔をした。でも直ぐにはにかんだ。いつものように、真意を隠すようなミステリアスな笑みだ。


「桐屋さんのことがいいなーって、思ったからさ」


 その言葉の意味を……どう受け取ればいいんだろうかと、一瞬考えを巡らせたけど、やめた。


「ふふふ……また遊ぼうねぇ。地球が終わる前にさ」

「……そーだね」


 地球滅亡まであと13日…

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