66日目 困ったらゲロオチ!!
「……信じられない、蘭子…青藍、受かってたよ」
「……(怒)」
「……蘭子、おかんがお祝いしよって…今日ばかりは私、家から出てもいい…」
「陽菜……いや、アンデット・アイ」
「……新しい呼び方だ…」
「カレーと納豆一緒に食べる人、どう思う?私は…許せない。だってカレーにも納豆にも唯一無二のいい所があるのに…それを一纏めにするなんてのは、これはカレーと納豆に対する冒涜だよ」
「……(汗)」
「あああっ!!腹が立つ!!」
3月7日火曜日。桐屋蘭子怒りの起床。
美堂家の狭いリビングに出てきてみれば我が母、志乃が怒り狂いながらフライパンを振ってた。
「はぁっ!!せぇいっ!!くぁっ!!(怒)」
「お母さんおはよ(怒)」
「おはよう蘭子(怒)さっさと朝ごはん食べちゃいなさい(怒)」
食卓に並ぶのは3つのキムチチャーハンだった。
いただきます(怒)
「……あの、私達の分は?」
「美堂家の分は美堂家で作ってくれませんかね?(怒)」
「……なら…うちのキムチ使わないでくれます?」
怒り狂いながらキムチチャーハンを貪る私。お情けでミニキムチチャーハンを貰えた陽菜の隣で鼻に米粒が侵入してゲホゲホいいながらキムチを避けて食べてたら、こーちゃん起床。
「おはよ……むにゃ……」
「おはよこーちゃん。朝ごはんだよ^^」
「こーちゃん、食べたら今日はお出かけしなきゃだから、準備するのよ?^^」
私もお母さんも、こーちゃんの前ではニコニコ。
こーちゃん、大盛りキムチチャーハンにニコニコ。
鼻から米粒を噴射しながら食ってたらLINEが…
誰かと思ったら入試の時のギャル子だ。ギャル子からのメッセージは実に300にものぼってるけど今のところ全て無視。
いい加減通知がうざいから見てみよう。
ギャル子
オロチン。あーし、入試落ちたし(´;ω;`)
オロチンはどーだったし?
「黙れ(怒)」
「……蘭子、今日お祝い来ないの?」
「黙れ陽菜(怒)」
「……(´;ω;`)」
ついでにカンパルノ妹からもなんか来てた。
カンパルノ妹
マイプリンセス!!大変だ!!
カンパルノ妹
僕らのチャンネルになんか動画が上がってる!!チャンネル名が「セクシー姉妹の日常」に変わってるし!!
カンパルノ妹
これって乗っ取りですか?
「黙れ(怒)」
「……蘭子、どうしたの?今日はえらく機嫌が悪いけど…」
「……聞きたいか?(怒)」
「……やっぱいいや」
「聞かせてやろう」
事の始まりは3日前…財布を落とした私はこーちゃんと警視庁へ。
そこで石油王とクソッタレ女、白浜玲美が事故。石油王白浜に惚れる。結婚しないと日本に石油やらないと脅す。
白浜結婚したくない、んでその場にいたこーちゃんが運命の人だからウンタラカンタラとかほざく。
色々あって白浜との結婚を賭けて勝負。
私ら勝っちゃう。
白浜とこーちゃんの結婚が決まる。
「……今に至る(怒)」
「……(汗)」
「で、今日は白浜の家族と会ってくる(怒)」
「……え?こーちゃん君、結婚するの?」
えっへんって胸を張ってるこーちゃんだが、こーちゃんは知らない。
あの混沌の母、白浜と結婚なんてした日にはこーちゃんにどんな災いが降り注ぐか……
てかあんなイカれ女が地球上最高の愛らしさを持つこーちゃんを婿にするなんて、不遜。
「……陽菜、私は今日白浜家を皆殺しにする。手伝うか?(怒)」
「…………手伝わない…けど(汗)」
「ならお前から死ぬか?(怒)」
「……こーちゃん君、婚約おめでとう」
逃げるようにこーちゃんに話しかける陽菜にこーちゃん、申し訳なさそうに一言。
「こーちゃん、けっこんするから、ひなねぇちゃんとはけっこんできないんだ。ごめんね?」
「……え?(汗)プロポーズもしてないのにフラれた……?」
「こーちゃん、このいえをでます。おせわになりました」
「ダメだっ!!」
そんな事この桐屋蘭子が許さない!!仮に、万が一結婚するにしても家を出なくてもいいじゃないか!!
「こーちゃんっ!こーちゃんはお姉ちゃんとずっと一緒でしょ!?」
「おねえちゃん、ごめんね?こーちゃんいなくても、ちゃんとふとんかぶってねるんだよ?」
「うわあぁぁぁっ!!」
「あしたから、こーちゃん、ひとりぐらしだ」
「……え?こーちゃん君、結婚するのに一人暮らしなの?婚姻直後から別居?…てかこーちゃん君、日本では18歳まで結婚できないから、まだ結婚はできないんだよ?」
陽菜から衝撃の事実が……
「なっ……なんだって!?!?」
「……(汗)」
「18になるまで結婚できないの……!?」
「……逆に蘭子……4歳児が結婚できると思ってたの?(汗)」
地球滅亡まで今日入れて35日……
じゃあこーちゃんの結婚は不可能…?
「ふはははははははっ!!」
え?てか…Xデーまであとたった35日…?早くね?
…………まぁいいや。
「お母さん!!こーちゃん結婚できないって!!」
「こーちゃん、けっこんするよ?」
「……こーちゃん君、結婚の意味分かってる?あと、私の髪の毛しゃぶらないで?」
「けっこんって、おしべと、めしべが、がったいすることだよ」
「……蘭子あんた…こーちゃん君にどんな教育してんの!?」
*********************
会合場所に指定されたのは市内のシティホテル。
お母さんの運転でやって来た桐屋一家をエントランスで待ち構えていたのは真っ白な衣装に身を包んだ3人組。
邪神ナイアルさんの器、白浜玲美。
そしてその両親。
すなわち、邪教徒です。
ホテル1階、カフェスペース。
ホテルの中庭には3月の陽射しが降り注ぎ、人工的な緑を煌めかせてる。もう春の足音はすぐそこに迫ってた。
朝の穏やかでゆったりした時間が流れる中、仕事に勤しむサラリーマン、談笑を楽しむマダム、なんか見合いしてる男女に混じり、私達の緊張の会合は開始される。
「はじめまして。白浜玲美の父です」
「母です」
「お名前は?(怒)」
首から鈴をかけた邪教徒に早速お母さんが攻勢に出る。まるで親の仇を前にしたかのような迫力…
しかし相手は邪教徒、まともな会話は不可能だ。
「我々に名前はありません…我々の身はナイアル様への捧げもの…」
「揚げ物ではありません」
「……(怒)はじめまして。康太の母の志乃です。こっちは娘の蘭子」
私を見た父親がおやっ?と何かに気づく。そう、私達は初対面ではない。嬉しくない運命的再会に邪教徒が色めき立つ。
「あなたはあの時の……ふたぐん。そうですか。これもナイアル様のお導き……娘からよく話は聞いています。うちの宗教に入りたいとか…?」
「言ってねーよ(怒)」
「照れなくてもいいんですよ?桐屋さん」
「黙れ(怒)」
さて、今日話し合われるのは両家の今後について…すなわち、こーちゃんと白浜の結婚について…ふざけてやがる。
「お前達にこーちゃんは渡さないっ!!(怒)」
「おちつくんだ。おねえちゃん」
何がおかしいのか白浜、ふふふ…と不敵に笑ってる。死ね。お前らの思い通りにはさせないからっ!!
「お前らは知らないだろうから教えてやる…こーちゃんは4歳児だからまだ結婚はできない。すなわち!この結婚は無かったことになるっ!!死ねぇい!!(怒)」
「ふたぐん…そんな事は私も承知しています。ですが桐屋さんと義理とはいえ姉妹の契りを交わすこの機会…逃す手はありませんよね?」
「娘もこう言っておりますので…」
「婚約という形で……息子さんが18になったら白浜家に婿として頂きます」
頂かせねーよ?(怒)
「白浜、そもそもおめー、本当にこーちゃんと結婚したいと思ってんのか?あれ、その場の思いつきの嘘でしょ?何が運命の人だふざけんな(怒)」
「これもナイアル様のお導き……」
「ふたぐんっ!!」
「にゃる!!しゅたんっ!!」
ダメだ……話にならない。なんか登場回数増える度に意思疎通が不可能になってきてる気がする…(怒)
「それでですね桐屋さん」
何がそれでですなのか知らんけど白浜母が不気味な笑顔を貼り付けて語りかける。息が臭ぇ(怒)
「結婚はまだ先の話ですがいずれは我が一族に加わる運命…白浜の血族になるのであれば、ナイアル様を信仰して頂く必要があるのです」
「蘭子っ!!この人達さっきからなんなの!?(怒)」
「やっぱりそういう魂胆だったかてめぇ!!新手の宗教勧誘かよっ!!(怒)」
「落ち着いてください桐屋さん…平常心です。さぁご一緒に……くとぅるふ、ふたぐん、にゃるらとてっぷ、つがー」
こーちゃんが真似して「くとぅるふ」とか言い出した。早くも邪教徒の魔手がこーちゃんに迫ってきてる。こいつらを早急に排除しなければならないっ!!
とりあえずパンプキンパイでこーちゃんの口を塞いでおこう。
「もぐもぐ」
「やめてっ!!うちはもう時空のおじさんに信仰心、捧げてるんだからっ!!(怒)」
「蘭子なに?その時空のおじさんって(怒)」
その時白浜父が「素晴らしいっ!!」と叫び立ち上がる。もう完全に目がイッちゃってるんでこれ以上はこーちゃんの教育に良くないから帰りたいですはい。
何が素晴らしいのかと…
「やはりあなた方は同士。外なる世界の神を信仰する同士として、私達は手を取り合わなければいけません。な?母さん」
「はい、これは義務です」
「蘭子、あんたのせいで同類と思われてるんですけど?(怒)」
「ちげーし。勘違いだし。時空のおじさんは私の舎弟だし(怒)」
「お父さん、お母さん、脱線してるよ?ふたぐん」
話も常識も明後日の方向に脱線しまくってる両親が白浜の声で平静を取り戻し……嘘。こいつらに平静なんてない。常に頭が混沌ってる。
気を取り直した白浜父が「それでですね」と仕切り直し。何がそれでなのか全く分からんけど、とにかく仕切り直した。
「ナイアル様への信仰は簡単なものではありません。混沌に身を委ねるというのも、簡単ではありません。つまり、大変だと言うことです」
「小泉構文やめろ(怒)」
「蘭子、奴らのペースに乗っちゃダメよ(怒)お母さんが話すからあなたは黙ってなさい(怒)」
「しかし息子さんが白浜家の一員になるその日にはもう、ナイアル信者になっていなければならない…つきましては今日から息子さんを我が家で預かりまして、18歳になって正式に入籍するその日まで我らが教義を叩き込もうと思っております」
何を…言ってるんだこいつらは?
「全ては次世代のナイアル信者を作り上げる為」
「ふたぐん」
「混沌、足りてますか?」
お母さんはもう目眩で倒れそうになってた。
「桐屋さん」
「んだ、白浜。このご時世他人の信仰についてとやかく言うべきじゃないと思ったてたけどもう言うわ。お前はおかしい」
「弟さんは混沌の母たる私と契りを交わす特別な存在…敬虔なるナイアル信者でなくてはいけないんです」
「やかましい(怒)」
「…そして弟さんとの結婚は、我がナイアル教と桐屋さんの時空のおじさん信仰が強固に結びつく、その象徴なんですよ。事の重大さ、理解しました?」
「できるわけねーだろ(怒)」
「弟さんは私の夫に相応しくなるよう、きちんと育てます。ふたぐん」
「ざけんな(怒)」
話は終わりだ。こんな連中とまともな会話が出来ると思った私がばかちんだった。
こいつらの頭をフォークで突き刺す。それで終わりだ。
「勝手な事ばかり言わないで貰えます?息子はまだ4歳なんですよ?てか…あなた達ほんとに白浜さんのご両親なんですか?なんか怪しい宗教の回し者なんじゃないですか!?(怒)そうやって信者増やしてんでしょ!!ふざけんじゃないわよ!!(怒)」
「…勝手な事…ふむ。どちらが勝手なんですか?ふたぐん」
白浜父、我が母の恫喝を前にしても微動だにせず。そしてこーちゃんを穢らわしい目で見つめてる。ふざけるな。死ね。
「大袈裟に考えないでください。ふたぐん。これは結婚…親の我々がなんと言おうと、本人達の気持ちが優先される、そうでしょう?ふたぐん」
「その、ふたぐんってのやめてもらっていいですか?(怒)」
この野郎散々ふざけ倒しておきながら唐突な正論で私達を黙らせる。
そして変態がこーちゃんに問いかけを投げた。
「康太君、君はうちの娘と結婚したいかい?」
「うん」
こーちゃんを使うとは卑怯なっ!!
「待ってください!康太は未成年ですよ!?親の許しがない限り結婚も入信も許しませんっ!!」
「そうだ言ったれ母さん!!(怒)」
「ふたぐん…だからと言って本人の意志を無視していい…道理はないっ!!ふたぐんっ!!」
「だからそのふたぐんってやめろっ!!」
白熱する戦い。よく分かってないこーちゃん。輝きを増す白浜っ!!
ホテル内はまさに混沌を極めていた…
「康太君!君はナイアル様を信仰したいね!?ふたぐんっ!!」
「康太君、おばさんと一緒に唱えてごらん?にゃる!しゅたんっ!!」
「私のお婿さんになるなら当然ですよね?」
「……うぅ?……うっ」
「にゃる!しゅたんっ!!」
「くとぅるふ!!ふたぐんっ!!」
「……おかあさん…おねえちゃん…」
「ちょっと!息子が怖がってるじゃないっ!!」
「こーちゃんから離れろっ!!このイカれ野郎共っ!!(怒)」
「「「ふたぐんっ!!」」」
「……っうぇぇぇぇぇんっ(泣)」
こいつら…っ!!
ゆるさんっ!!
「よくもこーちゃんを泣かせたなぁっ!?貴様らァ!!ここから生きて帰れると思うなよ!?(怒)」
激情に駆られる桐屋蘭子、白浜一家に詰め寄った。
その時私の目に一瞬、眩い輝きが映る。
白浜玲美--混沌の器たるこの女の体には、混沌を呼ぶエネルギーが渦巻いてる。
その有り余るエネルギーは常に白浜を発光させる程なんだ。
私は忘れてた。
混沌の母白浜玲美--この女の居る所には常に…
「…あっ……なんか急に気分が……うっ」
混沌がある事を!!
「おえっ!!うげぇぇぇぇぇぇぇえっ!!」
ビシャビシャビシャ!!
「うげっ!?ああああああああっ!?」
「蘭子!?臭っ!?」
「えぇぇぇぇんっ(泣)」
今日の混沌は突然噴射されたゲロ。
まるでビーム砲みたいなそれは地球の物理法則ガン無視で地面に対して水平射出。
私の顔面にぶち撒けられた汚物の勢いは15歳の女子を吹き飛ばす破壊力だった。
こーちゃんだったら死んでた…
嗚呼…よかった…
ぶち撒けられたのが私で良かった…!!
「おっ!お客様ぁ!?あっ!?臭っ!!」
地球滅亡まであと34日…




