表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/70

64日目 リアルかぐや姫

『マイプリンセス!カメラが届いたから渋谷でナンパ動画撮ろう!!僕に任せてくれ!!』

「黙れっ!!」


 3月5日日曜日。健全なる社会の一員は体を休め、健全じゃない社会の奴隷は嬉々として労働に勤しむ日。

 そんな朝を迎えた桐屋蘭子15歳。あらゆるしがらみから解放されし今日、こーちゃんを連れ出して高台公園にダンゴムシ捕まえに行こうと思ったら……


「財布がねぇ!!」

「いちだいじだ」


 財布が無いことに気づいた!


 昨日最後に財布を使ったのは……確か夜中の3時に自販機の下漁りに行った時…小銭があったら財布に詰めようと思って持って出かけた…


「あの時か……っ」

「どのときだ?おねぇちゃん」

「蘭子ちゃーん。ごめんけど、大根買ってきてくれないかしら?陽菜は外出アレルギーだから…」


 陽菜ママが図々しくおつかいを要求してきたけど無視!私はこーちゃんを連れて……


「お母さん!警察行ってくる!!」

「あんたまた……っ!!何したの!?」





 まさかこんなお出かけになるなんて……

 こーちゃん、久しぶりにお姉ちゃんと出かけられて嬉しいみたいで朝からウキウキしてら。小さいおててがぎゅっと握り返してくる。


「きゃわわわわわわやっ!!!!」

「おねえちゃんがこわれた」

「こーちゃん、今からどこ行くか知ってる?」

「しってる。けいさつ。おねえちゃんじしゅするんでしょ?」

「違うけど。こーちゃん、落し物をしたら警察に助けを求めに行くんだよ?」



 ……この前捕まったばかりだから一応サングラスとマスクと帽子で顔を隠して…私とこーちゃんは警察署に向かう。

 この桐屋蘭子、そこらの交番なんかじゃ満足できない女なのでわざわざ電車に乗って……


『まもなく、桜田門、桜田門』




 警視庁にやって来たぜっ!!


 千葉県民は都内が近くていいよね♪


 という事で、入庁!

 ……と思ったらなんだか1階が騒がしい。みんな忙しそうだ。

 とりあえずどこに言えばいいのか分からないから一番近い受付へ……


 婦警さんが居た。可愛い……


「あの…すみません」

「はい、どういったご用件でしょう?」

「連絡先教えてください」

「はい?」


 違う違う。


「財布を落としてしまいまして……」

「あー…………なるほど…出来れば…最寄りの警察署か交番の方へ……」

「は?なに?助けてくれないの?私、財布無くして困ってんだけど?」

「おねえちゃん、おなかすいた」

「あー……オンラインでもお調べ出来ますよ?」

「…なに、その「落し物くらいで本部庁舎こんなとこまで来てんじゃねーよ」って顔…こっちは財布落としたのに電車賃払ってここまで来てんだよ」

「なぜ……?」

「探せよ……」

「……(汗)」

「早く探せよ!私の財布っ!!」


 ……なんか受付に人が集まってきた。


「どうかなさいましたか?」


 奥からベテランっぽい警官が出てきた。ホッとした顔をした婦警さん。でも、私許さないからそんなの。

 この婦警さんは新人で、この警官はベテランなのかもしれないけど、そうやって何かある度にベテランが出てきて処理してたら、この子の成長にならないじゃないっ!!


「黙って。今この人と話してる」

「……えっと…」

「失礼ですが、ご要件はなんでしょう?」

「お前とは話さない。消えなおっさん」

「……こちらで対応致します。どうぞこちらへ…」

「ここから動かないし、このお姉さん以外とは話さないっ!!」


 正午の警視庁、1階総合受付、緊張が走る。





 そして時は経ち……


「……ですので…こちらで遺失物の対応はしておりません。遺失物センターにお問い合わせ頂くか、警察署か交番まで……」

「私は、その為に、ここに来た。1時間以上かけてだ!!」


 ざわざわ……


「何事だ?」「なんか…変な奴が受付でゴネてて……財布落としたらしいんだけど」「財布ぅ?わざわざそんな事の為に本部庁舎ここに来たの?」「なんか電車で1時間以上かけて来たって…」「なんじゃそりゃ」「なんかあいつ怪しいぞ」


 痺れを切らしたベテランが何かを耳打ちする。


「……か、かしこまりました。こちらでお調べ致しますので…」

「おい。私はあなたと話してるって言ったよね?今、後ろのおっさんなんて言ったの?」

「……(涙)」

「「面倒臭いから受け付けてやれ」とか言ったんでしょ!?ねぇっ!!私は!!あなたの意思と、言葉で!!」

「なんなんですかあなたは…(涙)」

「こっちがなんなわけ!?どうして財布落としてこんな嫌な気持ちにならないといけないの!?」

「もう勘弁してください(涙)」

「あなたの意思で私と話して!!あなたの心からの言葉以外聞きたくないっ!!」

「もう帰ってください(涙)」


 周りの野次馬(警官)が刺股持ち出してきていよいよ危機的状況だった。こーちゃんはお昼ご飯が食べたそうだ。


 なんだか納得いかないけど……


「……まぁ、受け付けてくれるんなら…いいけど///」


 ここらでデレとこう。


「ぐすっ……では…落とされたのは本日ですか?(涙)」

「昨日の夜中の3時くらい」

「場所は?(涙)」

「自宅近く。千葉県大津野市檜--」

「えっ!?ち、千葉県!?(涙)」


 ざわざわ


「あいつ千葉から来たのか?遺失物の問い合わせの為だけに?」「何考えてんだ…」「この忙しい時になんなんだあいつは一体…」


 また後ろからベテランが耳打ち。多分「もういいから応対してやれ」って言ってる。

 溜まるフラストレーション。


「……えっと…お財布の特徴は(涙)」

「百均のマジックテープが付いたやつ。スマイルピッチ☆マニュキュアのイラスト付」

「……中身は?」


 ……中身。


 確か現金で28円と…拾ったユルハドラックのレシートと……あとは…ビール瓶の王冠…

 だけど私にだってプライドはある。4月には高校生。あまり恥ずかしい中身を晒すわけにはいかない……か。


 ここは少し盛っておこう。


「現金で20万少々……あとクレカが3枚…」

「え?(汗)」

「あとは……免許証とマイナンバーカードと資格証…確か…ITパスポートと公認会計士と宅地建物取引士と事業用操縦士と……気象予報士の資格もあったかな?」

「……失礼ですが、ご職業は?」

「4月から高校生ですけど?」


 何か言いたそうな顔をしてたけどベテランから耳打ちされてその通りにパソコンに入力してた。


「……で?届いてる?」

「……お調べしましたがござませんでした」

「…………じゃあどうすんのさ?」

「……警察に届いたらお知らせするように、遺失届け、出されますか?」

「うん」

「お名前とご連絡先お願いします」

「桐屋蘭子、15歳。大体いつもこのバーにいるから」

「真面目にやってくれませんか?(涙)」


 *********************


 遺失物届け貰っちゃった♪

 これで日本中どこの警察署に届けられても私の所に連絡が来るって寸法よ。蘭子ワクワク。


 ……さて、もう用はないからトイレだけ借りて帰ろうと思ったんだけど、やっぱり今日、都内が騒がしい気がする…

 ただ騒がしいんじゃない。物々しい雰囲気だ。

 外に出たらいかつい顔したおっさんやらが道に立ってて、只事じゃ無さそうだ。

 いかついおっさんがインカムでコソコソ話してるのをこーちゃんが真似してる。


「こちらこーちゃん。おねえちゃんのすかしっぺをかくにん」

「あらヤダこーちゃん。お姉ちゃんもうすぐ高校生よ?JKはそんな事しません」


 ブボッ!!


「!?なんだ!?爆発音か!?」「テロだ!異臭がするぞ!!」「周辺を固めろ!!」


 私の本気っ屁でちょっと周りがパニックになる程度には今東京の街はヒリついてた。

 この対応…いかついおっさん達は私服警官だ。


 恐らくその原因は……


「あの見るからに高そうな高級車…きっとあの中にVIPが乗ってるんだよ」

「びっぷ?」

「そう、金の成る木だよ、こーちゃん」


 前後を覆面パトカーに守られながらトロトロ車道を走る高級車を歩道から見守る。

 この様子だと車の中の人物は只者じゃなさそうだ。もしかしたら、ないかくそーりだいじんって奴なのかもしれない。きっとコッカイギジドーとかいう所に行くんだ。


 ……もう一度掛け合ってみてもいいかもしれない。


 車の中身が国のお偉いさんなら、地球滅亡の話をするラストチャンスなのかも…

 でもかんぼーちょーかんと話そうとしただけであれだったし…なんだか今回は前よりも厳重な警備体制…


 ……いけるか?


「こーちゃんここでいい子にして待ってるんだよ?お姉ちゃんちょっとあの車追いかけて来るからね」

「おねえちゃん、またわるさしようとしてるの?」

「違うよ。地球の命運は私の両肩にかかってるんだよ」


 諦めはついてるけど…最後のダメ押しだ。

 私はクラウチングスタートの構えを取る。


「……あの人なにしてんの?」「なんか面白くね?」「…私は体育大の教授じゃが、あんなに美しいフォルムのクラウチングスタートは見たことがないわい…写真撮っておこう」


 通行人が私を撮る。


 そして……


「っ!?」「きゃぁあっ!?」「なんだっ!?車が……っ!!危ないっ!!」


 悪魔がVIPの首を獲りに来た!


 厳重な警戒の中トロトロ進むVIP車両。

 その対向車線、なんとワゴン車が明らかに制御を失ってVIP車両の方へ突っ込んできた!

 VIPの前後は警察車両に守られてたけど、突如真横から襲い来る刺客には無力。


「やばいっ!!」


 ないかくそーりだいじんが死ぬ前にせめて話をっ!!私のクラウチングスタートが火を吹いたまさにその瞬間…




 ドンガラガッシャーン☆



 トリケラトプス並のタックルをかましたワゴン車が盛大にVIP車をひっくり返した。

 弾け飛んできた車のミラーがスタートを切った私のおでこに直撃!


「ぐはっ!!」

「あっ!おねえちゃん!!」


 現場は騒然……

 周りを固めてた警察官達はすぐに車の方へ…

 そして明らかな負傷者である私に構ってくれる人は居なかった……


 殺意の波動を目覚めさせながらおでこから垂れる血を拭う私は気づく。


 殺意の塊と化したワゴン車の後部ドアを開け、何者かが車外へ……


 私はそいつの顔を見た瞬間目眩を覚えた。きっと頭を打ったせいじゃないはずだ。


 そう……


「しっ!……っ!!白浜ァ!?」


 混沌の母、白浜玲美--

 この大惨事は奴の仕業だったのだっ!!


「…ふたぐんっ!!」







 --白浜玲美、それはこの世界に混沌をもたらすためナイアルさんとかいう邪神に力を授けられた混沌の器。

 世界最強の生体兵器。


「またお前か!?一体ここで何してる!?」


 絶対に関わるべきでは無いけど、目撃してしまったからには突っ込んでおかないわけにもいかない。

 私を見つけたハゲは相変わらず輝かしい(物理的)狂笑を浮かべていた。


「桐屋さん!また会いましたね!!」

「お前……出歩いていい体じゃないだろ!?」


 お前が行く所行く所で人が死ぬんだぞ?


「ご心配ありがとうございます。実はこの前病院が吹き飛んだじゃないですか?なので別の病院に移送される事になったのですが…」

「じゃああれは……病院の移送車か」


 移送車の運転手は引きずり出されて私服警官に囲まれてリンチにあってた。


「てめぇこらぁ!!」「何晒しとんじゃボケェ!!」「死にてぇか!?」

「ちっ!違うんですっ!!突然ハンドルが言うことを聞かなくなって……!!」


 これに対し白浜は……


「ふたぐんっ!!」


 ……だ、そうです。


 さて、現場は混沌と化して参りました。

 野次馬も集まり、現場の注目は問題のVIP車両へ…

 慌てて駆け寄った警察官達が扉をこじ開け、中の御仁を救出中。


 ……ああ、あのドアだけでいくらするんだろうなぁ…なんて考えながら眺めてたら…


「おい!無事だぞ!」「奇跡だ!!」「救急車はまだか!?」


 無事だったって。


「良かったな白浜…これでないかくそーりだいじん死んでたらお前、今度こそ死刑だったぞ?あれだよ。外患誘致罪とかだよ」

「よく分かりませんが、今日も街は混沌としていてとっても素晴らしいですね。桐屋さん、今日は天気も良いのでここはひとつ、一緒にナイアル様を讃える儀式と参りましょうか」

「自分が何したのか分かってる?」


「おいあれ…石油王だっ!」


 スマホを向けた野次馬の1人が叫んだ。

 その声に「え?石油王?」「あの?」と次々に野次馬達の視線が集まる。自然と私の視線もそちらに向いていた。


 車から救出されて出てきた人物。

 白いターバン巻いて白い布切れ着た中東系の格好のおっさん……

 確かに……石油王だっ!間違いない!!きっとアラブの石油王だっ!!


「えっ!?ないかくそーりだいじんじゃないのかよっ!!」


 思わずそんな突っ込みが喉から込み上げてきてしまった。

 その大声に野次馬も、警官も、そして石油王も私の方を見た。


 ……今この瞬間最も注目されてるのは私///

 とりあえずこーちゃんとポーズキメといた。


「…………オー…マイ……ゴッド……」


 石油王記念すべき第一声。

 警察官達に支えられながらも、ふらつく足取りで石油王がこっちに向かって来た。

 その顔は湯葉のようにとろとろになってる。傍から見ても分かるくらい顔を赤くしたまま、思わず神へ語りかけてた。


 ……え?私?


「……ついに石油王に神と認められたか…」

「おねえちゃん、すごい」

「跪け石油王!そして人類よ!!そう!私が神ぞ!!我こそは天照……」


 石油王、私をスルー。通り過ぎた。


「…………あれ?」


 そして石油王は天然痘ウイルスより危険な白浜の前に立つ。

 まさか……石油事業で世界の覇権を握った石油王、その慧眼は見抜いているのか?自分の車をひっくり返した狼藉者が誰なのか?


 今まさに白浜に天誅が--


「……ビーティフォー…美シイ……アナタハ、ヴィーナスデスカ?」


 ………………何を言ってるんだこいつは。


「いいえ、私は混沌の母です」


 なんだその間違えた英文翻訳みたいなセリフは。


「僕ト結婚シテクダサイ」


 何が起きてるんだ?


 *********************


「私ハ石油王デス」


 だそうだ。


「はじめまして、白浜玲美です。あなたもナイアル様を信仰してらっしゃるんですか?」


 こいつは全人類皆邪教徒だと信じてる。

 ここで桐屋蘭子に疑問が生じる。


「何故ここにアラブの石油王が……?」

「石油王は今日、石油事業の交渉で来日されてらっしゃるんだよ。この方の一存で日本のエネルギー問題の未来は決まる、今日はXデーなんだよ」


 中年の野次馬が話しかけてきた。私はすかさず防犯ブザーに指をかける。

 野次馬は続ける。


「あと、この人はアメリカ人だよ」

「アラブじゃねーのかよ」


 じゃああの民族衣装はなんなんだ。


 Xデーにやってきた石油王は語る。


「アナタヲ見タ時、運命感ジマシタ。私ト結婚シテクダサイ」


 なんというシンデレラストーリー。

 みんながドキドキする中、ツルッパゲ発光体、白浜玲美は……


「ごめんなさい。私には使命があるので…」

「使命?ナンデスカ?」

「世界中に混沌を広めるという使命です」


 テロリズムを理由に断った!


「ソレハ困リマス。私ノ運命ノ人ハアナタ以外イマセン。今スグ結婚シテクダサイ」

「でも……」


 おいっ!こっち見んな!!


「結婚シテクレナイト言ウナラ私ノ会社カラ今後一切日本ニ石油ハ輸出シマセン」


 圧倒的権力を傘に立てた脅迫。これには警察官達も黙っていなかった。

 ざわつく野次馬の中から「失礼」と何者かが失礼しながら出てくる。

 問わずには居られない。


「あんた誰?」

「国の偉い人です」


 国の偉い人らしい。


「石油王、それは困ります。話が違うじゃないですか」

「イヤ。結婚シナイナラ、石油ハ渡サナイ」

「そんな……この国のエネルギー事情はどうなるんですか?今日本は各国からのエネルギー資源供給が不足してて、今年の4月には全てのエネルギー資源が枯渇するんですよ?」


 マジか……

 隕石云々の前にこの国に破滅の足音が…


「知ラナイ。私関係ナイ。私石油王、偉イ。結婚シテクレルナラ、石油タダデアゲテモイイ」


 石油王の返答はこれだった。こんな奴に石油王やらせてていいのか?


 すると国の偉い人の話も変わってくる。


「…お嬢さん、どうでしょう?ここはひとつ結婚してもらえないでしょうか?」

「いや急にそんな事言われても…お父さんに相談しないと……」

「どうかお願いします」

「それに私……トム・ク〇ーズ似の人じゃないと……」

「日本の未来が懸かってるんです」


 さっきから白浜がチラチラこっち見てる。こっち見んな。

 間髪入れず石油王が更なる圧をかけてくる。


「今ココデ決メテクダサイ。ジャナイト私、国帰ル」

「お願いしますお嬢さん」

「…ふ、ふたぐん…(汗)」


 どうやら白浜にその気はないらしいけど…


「じ…………」

「なんですか?お嬢さん」

「…実は私にも運命の人が……(汗)」

「ソレハ私デスネ?」

「違います……」


 いつもならピカピカ発光してる白浜、今ばかりは発光が萎んでただの美少女(ハゲ)だ。

 そんな白浜が冷や汗混じりに出した苦肉の策とは…


「この人です。私の運命の人!」


 奴は私を指差した。


「……(汗)」


 嗚呼、なんたる混沌。この桐屋蘭子だって今まで幾多数多のカオスを生み出して来た女。しかし何故だろう。この女と関わる時私はいつも被害者になってしまう。

 今宵日本の存亡を賭けた重大な問題に巻き込まれてしまった……


「……あの人は女性ですよ?」


 国の偉い人が言う。このご時世そういうことを突っ込むのはとてもセンシティブなのに…

 そんなのもお構いなしに白浜は私の方へ駆け寄ってきて腕を絡ませてきた。


「いやこっちです」

「んだ?」




 ……私じゃなくて、こーちゃんに!


「この人が私の運命の人なんです。ふたぐん!」

「やったぜ」

「………………っ!!!!」


 桐屋蘭子絶句。

 まるでキルアを殺すと口にしたヒソカに殺気をぶつけるイルミのような顔面になりながら白浜…いやビチグソ野郎を睨みつける。私の殺気に当てられた野次馬達が蜘蛛の子を散らすように逃げていく。


 ただ、石油王は違った。


「ダメデス」


 そうだダメだ。


「おい白浜ふざけんな。よく考えろ?こーちゃんまだ4歳だぞ?てか、私は認めない。お前みたいな迷惑女にこーちゃんを渡すわけがないだろうがこのメンダコッッッ!!!!!!」

「いや運命の人なので……」

「こーちゃん、うんめいのひとに、なっちゃった」

「ぶち殺すぞこのヒョウモンダコがっ!!」


 石油王が歩み寄ってくる。


「少年、私ニソノオ嬢サンヲ譲ッテクダサイ」

「や」

「こーちゃん!?」

「…ドウシテモ譲レナイト言ウノデスカ?」

「うん、や」

「…ナラバ力ヅクデモ奪イ取ルダケデス」


 おいなんだこいつ!こーちゃんは4歳だぞ!?


「そんなことしたら、おねえちゃんがだまってないぞ!!」


 そして私に飛び火した。


「…………白浜。白浜?よく考えろ?石油王だぞ?日本の未来、懸かってんぞ?」

「でもどうせ4月で地球滅亡ですよね?桐屋さん仰ってたじゃないですか」

「いやいや……それは……(汗)」

「ふたぐん!」

「やめろそのふたぐんっての」


 国の偉い人が石油王を宥めながら間に入ってきた。助けて!あんた偉いんでしょ?


「……こうなっては仕方ありませんね。どうでしょう?一度話し合いの場を設けて、どちらがお嬢さんを娶るのか決めるというのは」

「どうでしょうじゃねーよ。いい訳ねーだろ。こんな女くれてやるから帰って!ていうか帰して!!」

「それなら私に名案があります」


 もう黙ってろ白浜コラァ。


「私の出す課題をクリアした方…その人を運命の人として結婚します。この白浜を賭けて、石油王とこの子、戦うというのは…」


 何を言い出すんだこいつは?こーちゃんはまだ4歳だぞっ!?!?


「……フム、実ニ男ラシイ決メ方デス」


 おいふざけんな!バカが乗ってきたぞ!!


「モシコノ坊ヤニ負ケタラ、私モ潔ク諦メマショウ…」

「待て」

「決まりましたね」

「決まってねぇ。待て」

「まけないぞ!」

「待ってこーちゃん!」

「では明日、首相官邸に集合してください。そこで正々堂々、勝負という事で……」

「待てって!!!!」


 またしても白浜の混沌に巻き込まれてしまった…

 唐突に決まった日本の存亡を賭けた花婿デスマッチ。

 そして現着してからずっと待ちぼうけを食らう救急隊員。


 日本の明日はどっちだ……っ!?


 勝負がどうなろうと地球が滅亡するまであと36日…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ