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47日目 白浜の串焼き(お好みの焼き加減でお召し上がりください)

 2月16日木曜日。桐屋蘭子の足取りは重たい。


『白い光のな〜かにぃ〜♪』

「広いヒムラの毛ーがにー♪」

「ちょっと桐屋さん!?歌詞無視しないでくれる!?」


 そのどんよりとした心境は予餞会の合唱練習にすら影響を及ぼすほど…


「あーーうーーぃーーあーーあー」

「…蘭子(汗)」

「どうしたのよ蘭子…揚げ餃子が逃げてるわよ」


 給食も喉を通らず…


「あーーーーー…」

「桐屋さん避けろ!!」


 体育でも、いつもなら軽快なフットワークで回避出来るドッジボールのボールも…


 ベチンッ!!


「ってぇなごらぁぁっ!!!!(怒髪)」

「投げ返してきた!?」「外野に出ろよ!」





「一体どうしたのよ蘭子。今日一日ずっと上の空じゃない」


 帰り道。おかんに詰め寄られながらもやはり私の心は心ここに在らず。ココロコネクト。一体どうしたというのか桐屋蘭子。今更になって地球滅亡に絶望し始めたというのか桐屋蘭子。


 否。


「…蘭子、私達がついてる。なんでも話して」


 泣かせるじゃねーか陽菜…いいだろう。


「実は舎弟の頭に腫瘍が出来てて…」

「……えっ」

「それホント?あと、舎弟って誰よ」


 いい質問だおかん。

 舎弟とは私と同じ神の力を宿した器。名を白浜玲美。

 昨日担当医から告げられた衝撃の一言によると白浜の余命はあと半年らしい。


「余命半年なんだ…」

「……えっ」

「うそ…蘭子、それは蘭子の友達って事なのよね?舎弟っていうのは友達の隠語でしょ?」

「違う。舎弟は舎弟」

「……(汗)」「……(汗)」

「まぁでも…余命半年は別にいいんだよ」

「よくないでしょ……友達なんでしょ?」

「おかんだって4月10日までの命だよ?地球滅亡するんだから全人類余命半年もないんだよ」

「「(まだ言ってるよ……)」」

「ただ、このままじゃ舎弟を病院から連れ出せないんだよね」

「どうして連れ出す必要があるのよ」

「いい質問だねおかん。あのね…その舎弟は世界最強の生物兵器なんだよね……」

「……え?なにそれ?」

「おかん、蘭子の話を真面目に聞いちゃだめでしょ?」

「そいつに殺してもらわないといけない人がいるんだよね……」

「……陽菜っ」

「……おかん、無視しよう?」

「ねぇ。余命半年の患者をどうやって病院から連れ出したらいいと思う?」

「知らないよ」

「……病院に頼んだら?」


 やはりそれしかないのか……





 となれば善は急げ。悪は滅せよ。

 私達は病院にやって来た。


「面会を……」

「桐屋蘭子だっ!!」「桐屋蘭子が来たわっ!!」「厳戒態勢!!」「お助けー!!」


 私が受付にやって来ただけでこの騒ぎ。早くもこの桐屋、人気者。


「蘭子あなた何したのよ……」


 私の人気におかんが嫉妬してる。



 無事面会の許可を得て(そもそも必要なのかは不明。受付のおねーさんが好みだから毎回寄ってる)入館した私達は白浜の病室へ……


「えっ?待って……私達もお見舞いするの?」

「なに寝ぼけ……いや目ん玉腐ったようなこと言ってんの。この蘭子の舎弟に挨拶しとかなきゃっていう使命感はねーのかよ?」

「待って……余命半年の患者をいきなり見舞う心構えが出来てない…」

「陽菜……蘭子のお友達よ。心から励ましてあげましょ」

「おかん……」


 入室。


「うわぁ!?」「眩しい!?」「混沌か!?」


 日も落ち始めた時刻だって言うのに病室は異常な明るさに包まれてる。天井の蛍光灯はついてない。ではなにか……


「くとぅるふ!ふたぐんっ!!」


 白浜玲美だ。


「……ひ、陽菜…この人光ってる」

「頭に腫瘍があるのに!?とてもそうは思えない生命力感じるわよ!?」


 これが混沌の母。いつも淡く発光してるけど余命宣告を受けてなぜかいつにも増してエネルギッシュになってやがる…もしかして……ドM?絶望的状況に追いやられて興奮してるのか?


「白浜ァ!!」

「あっ!桐屋さん、昨日はどうも……おや?そちらの方々は?」

「紹介しよう」


 私の後ろに控えるのは決してスケさんカクさんではない。では何者なのか…?その真実のベールが剥ぎ取られる。


「目が死んでるのが死んだ魚の目」

「……美堂陽菜です」

「デブがおかん」

「初めまして。蘭子の友達の阿部波圭です。突然ごめんなさい、蘭子のお見舞いに着いて来ちゃいました」


 白浜の輝きが増す。


「その輝きはなんなの!?陽菜!目を守って!溶ける!!」

「誰の目が腐ってるって?おかん(怒)」


 白浜が私達の網膜へのダメージも意に介さずに突っ込んでくる。もはや私達の視力は完全に奪われた。

 また入院案件である。


「もしかして桐屋さんの邪教徒仲間ですか!?今から儀式の時間なのですがご一緒に!!」

「「儀式?」」

「白浜、ちゃう。こいつらは私のトモダチ。イケニエ、チガウ。オマエ、トモダチジャナイ」


 誰に喋ってるのか分からない。眩しくて目が開かない。


「ソレヨリ、シラハマ、キケ。イマカラ、タイイン、スル」

「え?……蘭子…どうしてカタコトなの?」

「陽菜!?蘭子!?どこ!?」

「え?……私、退院出来るんですか?」

「ドウセオマエ、タスカラナイ。ニュウイン、ムイミ。ババアノトコロ、イク」

「蘭子なんてこと言うの!!」


 おかんの声がどんどん遠ざかってるんですが…おかん、どこに?


 ……まぁいいや。


「でも…病院の許しが得られなければここから出ることは叶わないのです。先生曰く私は非常に危険な状態なので、外に出る事は許されないと…私は囚われてしまった……」

「……そうだよ、蘭子。忘れないで?あなたがなにかしたら私とおかんも巻き添えを食らうのを……どうして私達を連れて来たの?」

「黙れ腐乱魚眼。おい白浜、どうせ4月10日で地球は滅亡する。全人類余命半年切ってんだから、いつまでも腐ってないで私の役に立て。お前の混沌の力で病院吹き飛ばすとかなんかあんだろ?早く」

「……そう言われましても…そうそう都合よく混沌が巻き起こせれば神は何時でもニッコニコですよ」

「お前と接触してから数日でぶっ飛んだ目に何度も遭ったけど?お前の神はいつもニッコニコだろーが」


 白浜はやる気がないらしい。ならば…


「おかーーんっ!おかーーんっ!!…あれ?おかんは?」

「……まさか…目が見えなくて自分の現在位置を見失ってどっか歩いて行っちゃったのかも…」

「じゃあ陽菜でいいや。売店でストッキング買ってこい」

「……?…お金は?」

「あるわけねーだろ?お前出せ」


 ********************


 桐屋蘭子、あたしゃやる時はやる女よ。

 病院に外出許可を頼むのも面倒臭いし通る気がしないし何より正規の方法で出てもつまらないので……


「てめぇら手を上げろ!!動くんじゃねーっ!!」


 ピカーーーッ


「うわっ!?眩しい!?」「お助け!?」「何事だ!?」「そこに誰か居るの!?」「目がっ!!目がァァっ!!」


 ロビーでティースプーンを手に白浜を拘束した私は強行突破する事にした。もちろん、顔はストッキングで隠してある。

 しかしやたら顔の皮が引っ張られるな…パツパツだ。


 ピカーーーッ


「やいっ!大人しく私達の言うことを聞け!」

「……蘭子…一体何がしたいの…」

「この女を連れていく!邪魔すんじゃねーっ!!」


 ピカーーーッ


「何も…見えないっ!!」「誰だ!?室内でライト点けてるのは!!」「痛い!?何かにぶつかった!」「おかあさぁん!!」


 皆様何も見えないと仰られてます。かく言う私も、何も見えません。


「……おい白浜、お前なんで今日こんなに光ってんの?」

「……嬉しくて…」

「なにが?」

「余命半年……私は死後ナイアル様の元に逝けるんですね…神の御元に…ナイアル様に会えるのかと思うと興奮して発光が止まりません」

「陽菜、こいつ何言ってんの?」

「知らない……(*´つ_⊂`)」


 誰も何も見えてない。恐らく今の白浜の発する光の強さは100万カンデラを超えている。これストッキング要らなかったんじゃね?てか、ストッキングって透けてね?これ顔隠れてる?


「……外出るか」


 とりあえずなんかこのまま行けそうなので私達はロビーを突破する。


「あっ!痛い!何かにぶつかりました!」

「ちょっと!!前に足を出しても一向に進まないんですけど!?」

「蘭子……どこにいるの?」


 私達は今どこで何をしてるんだ?外に出たのか?それとも、病院内を歩き回ってるのか?


 強すぎる光は凶器となる。人は光により全てを奪われると、何も出来なくなる。光がなければ何も見えないのに、ありすぎるとやっぱり何も見えないなんて……


 んな事は今はどうでもいい。


「決めたぞ…この光量のまま車の助手席に白浜乗せて……ババアに運転させよう。事故って死ぬ。白浜も死ぬけど、どうせ余命幾ばくの命…」

「桐屋さん!?汚物さん!?どこですか!?」

「……汚物さん?(怒)」


 もう……なにも……見えないんですけど!?


「ふざけんな白浜!この光止めろ!!お前だけなんで光ったり燃えたり属性過多なんだよ!!私も燃えれるけど…私も光りたいっ!!」

「これが混沌の力!にゃる!しゅたん!!」

「……蘭子、もう帰ろう…」

「桐屋さん!!この光こそが混沌!何も見えない混沌!!さぁ!一緒に唱えて!讃えるのです!!」

「何を!?(怒)」

「ナイアル様です!!にゃる!しゅた--」



 グサッ




 ……おや?


 強い光に包まれて白飛びしていた視界に世界の輪郭が戻っていく……


 嗚呼、世界は今日も美しい。破滅が確定した世界だからこそ、その儚さに心奪われるのかしら……


 ……なぜ白浜の発光が止まった?


 変な音と共に途切れたイカれた呪文。そして晴れていく視界。

 私達は空の下にいた。2月の沈みかけの太陽に染め上げられた空の下に--




 あと、ついでに白浜の頭に鉄パイプみたいなのがぶっ刺さってた。


「か……かか……かっ」


 これには蘭子も、陽菜も、周りに居た野次馬も絶句。


 おでこから後頭部まで、頭貫通した鉄パイプはそのままアスファルトを砕き突き刺さり、見事白浜玲美の頭串刺しの一丁あがり……


「きゃっ……きゃーーーっ!!??」


 何が起きたのか分からんけどとりあえず地球に隕石がぶつかるまであと53日…

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