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44日目 Y〇uTubeドリーム

 2月13日月曜日。雨。


「ふんっ!!んぎぎっ!!」

「こーちゃんがんばれっ!!」

「んぎぎぎぎぎ…」

「あと少しだっ!!」


 桐屋蘭子15歳冬…トイレの前での応援。こーちゃんに早すぎる便秘、到来。

 そして私と親友、美堂陽菜の膀胱にかつてない危機、発生中。


 現場は美堂家、マンションの一室。あと五分で家を出なければ遅刻が確定するこのピンチを私達は乗り越えることができるのか…っ!!



「事情は分かりました」


 一方リビングにて…

 我が母、志乃が相対するはこの家の主、美堂パパ。昨日は朝帰りでした。

 日曜日に家族サービスも忘れてゴルフに出かけて平日に朝帰り…普通ならば帰宅早々雷が落ちてもおかしくないけど今日の美堂家は普通じゃない。

 招かれざる客…いや宿泊客を迎えていたから。


「そういう事でしたら是非家に泊まってください」

「あなたっ」

「いいじゃないか…蘭子ちゃんのご家族なんだから…」


 美堂パパ、実に寛容な心をお持ちです。


「では遠慮なく。おっとそろそろ出勤の時間なのでこれで…あ、晩御飯は……寒いのでおでんとかがいいです。蘭子ー、晩御飯おでんでいい?」

「えー?…ラクダのコブがいい」

「すみません、じゃあラクダで……」

「……(汗)」「……(汗)」


「……蘭子、こーちゃんまだ…?遅刻する。いや、その前に決壊する……(震)」

「こーちゃん!お姉ちゃん達、そろそろ限界っ!!」

「んぎぎぎ……っ」

「んもぉこーちゃん!昨日何食べたの!?」

「……うちのお母さん特製のチキンライスだよ…」

「あとちょっとで……でてくるっ」

「急いで!!」

「……これがあと一年…(涙)」


「では行ってまりいます」

「行ってらっしゃい、奥さん…ああそういえば…桐屋さんのご自宅、どれ位で直るんですか?」

「一年以上…」

「……え?(汗)」「あなた!!」


 *******************


「……というわけで今陽菜とルームシェアしてるんだよね。全く最悪」

「最悪はこっちのセリフ……」


 登校、無事遅刻。


 桐屋家の惨劇を耳にしたおかんこと阿部波圭はその頬肉をヒクヒク引きつらせながら一言。


「陽菜……大変だったわね」

「大変なのは蘭子ちゃんなんですけど?」


 さて……


「というわけで、今桐屋家にはお金がありません」


 察しのいい友達なら分かってくれると思うから募金箱を机の上にドンと置く。

 二人共それが視界に入らないように目をあっちこっちに泳がせてはいるけど、無駄だ。

 おかんの財布が鞄に入っている事はお見通しなんだから。


「とりあえずお母さん、昨日ア〇ム行ってきてお金の工面はしたんだけど……桐屋家が負ったこの莫大な負債をどう返済するか…」

「蘭子、私の財布抜かないで」

「取り急ぎ考えなきゃいけないのは今日の放課後スイーツタイムなんだよね…このままじゃ私、日課の放課後の食い倒れができない」

「我慢すればいいだけじゃない」


 なんだかんだ言いながら募金箱に五百円玉を入れてくれるおかん、優しい。優しいおかんに私はささやかながらプレゼントを贈呈する。


「……なにこれ?」

「これ、お腹に当てて振動させると痩せられるんだって」

「……あ、りがとう…でもいいわ。それ売って家計の足しにして?てか…入試目前でそんな大変な事になって…大丈夫なの?」

「そこら辺は陽菜のパパが面倒見てくれるらしいから大丈夫」

「……え?お父さんいつ言ったの?」

「……今朝、目がそう言ってたよ?」

「……蘭子」

「ありがとう陽菜^^」


 さて…まぁ陽菜は家をくれたんで募金は勘弁してやることにする。となればこんな所に用はないから私は募金箱を手に立ち上がる。

「どこに行くつもり?」と私がちょっと居なくなるだけで不安そうな顔をするおかんに「すぐ戻ってくるお^^」と告げて私は……


「えー……であるからして、この問題は」

「おい御嶽原」


 教壇へ。

 そこに立つ舎弟、御嶽原の前に私は抱えた募金箱を突き出した。


「……桐屋、授業中だぞ?」

「お金ください」


 生徒達の面前、問われるのは教職としての精神性だ。


「また桐屋がなんか始めたぞ…」「目を合わせるなっ!!」「なにあの箱…」「募金箱って書いてる……しかも、赤い羽根まで刺さってやがる……」


「……おかん」「陽菜、もう無理よ…」


 御嶽原、頬がピキピキしてる。


「……あのな?桐屋」

「お金ください」

「……いい機会だから教えてやるが、募金活動ってのはやる前に届出が必要な場合がある。特に私有地で勝手にそんな事してたら、場合によっちゃ警察呼ばれるかもしれないぞ?」

「お金ください」

「みんなも気をつけるんだぞ?」

「お金ください」

「……桐屋、先生本気で怒--」

「みんなぁ!この人!!二組の原さんと--」

「待て待て待て!!」


 御嶽原、私を引きずって廊下へ…穢らわしいロリコンの手が私の肩に触れているっ!!


「みんな助けて!!犯されるっ!!」

「はい!自習自習!!みんな自習だ!!」




 廊下にて。


「……ちょっ……お前さぁ(怒)」

「バラしてやる!原さんとの関係バラしてやる!!教育委員会に言ってやるっ!!」

「ちょっ…勘弁してくださいよ桐屋さん」

「私が今どれだけ大変なのか知ってるよね!?」

「いや……はい……(汗)しかしですね?」

「お前私の舎弟だろ!?」

「いや……あのね?お前も大概にしておかないと……」

「こーちょーせんせーーーっ!!」

「馬鹿野郎っ!!分かったよ!?何が望みだ!?」

「……お金ください」


 御嶽原の所持金は二万九千円だった。シケてやがる。


「ううぅ……放課後結華と映画館デートだったのに……(涙)」

「次、蓮司呼んできて」

「蓮司……?小林なら休みだ。なんか頭打って入院したらしい」


 そうだった……カラオケ店で私、蓮司の頭かち割ったんだった。その程度で入院するなんてなんて情けない蓮司。


「私今お金必要なんだ御嶽原」

「もう勘弁してくれ……俺にはもう金がないんだ」

「そこで提案なんだけどね?御嶽原」

「……(嫌な予感しかしない)」







 全ての授業が終わり、ホームルーム。

 教卓の上に桐屋蘭子製募金箱が鎮座し、皆が募金したそうな目でそれを眺めてた。

 御嶽原が説明する。


「……えー、みんな。知ってる人は知ってると思うんだけど…桐屋の家が吹き飛んだ」


「なんの話?」「嘘だ、だって桐屋の頭、アフロになってないじゃあないか」「また桐屋だよ。勘弁してくれよ…」「あの箱は……なに?嫌なオーラを感じるわ……」


 ざわざわ


「そこで桐屋の家を直すための募金をみんなにお願いしたい。友達の為だ。最低五百円以上、みんな桐屋の為に募金してくれ。先生からのお願いでした、以上」


「は?強制?」「どういう事ですか先生」「いやです」「俺……払うよ。桐屋の為なら」「正気か!?」「まーた桐屋だよ」


 ざわざわ


 みんなが私を見るから私は真顔で伝えておく。


「私は別にいいって言ったよ?でも御嶽原先生がどーしてもやるって言うから…ね?御嶽原?」

「……(悲)」


 *******************


 放課後、私はある人物に電話をかけていた。

 それは気づいたら電話帳の中に登録されていた番号……


『もしもし?孫です』


 孫だ。


「お前小学生のくせにスマホなんて持ってんのかよ……」

『時代ですね……その声は桐屋蘭子。一昨日はどうも』

「どうもじゃないでしょ?よくも家を吹き飛ばしてくれたね?(怒)」

『吹き飛ばしたのはあなたです』


 教卓に置かれた募金箱を影から見守りながら電話は続く。ちなみに、まだ誰も入れてない。薄情者共が。


『それで?電話の要件は?』

「……お前達のせいで我が桐屋家は莫大な借金を負った」

『だから牡蠣を焼いたのはあなたです』

「金が必要だ……」

『まさか脅してるつもりですか?うちのババアに言いつけますよ?』

「脅してるんじゃない……ビジネスだよ」


 あれは……クラスの人気者東山君?おや?募金箱に近づいてる…もしかして、国民の義務(募金)を果たすつもりなのか?


「……ちっ、誰も入れてねぇ…」


 違った。賽銭泥棒ならぬ募金泥棒だ。


「いや……五百円入ってた」


 おかんのお恵み!!


『…もしかして、うちの占いの館で働く気になったんですか?』

「やいてめー!その金は私んだぞ!!」

「ビクッ」

『ビクッ』

「私の金返せ!そして金置いてけ!!」

『突然なんなんですか……』

「き、桐屋……違うんだこれは…っ」

「いーけんのべーいーけんのべー!けーいさつに言ってやろー!!」

『……切りますね?』

「分かった分かったよ!!返すよ!…でもよ桐屋、こんな事(募金)してたらお前、嫌われるぞ?」

「は?私が可哀想だとは思わねーのか?」

『思いませんね。全てあなたの自業自得です』

「いや……なんかもう……なんかごめん。悪かったよ」

「悪かったと思ってんなら金置いてけ?」

『……電話しながら誰かと喋ってます?桐屋蘭子』


 孫が耳元で…うるさいなさっきから。


「今大事な話してんだから切るよ?(怒)」

『いやかけてきたのはそっちでしょ!?』


 そうだった……

 五百円の募金よりこちらの方が大切なので一旦ビジネスの話に集中する。


 ビジネスとはなにか……?


「Y〇uTubeの話さ」

『…え?』

「金がいる。しょうがないから孫とカンパルノ妹のY〇uTubeチャンネル…この桐屋蘭子が仕切ってやらんでもない」


 ビジネスである。

 元よりちょっとだけ…憧れがあったのは事実。桐屋蘭子、Y〇uTubeデビュー。


 ……あとなんか東山は逃げた。


「嬉しいでしょ?令和のノアの子分になれるんだよ?泣いて喜べ、さぁ」

『……』

「どしたの?」


 本来ならこんな天才美少女と一緒にインフルエンサーになれるんだから咽び泣いて大発狂すべきである。それが健全な精神を持った国民の義務なんだけど、孫の反応は芳しくなかった。


 曰く……


『……実は…昨日ババアに相談したんですよ。自分達のチャンネルを運営したいって…』

「うん」

『そしたらババア……私は『万華鏡』の公式チャンネルのスタッフだから許さない…と。他のチャンネルの運営に関わったら訴えると言うんです……』


 なんというババア。


『なので諦めるしかありません。カンパルノ妹には申し訳ないと言っておいてください…』


 ……あ、そう。


 ここで桐屋蘭子、考える。


 金稼げるなら別に『万華鏡』で占いチャンネルやってもいいんだけど…あのババアが広告収入を分けてくれるか怪しい。

 揉めたらババアを殺さなきゃならなくなるので。


 あとあのチャンネル、どれくらい儲かるんだろうか?確か初投稿で二十万再生とか言ってたけど…それってバナナ事故奇跡の生還者である私の顔勝手に使ったからだよね?

 なら私が居ればあのチャンネルじゃなくてもいいはず。占いチャンネルとか、視聴者が限られそうな気がするし……

 もし儲からなかったらババアを殺さなきゃならなくなるので。


 つまりババアに擦り寄る必要はない。

 でも孫がババアに捕まってる。

 孫は動画編集できるっぽいけど、私はできない。つまり、孫は必要。


 つまりババアを殺さなきゃならない。


「ぽくぽくぽく……ちーんっ」

『?』

「蘭子、決めました」

『なにを……?』

「ババアは私に任せて」

『任せて……とは?』

「殺すっ!!」

『っ!?』


 ババアを始末して家を直すけどどの道地球滅亡まであと56日…

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