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21日目 大体『Agの鍵』の力

 みんな、カップスープの春雨、食べた事ある?特にそこの、プチダイエットに勤しむOLとか……


 カップスープ春雨は大体3分で出来上がるんだけど、そこで食べたくなるのをグッと堪えてさ、4分…あるいは5分待って?

 そしたら春雨が肥大化するから。デカくなる。うん。食べ応えが倍になる。

 なんかヘルシーそうだからとかいう理由でカップスープ春雨食べてるそこの君。おにぎりを一緒に食べる暇があるなら1分多く待ってくれ。

 ダイエット的にも、食べ応えがある方が満足感が違っていいから。うん……大丈夫、1分くらいで冷めないから……

 今日はそれだけ覚えて帰ってください……


 以上、桐屋蘭子でした。



「おはよう桐屋さん、昨日は誰かお見舞い来た?」


 桐屋蘭子の朝は早い……

 ていうか、強制的に叩き起される。何故かと言うと病院だから。


 今日も看護師がムカつく1月21日、土曜日。

 あと1週間と少しで1月が終わってしまうという土曜日…いつもなら『目が覚めテレビ』だけ観て12時頃まで寝てるこの桐屋蘭子も、入院生活ともなると健康的なルーティンを強制されるのだ。


 4月10日に地球滅亡が確定してるこの世界線…なぜそんな時にこの私が入院などしてるのかと言うと、バナナの皮で電車が脱線したから…


 今日も蘭子の1日が始まる。



「--じゃあ桐屋さん、今日から徐々にリハビリしていこうね」


 この女の名前はまゆずみ…私の担当看護師らしいが、どうにも気に食わない。

 地球滅亡までにぶち殺すリストに入れてもいいけど、まぁ色々世話になってるのも事実……


 大人(15歳)な蘭子、ここはグッと堪える。


 さて、やる気ない系看護師が私を「はよ降りろ」とベッドから車椅子に引きずり倒す。


 ここに運ばれてきた時、私は全身の骨が砕けてて内蔵は破裂しててあとなんか頭までおかしかったらしいけど……

 どうやらこれも『Agの鍵』の力らしい。驚異的回復力により日常生活に戻る為のリハビリに入れるレベルで回復してきていた。


 内蔵は問題なし。

 頭も問題なし。

 後は脚だ。


 粉々に砕け散ったという私の脚がなぜ今松葉杖をつけば歩けるレベルまで回復してるのかその原理は謎だけど、今日からもう歩く練習を始めるというのだ。


「……あの、大丈夫なんですよね?私の脚、粉々だったって聞いてますけど」

「知らない。いいんじゃない?今日からリハビリさせろって先生言ってたし…最悪車椅子になってもいいじゃない。歩くの嫌いでしょ?あなた……」


 彼女は看護師として1度大怪我して入院してる人の気持ちを知った方がいいと思う。



 さて、リハビリだ。


 リハビリってなんか専門家とかが付いてくれるのかと思ったんだけど……


「贅沢言わないでね?(*^^*)」


 と、黛看護師が言う。

 私は車椅子で強制的にリハビリルームに運ばれていた。


 現在蘭子の目の前に広がってるのはよくドキュメンタリーとかで見る、歩行訓練用のあのロードウェイ…


 両脇に手すりみたいなものがついた短い通路…平行棒と言うらしい。

 ここを手すりを掴みながら歩く。それだけだ。


「…バカにしてるね。松葉杖があればもう歩けるこの蘭子を相手に……手すりを掴めば歩けるに決まってるじゃん」

「ならはよ行け」


 相変わらずなんか態度が悪い黛看護師が車椅子を蹴っ飛ばす。

 今のこれ!!誰か見てなかった!?虐待じゃんっ!!訴えてやるっ!!


 …気を取り直して。


 業腹だけど黛看護師の手を借りて立ち上がり平行棒を掴む。

 私がスタンバったら黛看護師がゴール地点にスタンバる。やはり待ってくれている人が居るか居ないか…これによりモチベーションが変わってくる。


「転けずにここまで歩いてくるのよ、出来る?」

「舐めんじゃないよ」


 桐屋蘭子、行きます。


「ところで昨日お見舞いに来てた男の子、どういう関係?」


 一歩踏み出そうとした私に不躾な質問を飛ばしてくるクソ看護師のせいで盛大に転けた。


「あーあ…ダメじゃん。また骨折るよ?大丈夫?立てる?」

「くっ!…立てるならこんなリハビリしてねー……それより、なんで急にそんな質問……」

「なんか喧嘩?してたから気になっちゃって…なんかただならぬ関係なのかなって…でも桐屋さん、モテるタイプじゃないでしょ?」


 は?


「…この顔を見てよく言えましたね?」


 手を貸してくれる距離感…拳が届く距離だぜ黛さんよ。


「顔だけじゃん…桐屋さんのノリに付き合える人、滅多に居ないと思うけど……だって私、あなたの担当変わりたいもん」


 …っ!?

 令和のノア桐屋蘭子、こんな屈辱受けたのは始めてだよ…!!

 だって目を覚ましてから入院3日目とかよ?この人まるで10年の知己かのような言い方だけど、私とあなたそんな深い付き合いじゃないよね!?


 …それともなに?この桐屋蘭子、ほぼ初対面からすら嫌われるような破滅的な人間性だと?


「さてはセフ--」

「もう立ったから離れてくれません?なんか香水臭いんで」

「…………これ、おフランス製なんだよ?」

「香水キツい女ってモテないですよね?おねーさんも気をつけた方がいいよ?」

「…………セ〇レが勘違いして付き合ってくれとでも言ってきた?」

「あのね!?私まだ中学生なんですよ!!あなたの学生時代の物差しで私を計らないでください!!この……っ!合コン中毒!!」

「ごめん君の中で私のイメージってどうなってんの?」


 て言うか……と、黛の奴が呟きやがった。

 なんだ?と顔の堀を2ミリ程深くしつつ視線の落ちる看護師の見つめる先を見る。


 とっくに手を離した看護婦の前で何にも捕まらず仁王立ちするのは自分の下半身に他ならない…


「…立ったね」

「ふむ……」


 ……やはり私は時空の神に選ばれた存在。

 肉体のレヴェルも他とは一線を画す…ということか……


 *******************


 神に選ばれた肉体……神に選ばれた存在。

 私は星十字騎士団シュテルンリッターだったのか……


 それはそうと……


「うわぁぁぁぁっ!!ぎゃああああああああっ!?うぎゃあぁぁっ!!!!」

「なに!?」「君!!鎮静剤だっ!!」


 こーちゃんショック--

 この時桐屋蘭子の体に現れていた異変は、長時間に渡るこーちゃん不足により引き起こされた禁断症状だ。


「うわぁぁぁぁぁっ!!」

「先生っ!!効きませんっ!!」「馬鹿な…」


何事にゃにごちょ?」


 そんな間の悪い時に限ってやって来たのは今すぐ舌の治療が必要なモデル体型美少女。


 沖雅。

 我が友にして、親が金持ちで顔がいい…ただそれだけの存在。それ以上語ることもない。

 そんな彼女が危篤状態の私の前に現れた。


「りゃんこ、ついにイカれちゃにゃ?」

「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「ちょっと!面会謝絶ですっ!!すみませんが部屋から出てくださいっ!!」

「わたしゃは騙さりぇないりょ、りゃんこ。りゃんこを心配ひんぴゃいしぇて今までぇ何度にゃんどしょんしたことにゃ……」


 その時、私の体が内側から燃えた。

 ポルターガイストでも起きてるのかという感じで私の体がベッドから浮き上がり、胸あたりから吹き出す青い炎が体を這い、全身を包んでいく。


「せっ…先生ーっ!人体発火現象ですぅ!!」「何が…起こってる……」

「…………(汗)」


 その時蘭子は宇宙を感じていた--

 極限まで暴走した感覚が理性を超え、溢れ出すパワーは私の輪郭を溶かし、桐屋蘭子はこの時この世界とひとつになる……


 私は今、浮いています。


滅却師完聖体クインシーフォルシュテンディッヒッ!!」

「…………」「…………」

「…………本格的ひょんかきゅてきゅにイカれたにゃ」




 ……気を取り直して。


「雅。元気してた?」

「その前にゃいみゃのなにゃか説明せちゅみゃしりょ」


 雅の見舞い品のメロンの香りが私を一時的に落ち着かせてくれた。そして私は滅却師クインシーではない。

 あと、私の体から噴き出す炎は多分生命エネルギーかなんかのアレなので入院着も燃えません。


 もう早くメロンが食いたくてしょうがない私。そんな私にこの世のものに向ける目とは思えない視線を投げてくる友人。


「なんかさ…こーちゃんに会いたくて…」

「こーちゃ?」

「……は?」


 コイツ……その時私の全身を駆け巡ったのは猛烈な殺意。「誰やねんそれ」みたいなコイツの反応……ぶち殺したろか?このガキャ…

 ……まぁいい。メロンに免じて1度だけ許す。


「私の弟だよ…」

おととょ居たんりゃ……」

「会いたいなって思ったら……なんか……体が燃えた」

「……打ちどこりょわりゅかっちゃみたいにゃ…可哀想きゃわいしょに…」

「なんかさ……蘇生してから私の体、パワーが漲ってるんだよね。超回復するし、常に内側に熱い力の奔流を感じる……」

「まちゃわきゃの分かりゃんこちょよ…今日きゃのアレャ見ちぇいょょ縁りょ切りゃたきゃなっちぇきちゃりゃ」

「お前が何言ってんのかの方が訳わかんねーよ」


 そんな事言いつつなんだかんだで私のATMで居てくれる沖……好き♡


「そんな事よりセブン銀行、ちょっと聞いて?昨日ね元カレが病院来てさ……」

いみゃなんちゃ?」

「なんか…ヨリ戻さないかって言われた……」

「えぇ!?」


 コレには流石のセブン銀行も仰天。ところでお前って喋りは壊滅的だけど文字はちゃんと書けんのか?


「そりゃってぇあにょ…こにょまにゃにょ浮気うわきゃサイコ野郎やりょきゃ?」


 ふむふむ。私が蓮司への復讐後提出した情報ダーテンはしっかり読んだらしいね。


「その、元カレ……」

「おかしゃ……色々《いりゃいりゃ》おかしゃ…おみゃを選びゃ時点じちぇんでおかしゃけど…」

「は?」

「それりゃ?どうしゅる?」

「……なんか色々考えてさ。分かってるんだ…あいつはクズ」

「「(りゃんこに言われりゃ終わりゃ)」」

「でも……そんなあいつとの未来に夢を見てる自分が居る……私の中に憎悪と、まだあいつと付き合ってた時の好きって感情が残ってるんだ」

「黙りゃ。滅却師完聖体クインシャヒョルヒュヘンヒッヒなっちょいれ今更いみゃしゃら乙女面おちょみゃつりゃしゅんりゃ」

「でも……もう私は間違えられない…」


 そう……地球滅亡までもう時間が無いから…


「だから私はもう……恋はしない。クズ男しか好きになれない私はきっと……恋で幸せにはなれないだろうから……」

「……りゃんこ」


 決めたの……

 さよなら……蓮司……


 ……阿散井恋次じゃないよ?



「……ところで、この病院ボイトレもできるってよ?」

「だかりゃにゃん!?こりょにゃがれれにゃんにょ脈絡にゃくりゃくみょなきゅディスュられりゅとりゃおみゃわにゃかっちゃりゃ!!」


 小林蓮司が宇宙の塵と化すまであと79日……

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