16日目 色んな蘭子
私、桐屋蘭子。15歳。死んだ。
地球滅亡を予知した令和のノアとして情熱大陸に出演する予定だったんだけど(嘘)予知夢の内容を甘く見てたら電車の脱線事故で死んだ。
正確には、死まで秒読みって感じ。
究極の弟、こーちゃんを置いて死ぬことは出来ない縛りなのでこの蘭子、何とかして生き返らないといけない…
そこでこちらの時空のおじさんである。
時空のおじさんとは全宇宙の時空を司る神で、そして私は『Agの鍵』。なにそれ?私も知らん。
なんでもこの宇宙には無数の平行世界が存在してて、平行世界の蘭子をこの蘭子の身代わりとしてぶち殺す事で帳尻合わせをして私は生存できる。そんな感じになってる、今。
ので、平行世界の私をぶち殺す。
…というわけで、早速身代わりにするおぬしを選ぶのじゃ
…時空のおじさん。どうやって平行世界の私を選別するの?
簡単じゃ…おぬしはわしの力が一部宿った『Agの鍵』…おぬしが望めば広大な宇宙を感じ、時空を超えて意識を接続することができるのじゃ
そろそろ『Agの鍵』の解説いい?
はよせんかい
……なんか望めばOKらしいので私は念じる。平行世界の私よ…私よ……
望めばってだから具体的にどーすんだよ?
……なんて。
殺意を込めてひたすらにう〜んとかむ〜んとか唸ってたら…
私の視界--夢の中のいつもの真っ白な世界が突如として開け…そう、煙が晴れていくように開けてその先に広大な天の川的な光景が……
やれば出来るじゃないか……それこそが、『Agの鍵』の力じゃ……
…は?私、神になった?
いや凄いのはわしじゃからそこら辺勘違いするでないぞ?んん?
……み、見える……感じる……広い宇宙に無数の世界を…………
具体的にどう感じるのかと言うと、目の前に広がる広大な宇宙空間の中に無数の人の気配を知覚できる感じ。
肌で感じる。
今この夢の中なのかなんか知らんけど、この世界には声しか存在してない感じだけど、なんか五感で感じられる。
つまりそういうこと。
……さぁ選ぶのじゃ。どの世界の桐屋蘭子を殺す?この人殺しめが
いや言い方よ…しかし時空さんよ。こんなに沢山の中から選べと言われてもですね…人というのは無数の選択肢があるとかえって何も選択出来なくなるものよ?もっとこう…1個か2個くらいに絞ってくれないと…現代人ってのは受動的なんだから…
そんなんどれでもええじゃろ。適当に選んだら…
えぇ……私の命なんだと思ってますか?
聞いたところによるとこの無数の平行世界の全てに私は存在していて、その全てが違う人生を歩む、言わば桐屋蘭子という他人…
私は私なんだけど1人ひとりが別の桐屋蘭子だという……
ここは慎重に考える必要があるのではないか?
なるべくハッピーな桐屋蘭子は殺したくないじゃん?
なんて眉根を寄せてたら(体無いけど)、おじさんが教えてくれた。
それならば平行世界の自分を覗くこともできるぞ。今のおぬしは全宇宙の全ての時間、空間に自由に接続可能じゃ…平行世界の中に意識ごと飛び込んでいくように…行ってみるがよい
ほぅほぅ…
私は美しき宇宙の海にぽやぽや漂ういくつもの世界の中からひとつに当たりをつけて、そこに意識を集中させる。
バンジージャンプで飛び込む感じで、意識を突撃させるイメージをしたならば、私の視界がみるみるその気配の方へ引きづられて--
うわぁぁぁぁぁぁっ!!
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「蘭子ー、朝ごはんできたわよー」
…これは、我が母志乃の声…
平行世界の地球…これがいつなのかはよく分からないけど、飛び込んだ私の視界が宇宙からどっかのマンションの一室へ……
「……んん……今行く……」
そして私の視界を横切るように、やたら可愛らしいピンクのパジャマ姿の私が……
寝起きの桐屋蘭子、間違いなく私だ……
話には聞いていても、こうして別世界の自分を俯瞰して眺めるというのはなんというか……
この世界の蘭子はこの蘭子とは違う蘭子らしいけど果たしてどんな蘭子?
「……おはよぉー」
「おねえちゃんおそい。ぱん、さめた」
「さめねーよボケ。そこ私の定位置だから、退け」
リビングらしき部屋に現れた蘭子を迎えてくれたのはこっちでも天使なこーちゃんなんだけど……
なんだ?この蘭子の態度は。こんな天使が自宅に居ながら退けとか言って椅子から叩き落としてるし……
……どうやらこの世界の蘭子は世界の理を理解してないらしい。
なんだか早速殺意が湧いたのでコイツにしようかと決めかけた私の視界に--
「康太をいじめるなよ?蘭子」
--蘭子の…あっ、この蘭子ね?今見てる方の蘭子。蘭子の呼吸がその声と顔に止まりかけた。
いや、現時点でこの蘭子が息してんのかよってツッコミは置いといて……
「おはよぅお父さん…」
「蘭子、急いで食べないと遅刻だぞ?送ってやろうか?」
「お父さんの車臭いし、いい」
「は?」
「あっ!おかあさん!おねぇちゃんがこーちゃんの、みにとまとたべた!!」
………………お父さん。
そっか……この世界にはお父さんが居るんだ…
なるほど…こっちの世界のお母さんの方がなんかちょっと若々しいし乳もデカい気が……
……この桐屋蘭子。
父への情などとっくに失せてしまった…そう思っていたけど、こうして家族4人が朝食を囲む光景を目の当たりにしたら……
……なんじゃ?気に食わんかったか?
…………うん。なんか……この世界は壊せないなって…
……?らしくもないの。人間とはよく分からん…まぁええ。どうでもええから急いで代わりを決めねば、おぬしの帰るべき肉体が本当に死んでしまうぞ?
…分かってるよ
切り替えるんだ!次っ!!
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次の蘭子はこちら!!
「--囚人番号2833番、出ろ!」
………………?
突然灰色の世界に飛び込んだ私を待ち受けていたのは怖そうな刑務官?的な人に牢から引っ張り出される私…
「くそっ!触んなっ!!ぶち殺すぞっ!!」
……?これ、私?
怒鳴り散らすなんだか荒んだ蘭子に手錠をかける刑務官が異常に顔を近づけてきて蘭子の威嚇を鼻で笑う。
「ふんっ!これから死ぬのはお前さ…FPSで煽られただけで30人も殺すとはな…桐屋蘭子。お前みたいな狂人がシャバに出られる訳ないだろ?」
「なっ!……ま、まさか!死刑執行か!?」
「はははっ!当たり前だろ!?お前は死刑囚なんだからなっ!!」
……………………
「やっ…やだっ!やめろっ!!死にたくないっ!!死にたくないっ!!シニタクナーイっ!!」
「こいつ…っ!おい誰か!!」「抵抗するな!!」「コノヤロウ!!」
「何でもするから……お願いだからっ!やめろぉぉっ!!うわぁぁぁぁぁぁっ!!」
……………………………………
「やだっ!!やだぁぁぁぁぁぁっ!!」
……なんじゃ?この世界もダメじゃったか?
いやなんというか……勝手に死んでた
そうか……まぁそんなこともあるじゃろ
次!
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次の蘭子はこちらになります。
「Doss!It's an enemy attack!!」
……舞台はなんか廃墟と化した建物の中…
外がバタバタとやかましい中でイカつい黒人達がワーワー喚いてる。
その中央--ボロボロのソファに偉そうに腰を下ろした……
「狼狽えるんじゃないよ」
蘭子ちゃん……
薄汚れた白いタンクトップに金のアクセサリーをジャラジャラつけてた。多分喜平。サングラスまでしちゃってまー悪そうな蘭子。
「サツなんかにビビってんじゃないわよ!!私らUSAカルテル舐めんじゃねー!!」
なんすか?USAカルテルって…
「サツなんか返り討ちよっ!!」
「I don't understand Japanese」「This person is squid!」「Let's escape」
「あっ!?ちょっとどこ行くのアンタ達!!」
「I can't wear it」
「お前ら……っ!?うわぁぁっ!!私はギャングスターだぞ!?」
雪崩のように部屋から逃げ出していく黒人達と入れ替わるように完全武装のお巡りさんが部屋に雪崩れ込んでくる。
多分、USAとか言ってるから香港(の事だよね?USAって。違う?)のお巡りさんである人達から一斉に銃口が向く。
「くっ!……ら、蘭子負けないっ!!蘭子は世界一の麻薬王にな--」
「Fire!」
バババババババババババッ!!バァンッ!!
「うぎゃああああああああっ!!」
……なんじゃ?またダメか?
また死んだ。次
こちらの蘭子さん!こちらはどっかの山を歩いてます!!多分冬にっ!!
「ひぃ……ひぃ……寒い……ここどこ?」
何故か冬に登山!!雪中行軍!!馬鹿野郎!!
「お母さん……こーちゃん……あと…誰だっけ?…………し、死にたく……な……」
ばたり……
……おぬし贅沢じゃのう。はよ決めんかい
やかましいわっ!?みんな死んでるだろーが!?別世界の蘭子、死にすぎだろ!?次ィ!!
次の蘭子は!?
19XX年、世界は核の炎に包ま--
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!やめろぉぉぉぉぉっ!!!!
--世紀末救世主伝説を……
誰だナレーションんんんんんんっ!!!!蘭子は世紀末なんかで生きていけないからぁぁぁっ!!平行世界治安悪すぎぃぃぃっ!!!!
「--貴様にはまだふたりのお姉ちゃんがいることを忘れたか!!こーちゃんの地獄が目に見えるわ!!はは…ばばば……ばわっ!!」
ボゴォッ!!
うわぁぁぁぁっ!?しかもジャギかよぉぉぉぉっ!?!?
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!
……過酷過ぎる平行世界の蘭子達…彼女らの人生に幸はあるのか!?
蘭子!負けないっ!!




