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13日目 18÷2=?

「……桐屋、お前…」

「…………君さぁ、自分の立場、分かってる?」


 1月13日、金曜日。いよいよ私立高校入試まで1週間という今日…私、桐屋蘭子は緊張の放課後に居た。


 立会人は死んだ魚の目(発酵済)、別名美堂陽菜。そして舎弟のオンナ、つまり私の舎弟、原結華。

 そして今目の前に居るのは私の元彼、小林蓮司…


 さて、私がこうして奴と対峙するのはなにも元カレとヨリを戻そうという訳ではない。


 地球滅亡を88日後に控えた昨今、私が浮気を理由に3ヶ月で別れた元彼をぶち殺そうと考えていたのは有名な話…

 そして昨日、パパ活女子こと小林の今カノ、大園が小林パパと不潔な関係であると嗅ぎつけた私達はそれをネタに蓮司を地獄に叩き落とそうと画策したのだけど……


 なんと蓮司は既に知っていたのだっ!!

全部知ってたうえになんか自分の過去の過ちを省みて生まれ変わって綺麗になっちゃった。お詫びの印としてとりあえずローストビーフを根こそぎ奪っておいた。


 ……けどこれでは復讐が成立しない。

 受験前の復習をしてる場合ではないこの蘭子、この日放課後にこうして蓮司を呼びつけていたのだった…


「お前……そんな奴じゃなかったじゃん…お前は頭がおかしくて言動が理解不能だったけど、人に迷惑かける奴じゃなかったじゃん」


 と、蓮司が私の同情を誘う。

 それに対して擬人化肉食ハムスターこと原さんが一言。


「いや他人ん家のローストビーフを勝手に食べるのは迷惑かけてるじゃん」

「……無駄だよ小林君、こいつは一度タカが外れるともう誰にも制御出来ない。諦めるしかない」


 付け加えるのは死んだ魚の目を眼窩にはめた狂人。目が発酵して臭い……


 まぁつまりそういう訳で……


「18,000円、出せ」


「勘弁してくれよぉ」と早く家に帰りたい感を醸す緊張感のない小林蓮司…こいつはきっと今自分が置かれてる状況を理解出来てない。

 今奴の財布には小林家の命運が掛かってるんだから……


「お前……元彼からカツアゲとか…」

「口には気をつけなよ?蓮司君…チミの命運は既に私達が握ってる」

「達をつけるな」「……雪降ってるし、帰っていい?」


 昨日から振り続ける雪が体育館裏を白く染め上げる……

 凍てつく空気がお互いの口から吐き出され…油断ならない駆け引きは佳境に入っていく。桐屋蘭子、ジョーカーを切る。


「社会的に成功を収めたお父さんが未成年と淫行なんて知れたら大変だよね?海外に居るチミのお母さん…泣いちゃうかなぁ?」

「おい、だからあれは作戦--」

「世間はそう思ってくれるんでしょーか?大園さんのマチアプのマッチング履歴は抑えてあんだかんな!」

「お前……」

「簡単な話じゃん?私と付き合ってた時みたいに気前よく18,000円、財布から出すだけで小林家の平穏は守られるんだよ?」


 私の良心的提案に対してもまだ小林は渋面を浮かべる。


「……チミのパパならこんな時、利口な選択をすると思うんだけどなぁ…ていうかさ、本当に私に対して悪いと思ってるんだったらそれくらい出来るよね?なに?昨日のあの言葉、嘘?」


 詰める私に対して蓮司、「そ、そんな大金何に使うんだよ」と返す。

 社長のボンボンがそんな大金とは吐かしやがる…

 私はお前がデートの時割り勘とかほざきながら財布の中に10万くらい入れてたの知ってんだからな?パパにたくさん小遣い貰ってんだろ?あ?


「ガスガン買うんだよ」

「は?がすがん?」

「……蘭子」「なによ、その使い道…」


 死んだ魚の目とロリコン愛好家が白い息と共に何かをほざいてる。しかし私はミラ・ジョヴォヴィッチにならなければならない。


「なんだよそれ…買えばいいじゃん。てかお前、元カレ脅してカツアゲとか…恥ずかしくねーの?バレたらお前、ヤバいからな?」

「へぇ、バレたら?「僕のパパが未成年と不純異性交友してるのダシに脅されました」って?」

「……お前調子のんなよ?」

「おっと、やめときな。後ろに控えてるこちら、美堂陽菜さんは少林寺拳法免許皆伝だぜ?」

「……え?まじ?いつの間に少林寺拳法免許皆伝した私」


 分かりやすく拳を握り込み脅しをかけてくるこの男の風上にも置けないクズを前にしてもこの桐屋蘭子、この程度の事で怯んだりしない。


「ちょっとでも手を出してみなさいよ!!110番するんだからっ!!性的暴行受けたって学校中に言いふらしてやるんだからっ!!」

「……」


 …この根性無し、どうやら怯んだようだ。


「……お前おかしいよ。今更だけど」

「は?浮気野郎に言われたくないんだけど?」

「それは言えてる」「……蘭子オトコ見る目ないよね」


 さりげなくディスってくる死んだ魚の目。奴の目にBB弾を撃ち込むことを決めた。

 仲間にも噛み付く凶暴なピラニア(の腐った目)に呆れた(きっとそうに違いない)蓮司が大きなため息と共に財布を取り出していた。


「今回だけにしてくれよ?浮気したのは悪かったから…金輪際俺達に関わらないでくれ」


 そう言う小林の手には二万円が…


「いや18,000円でいいって」

「いいって、多めにやるから…その代わりもうほんとにこれが最「ありがとう貰っとくよ」


 桐屋蘭子はお小遣いをゲットした。


「……やったね蘭子」「もう帰っていい?この後義也とデートなの」


 義也とはロリコン教師、御嶽原の下の名前である。


 聖火ランナーの持つ聖火のように2万円を曇天に掲げる私に対して小林が「ガスガンなんて買ってどうすんだよ」と問いかける。


 …素直に従ったお利口さんに私はせめて正直であってやろうと思います。


「お前を撃つんだよ」

「!?」


 *******************


 桐屋蘭子、得物を受け取りに武器屋へ…


 小林蓮司への復讐をこの程度で終わらせる訳にはいかない…蓮司をぶち殺す為に私はコルト・ガバメントを手に入れる。


「なんで私達まで?」「……蘭子、もう帰りたいんだけど?家でこたつが待ってる」


 死んだ魚の目なんかがこたつに入ったらより腐敗が進むだろーが。友の鮮度の為雪の中私は商店街を突き進む。


 やって来たのは自宅最寄りの商店街、おもちゃ屋。


「オヤジ!」

「いらっしゃい…中3になってもうちに来てくれるのなんて蘭子ちゃんくらいだよ」


 寒い中ご苦労な上なんか嬉しそうなおもちゃ屋もとい武器屋のオヤジがなんかちょっとバカにしたニュアンスを含みつつ私達3人を迎えてくれる。


 …そして約束通りそのショーウィンドウにはガスガンが鎮座したままだった……


 私はオヤジの目の前に福沢諭吉(日本の啓蒙思想家、教育家、慶應義塾の創設者)を二枚見せつける。


「約束のブツを……」

「なんの話だっけ?」

「おいおいとぼけるなよ……心配するな。この2人は口は固いぜ?」

「蘭子ちゃん今日も絶好調だね。でも覚えがないもんはないよ?」

「空気読んでよおじさん…これだよ!これ!!ガスガン買いに来たんだよ!!金なら耳揃えて用意したから売ってよ!!どういたしまして!!」


 約束の金を見せつけてるにも関わらず武器屋のオヤジはこめかみ辺りが痒いのか人差し指でポリポリしながら「蘭子ちゃあん…」と粘っこい声を出す。


「蘭子ちゃんには売れないんだよ、これ」

「…は?」

「だってさ、桐屋さん。おつかれ」「…解散解散」


 思わずドスの効いた声が出ちゃった。


「…理由は?」


 返答次第ではタダでは済まさない。こちとら世界滅亡まで88日だ。怖いものなどない。


 そんな私に対してオヤジは言いにくそうにしつつも実にあっさり、二酸化炭素を吐き出し地球温暖化を促進するように告げた。


「これ、18歳以上用だから…」

「……」

「蘭子ちゃん15でしょ?」

「…………じゃ、じゃあ。私とこの死んだ魚の目に半分ずつ売って?18の半分で7だから。私達、7歳超えてるから……」

「…桐屋さん……」「……蘭子」

「…蘭子ちゃん。18の半分は9じゃね?」


 地球が粉微塵になるまであと87日……

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