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101日目

 ……

 …………

 ………………

 ……………………



 ……終わった……はず…



「……?」


 私の瞼がゆっくり持ち上がる。意識したというより自然に。恐る恐るという感じで目を開けた私の目にまず飛び込んできたのは……



 遠くの夜空に浮かぶ、巨大な影だった。


 そして、変わらない星空。

 光を散りばめたような星の海原は変わらず地球から見た光景…に思える。宇宙に投げ出されたわけでは…なさそうだ。


 そして胸の中を見ると、こーちゃんがキョトンとした顔で周りをキョロキョロしてる。

 見上げると、お母さんがぽかんとして固まってる。


 大きく息を吸ってみよう。


「すーーー…はぁー…」


 息苦しくもなく、寒くもなく、痛くもなく…もちろん体は浮かんでない。三十分前から変わらず、地球の重力を感じたまま、湿った芝生の上だ。


 どうやら桐屋蘭子は生きてるらしい。

 と、言うことはだ。地球も無事…ということになるのでは?


 ……なぜ?


 しばらくお母さんと顔を見合せてそれから町を眺める。何も変わらない夜の明かりを灯す町の影は沈黙を返していた。


 ……そして、上空に浮かぶ影。

 町と夜空とを遮る天井のような大きな影は微動だにせずにその場に留まったままだった。


「……生きてる?」


 お母さんから間抜けな質問が飛んできた。私はぽかんとしたまま頷く。


 外れたのか……?私の予知夢……


「……おかあさん、あれなに?」


 こーちゃんが謎の滞空物体を指差す。

 どうあれ考える脳が無事な以上、次に浮かんでくるのはアレはなんなのか、ということだ。


「……さぁ」


 お母さんも答えが出ずに曖昧に首を傾げる。

 とりあえず立ち上がった三人はもう一度顔を見合せ互いの意志を確認するように頷く。


「……行ってみよう」











 町に降りた先の光景は無事そのもの。絵に描いたような無傷の町だった。

 超巨大隕石落下の触れ込みなど嘘だったのかと抗議するように自販機の駆動音が静かに響いてる。

 ぽつりぽつりと明かりの灯っていた家から何人かの住人が外に出てきて空を見上げてる。人の気配なんてしなかったのに、まだこんなに残ってたんだ。

 彼らの姿にどこからともなく現れるゴキブリを連想してしまった。


 が、今はそんな事を考えてる場合じゃない。


 町まで降りてきて人々に倣い上を見上げると、それがなんなのかはっきり見えた。


 私達の町を覆い尽くす程の大きさのソレはまず円形で、平べったいようだ。平べったいといってもそれは縦の大きさに比べてという話で、多分高さはそこらのビルより全然あるだろう。

 下から見上げたその滞空物体は幾つもの大きさの違う円盤が、小さいものから順に重なったような形状をしてる。その一つひとつがそれぞれバラバラな動きで回転してる。

 円盤の集合体は円錐状の形を形成してて、ピラミッドを逆さまにしたような形で浮遊してるらしい。蠢く巨大な機械の集合体のようだった。


「……」

「……ぽかーん」


 お母さんもこーちゃんもそれを見上げて固まってる。

 町の住人達も何が何だか分からない様子だった。


 ただ、私の頭の中は細かい無数の電気信号のようなものがパチパチと絶え間なく走っている感覚がある。

 呼応するように鼓動が早まる。


 何かが始まる--


 今までの日常をひっくり返すような何かが始まろうとしてる……そんな予感が全身に充満していく。


 自然と握り拳を作ってた両の手の中はじっとりと汗で濡れていた。


「……UFO?」


 お母さんがぽつりと呟いたそれが夜風に乗って私の鼓膜に染み込んで、強い電気が一筋頭を駆け抜ける。




 同時だった。


 星と月だけが世界を照らす夜の闇が乱暴に塗り潰される。頭上の超巨大物体が突然激しく点灯した。

 蠢く無数の円盤達が統合された意思に従ったように一斉に光を私達に落としてきた。太陽に代わる程の光の束を受けた住人達は半ばパニックになりながら散り散りに逃げていく。

 それでも家の中に避難しないのは野次馬根性ってやつだろうか。


 私達三人は動かなかった。


 夜を潰した円盤の一番下。私達の真上が開いた。

 音もなく解放された円形の穴…そこから何かがゆっくり落ちてくる。


 それは小さな球体だ。


 ガチャガチャのカプセルを灰色に塗ったような、チープな外見の割に金属質な球体は重力など知らないという態度でゆっくりと降下して、やがて桐屋一家の目の前に着地する。

 小さいといっても軽自動車くらいの大きさがあった。


「……」

「……」

「……」


 お母さんもこーちゃんも目の前の非現実に言葉を失っていた中で……


 私の頭の中で激しく明滅する電気のパルス。

 私はどこかそれに懐かしさを覚えてた。


 ……私は…


 カプセルに一本切れ込みが入って、二つに割れたそれが回転する。



 初めましてじゃない。



 脳内を駆け抜ける電気信号のような感覚が私の内部からのものじゃないんじゃないかって気がしてきた。

 例えるならそれは、外から語りかけてきている言葉のような……



 カプセルが開いた。


 お母さんが私を強く抱く腕の中でそれを瞬きせずに見守ってたら……ドライアイスの煙みたいな白煙がカプセルの割れ目から溢れ出した。


 煙に包まれた中から何かが出てくる。


 それは細長い触手のように見えた。

 ただその質感は固形化した水のような、スライムのような質感で、内部には宇宙空間を映したような幻想的な模様?体内?が浮かんでる。


 ここから出てくるのが生物であると私は何故か知ってる。


 触手は一本じゃなかった。

 同じ触手が無数に地面の感触を確かめるように這い出してきて、それに引っ張られるように煙の中からついに、本体と思われる球体が姿を現す。


 宇宙空間を球状に集めて固めたようなそれは触手と合わせると、タコのように見える。大きさはこーちゃんの半分くらいしかない。


 この時点で確信した。


 球体の中で二つの黒い点が蠢いてた。水の中を泳ぐような挙動の点はやがて私達の正面で停止して二つ並ぶ。

 目のように私達を捉えたそれは瞬きするように細くなったり元に戻ったりしてた。


 未知との遭遇--


 昔見た映画のタイトルが頭の中に浮かんでいた。


 いや……


 未知との再会--


 私は……はじめましてじゃない。



 奇っ怪な姿をした謎の生命体は不思議そうに周りをキョロキョロ見回したあと、私達三人をじっと見て……


 手を振るみたいにチョコチョコと触手を揺らした。

 その目は私を真っ直ぐ捉えたまま……



「…うちゅうじんだっ!!」


 こーちゃんが叫んだ。




 桐屋蘭子の101日目が始まろうとしてた…





































 おしまい☆

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