第91話「ポーション工場見学ツアー」
その翌週、アスヒラクフーズのポーション製造工場には、魔族の子供たちが数人招かれていた。
社内はまるで祭りのような空気に包まれていた。
社員たちは新しい制服を整え、受付に並ぶ花々は色とりどりに飾られ、まるで未来の芽吹きを祝福しているかのようだった。
アマリエは、玄関で子どもたちを出迎えた。
お気に入りのワンピースを着込み、笑顔をこれでもかとばかりに輝かせていた。
「ようこそ、ワシの会社へ! 今日は特別じゃぞ!」
しかし、初めて訪れたポーション工場に圧倒され、子どもたちは一様に緊張していた。
「ほれほれ、そんな固い顔をせんでええのじゃ。ここは戦場じゃなく、ポーションの国じゃぞい!」
アマリエはそう言って、子どもの頭をわしわしと撫でた。
その無邪気さに、子どもたちの口元に小さな笑顔が浮かんだ。
見学ツアーが始まると、魔族の子どもたちは工場や試験室を興味深そうに覗き込み、
社員たちが作業の説明をするたびに目を輝かせた。
中にはポーションの香りを嗅いで、「これ、花みたいな匂いだね」と笑う子もいた。
マサヒロは、彼らの反応を優しく見守りながら、子どもたちに話しかけた。
「君たちの夢は何かな?」
ある少女が少し恥ずかしそうに答えた。
「学校に行きたい。文字をたくさん読みたい」
その言葉に、マサヒロは静かにうなずいた。
「そうか……その夢、きっと叶うよ。この基金は、そのためにあるんだ」
ヴォルフガングはそんな光景を遠くから眺めていた。
母の手紙に書かれた“光”という言葉が、まるで子供たちの瞳に宿っているようだった。
――母上、見ていますか。これが、あなたの願った未来です。
その夜、アマリエは社内の広報チームに向けて熱弁を振るっていた。
「この子たちの笑顔を、もっと世界に広めるんじゃ!
基金ってのは、未来のポーションみたいなものじゃろ!?」
社員たちは一瞬、意味を考え込んだが、拍手を送った。




