第76話「猫の毛が生えた……?何ですかそれ」
「ワシ、ついにわかったのじゃ! ポーションの底には……物語が沈んでおるのじゃ!!」
朝から会議室に響く、魔王アマリエの大声。
彼女は両手を天に掲げ、ポーションの瓶をまるで神の啓示のように見つめていた。
「……社長、それはどういう……」
マサヒロが控えめに尋ねると、アマリエは得意げに頷いた。
「聞けい! ポーションというのはただの飲み物ではない! 思い出を、感情を、記憶を溶かし込んだ……“物語”そのものなのじゃ!」
【つまり、UGC戦略のことです】
テーブルに座る黒猫──ヴォルフガングがメモで静かに補足した。
【ユーザーが自ら体験談や物語を投稿することで、商品価値が何倍にも膨れ上がる。消費者が“語りたくなる体験”こそ、ブランド構築の鍵】
「うむうむ、そうじゃ! それをワシが最初にやるのじゃ!」
アマリエはポケットから、手書きの紙を取り出した。
「題して『ポーション飲んでワシの頭から毛が生えたと思って喜んだら猫の毛だった事件』じゃ!」
「は……?」
マサヒロとヴォルフガングが同時に絶句した。
「いや、もう先日動画は完成していますよ、社長」
「ふむ。それも良いがワシはこの話を世界に投稿して、バズを巻き起こすのじゃ!」
「それ……バズるかもしれませんが、違う意味で……」
こうして、UGC戦略の第一弾として
先日完成した動画と同時にアマリエの猫毛談をSNSに投稿するプロジェクトを始動させる。
動画編集担当のマサヒロは、アマリエが猫毛に感動して泣き崩れる再現シーンに苦心し、
一方ヴォルフガングは「UGC拡散指数」の計算に没頭していた。
【投稿の時間帯は早朝が良いです。“魔王の朝活ポーション”の流れを活かしましょう】
「了解です! “タグ祭り”も仕掛けます! 」
アマリエはというと、投稿文の最後に添える言葉を一生懸命考えていた。
「……“この感動を、猫毛とともに”……いや、“ワシの頭にも猫毛を”……ふむむむ、どれが泣けるのじゃ……?」
「あの、アマリエ社長……やっぱりそのテーマから離れた方がよいかと……」
こうして、UGC戦略は最初から魔王らしさ全開でスタートを切ることになる。
果たしてこの混沌から、“本物の物語”が生まれるのか──。




