第74話「UGC戦略の布石」
――数時間後。作戦会議が続いていた。
「うむ、ワシが考えるに、動画の最後にドーン!とワシの顔を出すのはどうじゃ?
ワシ、キャワイイから人気爆発じゃぞ?昔、街2つ吹き飛ばした火炎魔法並みじゃ!」
「それはちょっと……伝説の魔王が突然アップで出ると、視聴者がびっくりする……かも」
マサヒロのやんわりとしたツッコミにも、アマリエはめげない。
「ではこうじゃ! “ワシを信じろ!”って叫びながらポーションを掲げる!」
『だめですニャ』
ヴォルフガングのテレパシーが鋭く突き刺さる。
【顧客の感情に寄り添うこと。“自分のこと”として受け取れるような内容が鍵。
例えば──】
ヴォルフガングが差し出したメモには、“UGC戦略の布石”と書かれていた。
「#わたしとアスヒラク」
「#わたしとポーション」
「#あの時の一杯」
「#大切な誰かと飲んだ記憶」
「うおおおお! そのタグ、かっこよすぎじゃあああ!!
さっそくワシの過去も語るぞ! 初恋の話とか!ムヒッ!」
「いえ、それはやめておきましょう」
マサヒロが必死に止めるが、アマリエはどこ吹く風。
「初めてポーション飲んでくれた人間は、誰じゃったかのう……マサヒロか?」
「えっ……そうなんですか?あ、あれは確か無料で……試飲……?」
「あ、いや、墓参りのおばあちゃんだったぞ、確か。マサヒロは2番目じゃ。
本当は一番がよかったのう?のう??」
アマリエの発言に、マサヒロが妙に照れる。
その様子をじっと見つめるヴォルフガングの尻尾が、微かに下がった。
(……また距離が縮まってるニャ)
だがすぐに振り切るように、次の案を提示する。
『ポスターも必要ニャ。顧客の共感を誘うコピーとビジュアルを組み合わせるニャ』
「うむ! ワシの決めゼリフも入れるぞ! “この一杯で世界征服じゃ!”」
「……やめてください社長」
こうして、賑やかで妙に情熱的なブランディング会議が幕を開けた。