表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/179

第63話「アスヒラク・スタンダードを開始せよ!」

ヴォルフガングが最初に手をつけたのは、POSシステムの導入だった。


『これは、各店舗の売上・在庫・時間帯・レシピ履歴までを一括管理できるニャ』


「へぇ〜……すごいのう!でも、これって“ぽすわーど”ってやつが必要なんじゃろ?」


『パスワードニャ』


「え?ワシ、魔封陣の呪文かと思ったんじゃが……違うんか……」


そして次に導入されたのは、接客動画研修制度。

アマリエ自身がモデルとして出演することになったのだが……。


「いらっしゃいませー!ポーションが、ぷりっぷりに発酵してまーす!」


『ダメニャ!菌がいるみたいになるニャ!』


動画は何度もNGを重ね、最終的にマサヒロが代役を務めることになった。




一方、フランチャイズ店舗の視察も始まった。

最初に訪れたのは、地方都市のとある新店舗。

入り口には、埃をかぶったチラシと、やる気のなさそうな男性店主。


「……おい、なんだよ。視察? 本社の社長様が、現場なんて来てどうすんのさ?」


その態度に、アマリエは思わず反論した。


「なんでじゃ! ワシは、客と話して、味を守りたいだけなんじゃ!」


すると店主は鼻で笑った。


「味?守る?――社長、現場で一回でも100杯作ったことあるの?」


……その言葉は、胸に刺さった。

作っていた。最初は。

でも、最近は……。

気づけば「仕組み」は他人任せになっていた。




続いて訪れた別の店舗。

そこには、小柄な女性店主が、清潔なカウンター越しに深く頭を下げた。


「ようこそ……! 社長。いつも、動画見てます……

あの“笑顔ポーションの踊り”とか、励みになってて……」


店主は泣いていた。


「私は、ずっと“社長の思い”に憧れてきたんです。でも最近、どの店舗もバラバラで……

これじゃ、お客様が不安になると思って」


アマリエも泣いた。


「ワシが守らねばならんのじゃ、ワシの“想い”を信じてくれた者らを」




数日後。本社には新しい貼り紙が掲げられた。


【品質回帰プロジェクト】

・全国接客動画研修の義務化

・POS全店導入、設定支援チーム発足

・監査制度:抜き打ち訪問調査、クレーム率モニタリング

・全店舗マニュアル統一化(PDF+紙媒体)

・従業員ランク制度(魔王バッジ進呈)


魔王は、その全てにサインをした。


「よし……これでワシの“味”が守られるんじゃな!」

『ニャ……守られるのは“信頼”ニャ。味も、笑顔も、全部“仕組み”で支えるニャ』


マサヒロが言った。


「そろそろ……名前を付けましょうよ、この“みんなで守るもの”に」


アマリエはきょとんとした。


「えっ……? それ、何にするんじゃ?」


ヴォルフガングの尻尾が、静かに揺れた。


『“アスヒラク・スタンダード”ニャ。次は、それを作るニャ』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ