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第55話「ブランドが、壊れる……」

全国に一気に広がったアスヒラクフーズのフランチャイズ。

特に子供向け低価格業態“駄菓子菓子”は、オープン初週から大行列ができるなど熱狂的な人気を集めていた。

だが、異変は静かに、そして確実に始まっていた。




「なんか……味、変じゃないか?」 「いや、前より薄い気がする……」


地方都市の一店舗。マサヒロは苦い顔で、ポーションの小瓶をテイスティングしていた。


「うーん……これ、うちのレシピじゃない」


厨房に回ると、スタッフが自作の“簡易ポーション”を混ぜていた。


「え、本部からの納品が遅くて間に合わなかったんで……。こっちの方が利益率いいんで」


さらに別店舗では――


「SNSで“ラッキーポーション”って企画やってるんで。中に唐辛子混ぜて当たりを……」


「それ完全にハズレなのでは……?!」


マサヒロは両手で頭を抱えた。




アスヒラク本社(墓地)には、日々膨大なクレームが届いていた。


ポーションの味が違う。

対応が悪い。

瓶が割れていた。

賞味期限切れ。

詐欺だと怒鳴る来店客もいた。


ホワイトボードにぎっしり書かれた報告。

ヴォルフガングは赤ペンをくわえ、口の端から疲労の溜まった息を漏らす。


【品質不良率、開業時比+420%。悪質オーナー疑い8件。炎上案件5件】


「うわぁ……ガンちゃん、疲れた顔しとるのぉ……ワシの顔で癒されるか?」


アマリエが顔面ドアップで覗き込む。


ヴォルフガングは無言でホワイトボードに


【NO THANKS】


と書いた。

その背後で、PC端末が警告音を鳴らす。


「異物混入?!」





マサヒロは、その店舗に飛んでいた。

現場ではオーナーが記者に囲まれていた。


「えぇ、私は本部から指導を受けてません。全部現場判断です。責任は本部にあると思いますね」


マサヒロの拳が震える。


「……これは、うちの“魂”を売られたのと同じだ」





アマリエは、本社に届いた苦情メールの山を読み、うなだれていた。


「ワシ、やっちまったのかの……?  夢ばっかり見て、現実が見えてなかったんかの……?」


ヴォルフガングがホワイトボードに静かに文字を書く。


【夢を見たことは、罪ではない。でも、夢を守らないことは、罪になる】


「ガンちゃん……」


マサヒロが前に立つ。


「社長、僕、本当に社長の夢が好きです。ポーションで笑顔をつくるって、本当にいいなって思った。  だからこそ、守りましょうよ。“アスヒラク”という名前に、恥じない会社に」


アマリエの目に、じわりと涙が滲んだ。


「うむ……うむっ!!  ワシが……責任を取るんじゃ!!  理念も、品質も、どっちも守る!  魂の経営、ここからが本番じゃ!!!」


そしてアマリエは立ち上がり、ポーションを掲げて叫ぶ。


「全店舗指導、再編成じゃ!新たなる戦いが始まるんじゃ!!!」


ヴォルフガングがホワイトボードに書いた。


『ブランド再建作戦を』


夜明け前の墓地に、魔王・猫・青年の3人が並んで立っていた…

しかし―――トラブルは続く。


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