表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/75

第51話「魔王にとって、経営とは?」

番組冒頭……。


「さて、本日のゲストは……異色の経営者、“墓地から笑顔を届ける魔王社長”!

アスヒラクフーズ代表、アマリエさんですっ!!」


スタジオ拍手。


そこへ――


バンッ!!


スモークとともに謎の爆音。

中からマントを翻して現れるアマリエ。


「うむっ!ワシが魔王アマリエ!全宇宙のポーションを束ねし者なり!!」


観客騒然。司会は目を丸くする。


「えー……えーと、アマリエさん、えー、本日はよろしくお願いします……」


「よろしい!まずは乾杯じゃな!ほれ、みんなもポーションを掲げよ!!」


『違うニャ、それは居酒屋のノリニャ……』


そして収録が始まる。


「……さて、アマリエさん。まずお聞きしたいのは、なぜこの事業を始めたのか、ということです」


「うむ、簡単なことじゃ。ワシが“燃えた”からじゃ!」


「……え、燃えた……?」


「ワシのハートがな!!フランチャイズが燃えろと叫んでおった!」


観客爆笑。

VTRが流れる。例の墓地屋台、踊る魔王、笑顔でポーション配布。


「この屋台、非常にユニークですが……反響は?」


「死者も生者も感動じゃ!皆、ワシの踊りを見て蘇ると言われておる!」


『誰も言ってないニャ』


その後も質問に対しておバカトークが炸裂。

事前打ち合わせと全く違う回答に、司会も困惑した。





中盤、空気が変わる。

疲れ切った司会が尋ねる。


「では……アマリエさんにとって、“経営”とはなんでしょう?」


観客が静まり返る。

ヴォルフガングがアマリエの脳にテレパシーを送った。


『……自分の言葉で、ちゃんと語るニャ』


アマリエは少し俯き、沈黙。

ずいぶん経っただろうか。目を閉じ何も答えないアマリエ。

司会がスタッフに目で問いかける。(どうする……?)

会場の観客もざわつき始めた。

その時アマリエは静かに口を開いた。


「……ワシは、長い間、おぬしら人類と戦ってきた。征服して、壊して、奪って……その先に、何もなかった」


司会も観客も、息を呑む。


「じゃがな……墓地で、ポーションを配った。すると、ある人間が言ったのじゃ。『久しぶりに、心から暖まった』と……」


彼女の声が震える。


「ワシのやっていることが、誰かを笑顔にした。

……それが嬉しかった。もう、それだけで、十分なのじゃ」


そして言った。


「ワシにとっての経営とは……明日を切り開いて笑顔を咲かせる儀式なのじゃ。

世界征服でも富でもなく――魂の、再生なのじゃ」


スタジオは静まり返った。

誰もが、“バカ”で“おかしな格好”の魔王の中に、“本物の魂”を見ていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ