第51話「魔王にとって、経営とは?」
番組冒頭……。
「さて、本日のゲストは……異色の経営者、“墓地から笑顔を届ける魔王社長”!
アスヒラクフーズ代表、アマリエさんですっ!!」
スタジオ拍手。
そこへ――
バンッ!!
スモークとともに謎の爆音。
中からマントを翻して現れるアマリエ。
「うむっ!ワシが魔王アマリエ!全宇宙のポーションを束ねし者なり!!」
観客騒然。司会は目を丸くする。
「えー……えーと、アマリエさん、えー、本日はよろしくお願いします……」
「よろしい!まずは乾杯じゃな!ほれ、みんなもポーションを掲げよ!!」
『違うニャ、それは居酒屋のノリニャ……』
そして収録が始まる。
「……さて、アマリエさん。まずお聞きしたいのは、なぜこの事業を始めたのか、ということです」
「うむ、簡単なことじゃ。ワシが“燃えた”からじゃ!」
「……え、燃えた……?」
「ワシのハートがな!!フランチャイズが燃えろと叫んでおった!」
観客爆笑。
VTRが流れる。例の墓地屋台、踊る魔王、笑顔でポーション配布。
「この屋台、非常にユニークですが……反響は?」
「死者も生者も感動じゃ!皆、ワシの踊りを見て蘇ると言われておる!」
『誰も言ってないニャ』
その後も質問に対しておバカトークが炸裂。
事前打ち合わせと全く違う回答に、司会も困惑した。
中盤、空気が変わる。
疲れ切った司会が尋ねる。
「では……アマリエさんにとって、“経営”とはなんでしょう?」
観客が静まり返る。
ヴォルフガングがアマリエの脳にテレパシーを送った。
『……自分の言葉で、ちゃんと語るニャ』
アマリエは少し俯き、沈黙。
ずいぶん経っただろうか。目を閉じ何も答えないアマリエ。
司会がスタッフに目で問いかける。(どうする……?)
会場の観客もざわつき始めた。
その時アマリエは静かに口を開いた。
「……ワシは、長い間、おぬしら人類と戦ってきた。征服して、壊して、奪って……その先に、何もなかった」
司会も観客も、息を呑む。
「じゃがな……墓地で、ポーションを配った。すると、ある人間が言ったのじゃ。『久しぶりに、心から暖まった』と……」
彼女の声が震える。
「ワシのやっていることが、誰かを笑顔にした。
……それが嬉しかった。もう、それだけで、十分なのじゃ」
そして言った。
「ワシにとっての経営とは……明日を切り開いて笑顔を咲かせる儀式なのじゃ。
世界征服でも富でもなく――魂の、再生なのじゃ」
スタジオは静まり返った。
誰もが、“バカ”で“おかしな格好”の魔王の中に、“本物の魂”を見ていた。