第48話「第二フェーズ、突入」
――朝焼けの墓地に、また一段と奇妙な光景が広がっていた。
「魂がっ! 魂が全身から吹き出しておるのじゃーーーっ!!」
魔王アマリエが屋台の屋根の上で、謎の舞を踊っている。
「これが……魂のダンス! ワシのビジョン! 全国制覇の舞じゃーーっ!!」
『落ちますニャ』
「ひゃっ」
ズサァァァァァ……ッ!!
墓石の間に見事な着地(というか落下)を決め、見事にお尻を打った。
「ぐあああああああああああ! ワシの魂がっ! 尻から抜けるううぅぅ!!」
「朝から何をしてるんですか社長……」
掃除道具を手にしたマサヒロが苦笑しつつ近づいてくる。
「ワシの魂じゃ……ワシの理念じゃ……踊る社長、アマリエここにありじゃ……」
「いや、だから何してるんですか」
ヴォルフガングは墓石の影から現れ、マサヒロの肩に軽やかに乗った。
その口元には黒いペンが咥えられていた。
【社長、そろそろ“第二フェーズ”の始動準備を整えるべきです】
ホワイトボードに達筆な文字でそう書かれる。
「第二フェーズ……! 全国制覇の第一歩じゃな!」
『とりあえず屋根に登るのをやめるところから始めましょうニャ』
屋台裏のテントにて、説明会が開かれた。
「それで……出資は本当に断ったのですか?」
数人のFC希望者たちが心配そうに尋ねてくる。
「断ったのじゃ!」
胸を張るアマリエ。だが反応は分かれた。
「やっぱり怖いな……資本がない会社と契約するのは……」
「私も、やっぱりやめておきます……」
次々に席を立ち、去っていく者たち。
「……うぅっ……魂じゃだめなのか……」
アマリエがしょぼんと肩を落としたそのとき――
「でも僕は、社長さんの話を聞いて決めました」
ひとりの魔族の青年が立ち上がった。
「理念を貫ける人って、かっこいい。俺、参加します!」
「わしの……わしの魂が風邪のごとく伝染しておる……!?」
ヴォルフガングが、そっとペンを咥え、ホワイトボードに書く。
【魂は病ではありません】