表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/179

第42話「ようこそ、アスヒラクフーズへ!」

静まり返った会場に、一人の女性がすっと手を挙げた。


「……今の言葉、嘘じゃないって思いました。私は……この会社に、少しだけ希望を感じてみたいです」


彼女の言葉をきっかけに、ぽつぽつと他の参加者も立ち上がり始める。


「すごい内容だったとは思わん。でも……この人、バカ正直で、嘘ついてる顔じゃないなって……」


「なんか、妙に心が温かくなった……」


「俺はまだ迷ってるけど、話だけはもう少し聞いてもいい」


魔王アマリエは、その声の一つ一つに、胸が熱くなるのを感じていた。


「……ありがとう、ありがとうなのじゃ……!」


アマリエが涙ぐんでいると、隣でヴォルフガングがそっと尻尾をぴんと立てていた。

テレパシーで声を届ける。


『よくやりましたニャ……社長』


「うぅ……ガンちゃん……ワシ、やれたかの……?」


『はい。心は、ちゃんと伝わったニャ』


そのとき、マサヒロがアマリエの背中をぽん、と叩いた。


「アマリエ社長、カッコよかったです。ほんとに」


「マサヒロ……!」


その笑顔を見て、ヴォルフガングの心が――静かに波打つ。


『…………』


彼女は、知らず知らずのうちにマサヒロの肩に乗っていた。

最近は……アマリエの肩ではなく、気づけばここにいた。

彼の優しさが心地よくて、けれど――


マサヒロの目が、ふとアマリエを見つめた。


その視線はまっすぐで、優しく、尊敬と少しの憧れが混じっていた。


(やっぱり……あの人は、魔王様を見てるニャ……)


「ガンちゃん?」


マサヒロの声に、ヴォルフガングはびくっとしながらも、首を傾げる。


「なにか伝えたいことある?」


黒猫は、そっとペンを咥えてメモに走り書きをした。


【ありがとう。無事に終わって、嬉しいです】


マサヒロは微笑むと、ヴォルフガングの頭をやさしく撫でた。


「ほんと、ありがとう。ガンちゃんのおかげだよ」


――ドクン。

想いは告げずに、そっと……そっと、マサヒロの肩で目を細めた。

その姿に、アマリエが気づく。


「ん? ガンちゃん、最近マサヒロの肩に乗るの、好きじゃのう?」


「にゃぁ〜〜ん……」


無言で目をそらした。


「ふふふ、ワシの肩が寂しがっておるぞ〜?」


「ニャ……!」


ヴォルフガングがマサヒロの肩の上で、舌をべーっと出した後、顔をぷいっと横に向けた瞬間、会場の笑いがこぼれる。

そして、説明会の最後に、一人の参加者が静かに歩み出た。


白髪まじりの中年の男――どこか商人風の佇まい。


「……あの社長さん。契約、ちょっと本気で考えてもいいですか?」


アマリエの目がぱぁっと輝く。


「ま、ま、まことに!? ぜひ! ワシ、契約の儀式、いつでも行けるぞいっ!」


『“だから、それは“儀式”じゃなくて、書面契約ニャ”』


「そ、そうじゃ! 書くんじゃ! お名前を、ピシっと!」


マサヒロがヴォルフガングに向かって言った。


「ガンちゃん、契約書、また用意お願いできる?」


【了解です】


そう書かれた紙を見て、男はふっと笑う。


「猫が筆談で契約説明してくるなんて……面白い会社だなぁ」


アマリエが力強く叫ぶ。


「ようこそ! 我らが“アスヒラクフーズ”へ!!!」






説明会終了後、控室。

アマリエは興奮冷めやらぬ様子で椅子に座り込み、マサヒロとヴォルフガングも一緒にいた。


「ふぅ……心臓が爆発するかと思ったわい……」


「でも、うまくいって良かったですね」


「うむ! ワシ、ちょっとだけ社長っぽかったかの?」


「ええ、情熱だけじゃなくて、ちゃんと伝える力もありました」


そのとき、アマリエがふとマサヒロを見つめた。


(……マサヒロは、ワシを“社長”って認めてくれるのぅ。ワシも、あいつを……信じとる)


“信頼できる大切な仲間”。

そんな確かな想いだった。

マサヒロに満面の笑顔を向ける。


一方、ヴォルフガングはマサヒロの肩に乗ったまま、静かに目を閉じる。


(ずっと……見てるだけで、今は……)


そして――3人の想いを乗せた“アスヒラクフーズ”は、またひとつ、前に進み始めたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ