第40話「フランチャイズ説明会、炎上中」
「……というわけで、ワシらのポーションは“希望の味”を届けるもので……えっと、その……ほら、世界征服にも一歩近づくんじゃぞい?」
――静寂。
……その後、会場はまさかの逆噴射を始める。
「あのさ、そんなことより本当に儲かるんですか?」
「加盟金が必要って言ってたけど、具体的な数字がないじゃん」
「何より……魔王が社長って、倫理的にどうなんですか?」
「むぅ……え、倫理? ワシの辞書にはそんな文字、ないぞい……」
「ダメだこりゃ」
ざわざわざわ……
椅子をずらす音、ため息、笑い声、そして――
「おい! この説明会、マジで詐欺じゃねぇのか?」
その一言で、場がピリついた。
「うちの近所にも、昔“すぐ儲かる話”ってのが回ってきてな……結局みんな借金まみれだったんだよ!」
「フランチャイズなんて結局“搾取”だろ!」
怒号、怒号、怒号。
アマリエは震える指でマイクを握った。
「ち、違うぞい……ワシは、皆にポーションで元気と……その……笑顔と……あと、ワシの名前を全国に広めたいだけで……」
「それが胡散臭いんだよ!」
――ガタン!
「帰るぞ! 時間のムダだ!」
退席者が、出始める。
マサヒロがあわてて追いかける。
「待ってください! 誤解です! アマリエ社長は本気で……!」
「君みたいな青年を利用するのが“上”のやり口なんだよ」
マサヒロは、はっと言葉を飲んだ。
壇上では、アマリエがしょんぼりと肩を落としていた。
「うぅ……ワシ、またやらかしたかのぅ……。やっぱりワシには、フランチャイズなんて高尚なことは……無理なんじゃろか……」
その横で、ヴォルフガングが静かにペンを口にくわえた。
カリカリ……
【社長、大丈夫。炎上には、炎上なりの“鎮火方法”がある】
アマリエが、その文字をじっと見つめる。
「……ガンちゃん」
『まずはロジックで。次に情熱で。信用を“数字”と“心”で取り戻すのニャ』
その瞳は、確かに炎を宿していた。
そして次の瞬間、アマリエはビシィッと立ち上がった。
「おぬしたちーーっ!! まだ聞いておらんことがあるぞーーーっ!!!」
驚いて振り返る参加者たち。
「ワシがなぜ、このポーションで世界を変えようとしておるか……その本気を! 今から見せるのじゃーーーーっ!!!」