第28話「墓地の魔王は、ダサかわいい」
SNSでは、ついにハッシュタグ「#魔王と一緒に踊ってみた」「#魔王の朝活ポーション」「#天地粉砕ステップ」がトレンド入り。
「すごい! 朝の眠気が一瞬で覚めた!」
「魔王ちゃん、クセになる!!」
「今朝も踊ってた。もはや中毒」
「あの見た目で一人称ワシwwwダサカワイイ」
「ノリノリ魔王を真顔で見つめる猫が対照的で草」
「あれほんとに勇者と戦ったのかよ 爆」
UGCは自然発生的に広まり、ヴォルフガングの作戦は狙い通りだった。
その最中、一匹のカラスが屋台の上に舞い降りた。
「カァーー! 魔王社長、ネットで見たぞ!」
「む、むむ? カラスが喋った!?」
『いや違う、スマホを首にぶら下げてるだけニャ。あれは――』
ヴォルフガングが尻尾で指し示したその先に、ドローンが飛んでいた。
そして、そのドローンのカメラ越しに、ある有名動画配信者が実況していた。
「どうも皆さんおはようございます、裏路地マーケターの“バックアレイ”です。
今日は噂の『墓地の魔王』を直撃しに来ました!」
実況が始まると同時に、視聴者数が爆発的に伸びていく。
「こ、これは……テレビじゃないのに、テレビ以上の影響力じゃ……!」
『インフルエンサーが自走して広げてくれるUGCの最終形態ニャ。これぞ“バズの頂点”ニャ』
「うおおおおおっ! ワシ、いま何者かになった気がするのじゃああ!」
魔王は、また踊った。
ヴォルフガングはそれを尻尾で支えつつ、小さく微笑んだ。
(これが“私たちの戦い方”ニャ)
その瞬間、画面の視聴者数が五十万を超え、チャット欄が“魔王ダサかわいい”で埋め尽くされていった――。