第27話「魔王流マーケティング戦術」
『おかげで来客数は1週間前の3倍ニャ。想定売上も上方修正ニャ』
「それってつまり、売れてるってことかの!? ワシ、もしかして有名人に!?」
『“炎上系バズり”という懸念はあるニャ。でも今は乗るしかない波ニャ』
ヴォルフガングはスマホ画面を鼻でタップし、急ごしらえのKPIグラフを見せた。
『平均客単価は340円、来店者の約4割が動画経由の流入ニャ。つまり、UGC(User Generated Content)経由でブランド認知が進んでいる状況ニャ』
「UGC……うぐっ、また横文字か……!」
『“ユーザーが勝手に宣伝してくれる仕組み”ニャ。おバカちゃんでも分かるように言えば、“勝手に応援団が増えとる”ということニャ』
「なんと……!」
アマリエは感動して涙ぐんだ。
「これまで誰も、ワシを応援してくれる者なんぞおらんかった……!」
『社長、それ“魔王時代の三軍団長”が泣いてしまうニャ』
バズの勢いに乗るべく、ヴォルフガングはさらなる施策を展開する。
『UGC投稿者には、特典をつけるニャ』
「特典!? リヴァイアサンの頬肉とかか?」
『……全然違うニャ。簡単な【魔王からのありがたき言葉ステッカー】ニャ』
「うおおお、それなら在庫無限じゃあああ!」
『そしてもうひとつ。魔族式KFCバトル配信戦略を導入するニャ』
「バトル……!? ケンカ・ファイト・チャレンジかの!? 決闘じゃな!?」
『違うニャ。“ファン参加型PR”ニャ』
「な、なんと! ぴぃあーる……!」
ヴォルフガングは前足でメモ用紙を抑えながら、次のプランを掲げた。
『来店客に“魔王と一緒に踊ってみた”動画を撮らせて、それをSNSに投稿させるニャ。そして投稿者には抽選で“ポーション50本”プレゼントニャ』
「踊るのか……また踊らねばならぬのか……!ワシのせくしぃなヒップ、フリフリするのか……!!仕方ないのぅ……フヒヒッ」
『セクシーかどうかは別として……社長、昨日無意識で踊ってましたニャ』
翌日。屋台の前には、早朝なのに行列ができていた。
「おはようございまーす! 魔王ちゃん、今日も一緒に踊って!」
「お、おおお……なんと、人間どもがワシを求めておる……!」
スマホを構えた高校生たちが次々と注文しながら、踊る魔王の姿を撮影していく。
「ワシが……ワシが、みんなの朝の元気になっておるのじゃあああっ!」
魔王は半泣きになりながら、「天地粉砕ステップ」に磨きをかけていった。
『それ、“カロリー消費ステップ”になってきてるニャ……』
ヴォルフガングが盛大にため息をついた。