EP1.襲撃
「しゃぁ〜今日から4時間授業だ〜!」
いつも以上に張り切って朝7時に2階からドラバタ降りてきた佐伯航祐はいつものように洗面所で顔を洗っていた。
「ちょっと、もう少し早く起きてよ」母の清美は毎日この時間イライラして俺に言う。
所謂これが我が佐伯家の日常の始まりだった。
「お前は相変わらずだな〜…来年で高3になるってのに…」呆れた顔をして父の忠正も俺に言った。
「ごめんごめん、今すぐ食べます〜」タオルを置いてすぐ食卓の椅子に座って食べ始めた。
学校までは、歩いて20分という何とも素晴らしい
近さであった。
「あれ父さん今日って仕事じゃないの?」
「今日は有休って言ってなかったか?」そう言いながら、父が俺の目の前の椅子に座って新聞を読み始めた。
「じゃあ母さん洗濯物干して来るから遅れずに行くのよ。」
「はーい!ご馳走さんでした。」パンを食べ終えて、残ったアイスコーヒーを飲みながら食器をキッチンへ持っていき、そのまま自分の部屋へ着替えに上がった。
歯磨きを終えて急いで玄関へ行き靴を履いた。
「じゃあ行ってきまーす」
「テスト返ってきたらちゃんと見せなさい」
父がニヤけながら言った。
「わ、分かってる」そう言いながら玄関のドアを開けて気持ち朝日の中歩いて学校に向かった。
学校に着いたら、クラスはいつもより皆んなのテンションが高かった。どうせ2年生最後の期末テストが終わったからだろう。
…だが来年は受験がある…と気が重い。
俺は自分の机に座っていつもスマホで漫画を読んで過ごしていた。余り人とは喋らない。
…いや寧ろ、喋りかけられない。
喋りかけられたとしてもノートの見せて欲しい時とか次の授業の教科を聞かれるくらい、大袈裟にいうとパシリの様なものだ。
…つまり友達ではなくクラスメイトだ。
母さんはいつも『友達』という言い方をするので、毎回、俺が『クラスメイト』と訂正している。
3時間目が終わり、不安だった数学が思ってた以上に良くて安心していた。
今日の危機は無事乗り切ったので、より早く
帰りたくなった。
窓を見ながら手を広げてリラックスしてると、机のシャーペンが転がり、取ろうとしたその時、
…ドォォドドドンドーンドォォンドドン!!
途轍もない騒音がした。いや騒音ではない地震に近かった。校舎は少し揺れたが、校内放送が流れただけで、授業はそのまま再開した。
段々と雲行きが怪しくなって来て雨が降らないかなどとずっと気にしながら4時間目が終わった。
早く帰って古本市場に行って前々から欲しかった漫画全巻セットを早く買いたくて堪らなかった。
終礼が終わり、1番に教室を出て靴を履き学校を出た。
家に向かって歩いていると、いつも通ってる踏切が半壊していて驚いた!
今朝は普通だったのに、何故だ?あの時の地震で半壊したのか?とその時は思っていた。
仕方なく遠回りをして、ようやく家に着いた。
「ただいま〜」と言って玄関のドアを開けると、誰の声もせず、家全体真っ暗だった。
買い物にでも行ってるのかな?そう思ったまま冷蔵庫に冷やしてあるジュースを取りにリビングへ入った。
…すると何やら靴下が濡れたような感触だった。
電気を付けようとしたが、後ろを振り返ると、
………!?
俺は見てはいけないものを見てしまったのだった…