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よろず見聞録  作者: 真澄
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富士山

 5月の情報番組の話題といえば、インバウンドの富士山騒ぎですかねぇ。コンビニの裏に見える富士山が人気で、向かい側の歯科医院が大変なことになっていたとか。ゴミ放置に不法侵入。交通量多い道の飛び出し横断。その対策に行われたのが、歯科医院の前に大きな幕を張ったとか。それから数日。黒い幕にはいくつか穴が見つかったとか。いやはやなんとも。

 日本の道路の中には、山に向かって車を進めるように作られた道があるとかないとか。静岡県のある場所では、富士山に向かって続く道が話題になり、またまたインバウンドの皆さんに人気になっているとか。道路にの真ん中で車を止めて写真を撮ったり、縁石に立っての記念写真。中央分離帯に横断しての記念撮影。

 日本人の感覚からすればなんてこともない風景が、世界から注目を浴びている。日本人ならやらないようなことも、旅の恥はかき捨てとばかりに考えられないことが起こる。インバウンド景気とも喜んでいられない。

 そんな富士山に登るのに、予約がいるとか。いや、登山するのに予約かぁ。入山料は別にいいんですけどねぇ、山って天気を見ながら天気が悪かったら登らないってこともあるんおになぁ。入山料返ってこないんだよねぇ。山梨から登るのに、2000円で要予約。静岡県側からなら1000円だったら、登山客静岡県に集中しないんですかねぇ。

 

 初めて富士山にの登ったのは社会人山岳会に入ってすぐ、今から数十年も前のこと。登山口にテントを張ったのか、車中泊したのか、どこから登ったのか、いつだったのか、連れて行ってもらった身には全く記憶がない。きっとプラブーツに12本爪のアイゼンにピッケルだったから5月の中頃だと思う。こちらはピッケルにすがるようにゼイゼイいいながら登っている横を、スキー靴に片手にスキー板、片手にストックでがつがつ抜いていくスキヤーを見て化け物化と思ったのと、山頂近くから見えた駿河湾を見て目がくらむ思いをしたのを覚えている。後立山連山だって3000メートル近くあるとはいえ、里が近いですからねぇ。3700メートルから海まで見えたら、そりゃぁ目がくらみます。帰りは、雪ががる限り尻セード。合羽を履いていてもお尻はびっしょびっっしょ。

 次に登ったのは、数年後のたぶん9月。山小屋は閉まってい待った時期なのに、軽登山靴で普通の山みたいにたくさんの登山者と一緒に登ったのを覚えている。サブリーダーでみんなのペースを作りながら、ゼイゼイしながら登ったのに、ついたところはガスで真っ白だったような。

 最後に登ったのは、それからまた数年後。海外登山の錬成で、11月。水4リットルとテントにシュラフ。8合目にテントをはって、そのテントが風でバタバタと揺れていて、外張りと本体がすれて静電気が起きて、バチバチと時々電気が走っていたのを覚えています。次の日山頂付近は天気も悪く、強風。あまりの風の強さに負けてリーダが走ってしまったとか。そのまま風で舞い上がったといいます。体重が重い人は風に飛ばされないでいいねぇ、って。私は転んだら風に飛ばされると思ってゆっくり歩いていたんです。風にまけて走ったあなたが悪い。そんなこんなでボロボロになっての下山。あと少しで車止めというところで、鼻水だらけのリーダーの顔を濡れティッシュで拭きながら、これから先はきれいなお姉ちゃんのいる観光地ですからねぇ、って言ったとたんに顔が緩むって男って。

 富士山は海外登山に挑戦する山家にとって、日本で錬成できる数少ない場所。無謀な外国人観光客のおかげで、まったく入山できなくなるくらいのバリケードが作られてしまっては困る。

 何も知らない亭主殿は、いつかは富士山に登りたいなんて呑気なことを言ってるけれど、気軽に登れるような山ではないんだよなぁ。

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