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昼飯は『小田原城』に隣接する『報徳二宮神社』の中にある、『きんじろうカフェ』で済ませることにした。
『報徳二宮神社』はあの二宮金次郎を祀った神社で、そんな神社があったことにまずびっくりしたけど、神社の敷地の中に二宮金次郎にちなんだカフェまであると知って、二重にびっくりした。
キラン達は勿論二宮金次郎なんて知らなかったから、適当に「勉強大好きで、歩きながら本読んでた地味に迷惑な昔の人」と説明したけど、多分間違ってはいないだろう。
『きんじろうカフェ』は和風モダンの、洒落た建物だった。
黒い屋根と茶色い木目が目に鮮やかだ。
カフェの外にもテーブルがあったけど、俺達は暑さを避けて、カフェの中の長方形のテーブルを囲むことにする。
俺が二宮金次郎も食べていたと言われている「呉汁」と「炊き込みご飯」のセット――正直量に不満はあったし、炊き込みご飯はあまり好きじゃなかった――を空にした一方、キランとルアは二宮金次郎のラテアートが面白いコーヒーを半分近く残した。
コーヒーを飲み慣れない二人にとっては、苦みが強くて飲み難かったらしい。
寧ろ、俺が分けた「呉汁」と炊き込みご飯の方を気に入ったみたいだった。
二人共普段の食生活が質素みたいだから、現代人の感覚からすると物足りない粗食の方に馴染みがあるんだろう。
どうにも物足りなくて、追加で頼んだ「日本茶・だいふくセット」を食べ終わってから会計を済ませると、俺達は『小田原城』の天守閣に向かった。
三人で天守閣の前で写真を撮ってから入り口をくぐると、中は冷房のおかげで快適だ。
しかもチケット売り場の前にはほとんど行列がない。
平日だからあまり混んではいないようだし、ゆっくり見られそうだ。
俺は短い列の一番後ろに並んだけど、キランとルアはいきなりチケット売り場を素通りして中へ入ろうとして、俺は慌てて二人を呼び止めた。
「待った待った! さらっと自分の家に入るみてえなノリで入ろうとすんな! まずはここでチケット買うんだよ!」
「え? ここってお城なんでしょ? お店だったの?」
足を止めてきょとんとした顔で訊いてくるキランの横で、ルアも不思議そうな顔をしていた。
どうやらキラン達は「金を払う場所=店」だと思い込んでいるらしい。
二人共、物は知らなくても非常識な振る舞いをしたことはなかったけど、ここに来てとうとう文化の差が出てしまったみたいだ。
俺はできるだけわかりやい説明を心掛けながら言う。
「ここは店じゃねえけど、みんなが払った金で建物を綺麗にしたり、ここを管理してくれる人を雇ったりしてるんだよ。他にもそういう場所はいろいろあって、入る時にはみんな金を払うことになってるんだ」
「ふーん?」
キランはあまりピンと来ないみたいだったけど、ルアは何か思い出したような顔になって言った。
「そう言えば、乗り物で遠くへ運んでもらう時にもお金を払うって聞いた覚えがあるし、いろんなことにお金を払うものなんだね」
ルアの言葉にキランも納得したみたいで、大人しくチケット売り場の方に来てくれた。
話せばちゃんとわかってくれる辺り、クレーマー気質な人間より、よっぽどまともで常識がある。
三人でチケットを買って、すぐ近くにある短い階段を上ると、正面は受付になっていた。
そこを右手に進むと、『小田原城』の大きな模型や城の役割をまとめた常設展示室がある。
黒を基調にした展示室はこれまたモダンな雰囲気で、展示物以外に和の要素はあまり感じなかった。
さっきもらったパンフレットによると、中は五階建てになっていて、甲冑・刀剣の展示や天守の再現展示の他に、シアターもあるらしい。
二〇一六年にリニューアルオープンしたそうだから、中はどこもかしこも綺麗で新しかった。
前に来たのは小学校低学年くらいの時で、どんな展示があったかなんてほとんど覚えていないけど、多分今とは随分違っていたんだろう。




