タイトル未定〜供養作品〜
炎に包まれる街中。私はその場で崩れ落ちた
後に荒神と呼ばれる化け物に全てを奪われた。呆然とその光景を眺めていた。破壊し全てを壊す荒神は一方的な強さを持ち全てを蹂躙していた
『……』
私の前に影が差した。その方向に向くと何とも言えない少女が佇んでいた
地面を引きずるように伸びた白と黒のメッシュ髪、病的なまでに白い肌に紋様が浮かび上がっていた。白と黒のオッドアイ、黒のワンピースを着て、黒のロングコートを羽織っていた
雰囲気は良く分からなく、感じが儚げな少女。でも見て分かった。彼女は人間ではなく荒神。
殺すなら早く殺して欲しかった。だけど彼女は私を見て観察していた
『気に入った……その目……私はその目を求めていた……』
彼女は私を見てそう言う。荒神の言葉の意味が分からない。だけど……周囲の居たはずの荒神は私と彼女を無視して人間を喰らっていた。頭をかち割っていたり、お腹を引き裂いて内蔵を食べたりと
人間を食べている荒神は人型もあれば獣型も様々だった。だけど彼女は完全な人間の姿をしていて、とても荒神とは思えなかった
『荒神は数年前から存在してる……それを対処する現人神も……人間は知らないのが当然……それは……非現実的で……私達は……圧倒的力を持つ……』
彼女はゆっくりと私にそう説明する
『なら……現神に出来て……荒神には出来ない……現神は人間に手を貸し……私達を否定する……此奴らは知らない……私は人間に興味がある……それが私の目的……
私と契約して……向こうと同じで……認知されない……荒人神に……ならない?……そうすれば……この一体の……荒神は……全て消し去る事が出来る……』
彼女は両手を広げてそう言う。私は困惑していた。圧倒的存在の荒神が私に力を貸そうとしてる
だけど分かっていた。これにはデメリット……つまりは代償が存在する事を……
彼女は黙っている私を見て
『忘れてた……私は……荒神と現神の存在……現神の行う……契約も出来る……だから……私は異端で……イレギュラーな存在……だから……私はこう名乗る……現荒人神姫……』
彼女は細く微笑む。その笑みが怖くも美しかった。でもそれでも信用は出来ない。何せ目の前の存在と同じだから
私は無力で家族も助けられない。そして荒神は復讐の対象で彼女も例外では無い。彼女も殺す
そう決めたけど殺せないのは明白だった。圧倒的存在だからなのと……ここまでに時間が経ったのに殺す事すらせずに私に提案し取引しようとしてるから
彼女は私に手を差し伸ばして
『信じなくても良い……でも信じて……この災害は……別の荒神であって……私では無い……何なら……この災害を引き起こした……荒神を殺す為の力を……『無償』で与える……』
鼓動が強くなる。彼女の言葉からは到底信じられない。でも現に彼女は私だけに興味を向き、他の事に興味を示してなかった
私は周囲を見た。もう肉塊となった人間だったモノを見て吐き気が出てくる
「……荒神は……荒神を……全て殺せる?……」
ようやく声が出て私は聞くと彼女は肩を竦めて
『無理……』
そう断言された。私は手に力が入る
「……貸して……殺せるなら……殺す……無理でも……可能にする……その為の……力を貸して……貸して!」
そう叫ぶ。殺せないなら殺す。無理なら無理矢理にでも殺し尽くして……この荒神を……終わらせると
『良いよ……手を貸して……』
彼女から手を差し出される。私は彼女の手を握ると自然と落ち着いた。冷たくも優しく握られた手はとても荒神と同じとは思えない。人間を大切にするような……そんな感じがした
やがて彼女は黒い靄となり私の中へと入ってくる。その瞬間に苦しみが先に……
「あがっ……ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛……ああああああああぁぁぁ!!!!」
喉が枯れるほどに叫ぶ。手が地面について体を震わせて脈を打つ。髪が伸びていき白と黒のメッシュ髪に染まり、紋様が広がっていく。着ていた服は黒のワンピースに黒のロングコートへと変えていた。息を切らして口からはだらしなくヨダレが垂れる
私はゆっくりと俯きながら座る。ゆっくりと目を開ける。水溜まりの方を見ると白と黒のオッドアイになっていて
「……これなら……」
確信した。これなら荒神を殺せると。私は立ち上がり荒神の方へと歩く。荒神は私を認識すると襲ってくる
噛み砕こうとしたのを手で受け止めてかり、裏拳で吹き飛ばした。彼女の力は使ってない。使うまでもないから
そう思ったけど他の荒神は気づいて一斉に私の方に向かう。だから彼女の力を使うしか無かった。でも試すには丁度良かった
目を瞑り手を広げて私は一言
「死ね……」
その瞬間に空間が黒く歪むと全ての荒神は引きちぎられ、赤い液体。血飛沫を撒き散らして無数の荒神は即死していた
私はそれを見て笑っていた。圧倒的存在の荒神を殺せたのを。殺した凶器は圧倒的存在の荒神の力。不服だけど彼女の言う通りだった
私は嬉しくなり、この災害に存在する荒神を殺し回る。人間と同じ様に、引きちぎり、頭をかち割り、四肢を切断、あらゆる殺しをした
気がつけば荒神の死体だけが山積みになり私はその上で立っていた。荒神の血を全身に被り私は笑って泣いていた
私に残るのは殺した。だけども失ったものは帰ってこない。復讐は何も残らないと言ったが本当に何も残らない
でも決めた事だったから私は荒神の死体を見て決めた
「必ず殺す……」
私はそう呟いてその場を後に
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最悪の災害は現人神の手によって治められたが、ある場所だけは荒人神が来れなかった。それは量が多く手が回らなかったからだ
その場所は酷く死臭が漂い見るに堪えない場所だった。現人神やその関係者が生き残りを調べるが居なく、死体のみだった
そしてその一角には荒神の死体が山積みになっていた。近くの生き残っていた監視カメラを見るとそこには黒い服を身に纏う現人神が居た
当たり前だが認知はしてなく、現人神とその関係者はそれを見て戦慄する。普通の殺しならしないが、やり方は死体と同じような殺しで現人神は微笑み狂いながら殺し回っていたからだ
それを見た関係者は呟いた
ーーー「白黒の現人神……最悪の現人神……」
謎の現人神はこう呼ばれた。【漆黒死神の現人神】と