表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

約2分で読み切る小話集

聖女様の声だけが聞こえる

作者: 北園

「なろうラジオ大賞2」応募作品その5。

 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。


 早速ではございますが、日頃よりご愛顧いただいているユーザー様に弊社の新アプリ『聖域ポータブル』をご案内いたします。

 スマートフォンのAR機能を用いていつでもどこでもあなたの聖域に! 現在、聖人・聖女の10キャラクターから選択可能です。豪華フルボイスで会話ができますので、プライベート空間で楽しいひとときをお過ごしいただけます。


 他のご利用者様の声がお聞きになりたい、と?

 なるほどおっしゃることはごもっともです。……ああ、ちょうどモニターの方が帰宅し、アプリを立ち上げたようです。



 それでは様子を覗いてみましょう——






「ただいま聖女様」


『お帰りなさい。お疲れですか?』


「そう……ですね。ちょっと、嫌なことがあって……聞いてくださいますか?」


『もちろんです。わたくしは聖女。迷える子羊の悩みはいくらでも受け止めますよ』


「そう言ってくれるのは聖女様くらいです。どこから話せばいいのか……営業がですね、急に仕様変更を言い出して。そんなのこれっぽっちも知らされてなかったのに納期変わらないとか……」


『それは大変でしたね』


「で、上司は上司で、現場は君に任せているから委細よろしく頼むだと」


『まあ、貴方に責任を押し付けるのですか? なんとひどい……』


「しかも下の奴らは勝手なことすんなって注意してるのに余計な手間増やすし……誰も俺の声なんか聞きやしないんです」


『つらかったですね。わたくしになら、貴方の気が済むまで話してくれていいんですよ』


「ああ、ありがとうございます。貴女様だけが我が心を癒してくださる」


『そんな、わたくしでは何の力にもなれませんのに』


「聖女様以上に活力を与えてくれる者などいません! せめてお手に触れ忠誠を誓うことができたなら……」


『触れたいのですか?』


「え?」


『でしたら——カメラにあなたを映して、マーカーをつけてください』


「そういえば、被写体を捧げる機能があったっけ……ハハ、ものは試しだ。インカメラにして、マーカー移動……で、『取り込み』を——」













———————————————

 now uploading

———————————————













 おっと、端末が床を叩いてしまいましたね。幸い液晶画面は無事のようです。

 ユーザー様もご覧ください。先程のモニターの方、画面にいらっしゃいますよ。




 彼の声が聞こえない?




 残念ながら、フルボイス対応は弊社キャラクターのみですので。


初期案はスプラッタコースでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければ<評価><感想>いただけると嬉しいです。


― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ