プロローグ
我ながら愚かだと思う。
僕だって最初から、漫画やラノベのラブコメのようなきらびやかな高校生活は不可能なことぐらいは分かっていた。僕は漫画やラノベ、アニメ、ゲームが好きな俗に言うオタクというやつで、人付き合いは得意じゃない。だから、女の子と仲良くなるのはもちろん彼女なんて夢のまた夢だと最初から分かっていた。友達くらいは欲しかったけど。
残念なことに2年生になった今でも、休み時間にはラノベを読むかスマホでゲームをするかの2択だ。そんな僕、黒崎陸斗に必要以上に話しかける人間がいた。1年生の頃から同じクラスの星野麗華である。星野は、少し馬鹿だが、明るくて周りを笑顔にさせるみんなの人気者だ。おまけに容姿も抜群である。
だが、スクールカーストの頂点にいるはずの彼女は、なぜかカースト最底辺である僕にちょくちょく話しかけてきた。
「ねぇねぇ、何読んでるの?」
「ねぇねぇ、なにやってるの?」
と僕がラノベを読んでる時やスマホゲームをしてる時にやたらと接近して話しかけてくる。
そんな事をされると、キモオタ童貞である僕は、ひとつの結論にたどり着く。
星野は、僕の事が好きなのでは
と、そんな事を考え始めたら僕は無意識のうちに星野を見るようになった。そして、星野の誰にでも優しく笑顔なところをみて、僕は恋に落ちた。
最初は、星野が告白するのを待つという、かなり上からの待ちの姿勢だった。当然のことだが、いつになっても星野は、告白してこなかった。なので、僕はしびれを切らし、しかたない、ここで折れて告白してあげるのも男の役目かななんて思い、僕は星野に告白した。
「ごめんね、黒崎君とはお友達でいたいかな」
当然のことだが、振られた。
なぜか自信満々だった僕は、振られてかなりショックだったとはいえ次の日も学校に行けるくらいには、僕の精神は図太かった。
しかし、僕が星野に告白してから2日後、クラス中に星野麗華とサッカー部のエースの天王寺聖也というチャラ男が付き合ったという話が聞こえてきた。そして、星野と天王寺が仲良く腕を組んで登校したのを見て、僕の精神は限界に達した。
僕は、全力で走って屋上に向かった。そして、空に向かって全力で愚痴を叫んだ。
「ふざけるな、なんでそんな優しくした!なんでそんなに近づいた!僕を弄んで楽しかったか!クソー!」
星野には、なんも落ち度はない。でも、そう叫ばないと僕はやっていけなかった。耳を済ますと、僕の愚痴がやまびこのように聞こえた。
☆
我ながら愚かだと私は思う。
私、白川千香は自他公認の読書家だと思う。本さえあれば他はどうでもいいとさえ思ってる。小学生の頃から高校生になった今まで、休み時間はずっと読書をしている。そのせいで友達と呼べる人間は一切いない。クラスでは浮いてる気がするが私はそこまで気にしない。だって、本さえあれば十分だから。
そんな、本と私で完成された世界に入り込んでくる、1人の男がいた。その男は、名前を天王寺聖也と言い、サッカー部のエースで運動神経抜群で友人多数のスクールカーストの頂点とでも言える人間だ。
この天王寺聖也という男は、不思議な事に私にウザいくらい話しかけてきた。
「白川さん、何読んでるの?」
「その本、面白いの?」
などなど、執拗に話しかけてきた。最初嫌だなと思っていたが、しだいに私は天王寺君に話しかけられてるうちに天王寺君のことが次第に好きになってしまった。
最初の方は、なんかの遊びで私に話かけているんだと思った。でも、ある日聞いてしまったんだ。天王寺君が所属するパリピグループのチャラ男Aが、
「天王寺、お前よく根暗の読書女に話しかけてるけどなんで?」
「なんていうか白川さんに興味があったんだよ。いつも本読んでるけどなんでかなと思って。最初は、そっけない態度だったけど、最近は笑顔で話してくれて可愛いよ」
可愛いなんて言われると、私のような免疫のない女はコイツ私に気があるのではと勘違いしてしまった。
両思いなのではと思うと、私という冴えない女がとる行動は1つ、ラブレターを天王寺君の下駄箱に入れた。次の日に私は天王寺君に呼び出され、
「ラブレターみたよ、白川さんの気持ちは嬉しいけど、ごめん」
と私は玉砕した。この時点で私の精神はどん底だったが、トドメは2日後にクラス中から、天王寺君と星野麗華というビッチが付き合ったという話が聞こえてきた挙句、2人が腕を組んで登校してきたのは見た瞬間、私は一限など、どうでもよくなって屋上に駆け出した。
「ふざけるな、馬鹿野郎。なんで私に優しくした。どうして、私に話しかけたんだ。ふざけるな!」
天王寺君は、なんも悪くない。でも、そう叫ばないとやってけなかった。そして、なぜかやまびこが聞こえてきたのちに、
「なんで、星野は天王寺みたいなチャラ男と付き合ったんだよ」
と天王寺君をバカにする声が聞こえてきたので、私は、
「天王寺君をバカにするな!」
と私はふざけた発言をした男に飛びかかったのだった。