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創造神のリサイクル事業  作者: 水瀬 悠希
創造神はリトライをする
33/35

どちらが美味しいの?

 広大なグ・エディン・ナは、原生林のど真ん中にあると言いますか。

 森の木々に囲まれたちょっとした広場があります。広場と言っても小さな村くらいの、ちっぽけな場所ですけれどね。

 そこにはアーダマー達が暮らす小さな家と田畑があります。


 そこから西の方にしばらく歩くと、海岸に出ます。

 創造神様と私が海に行く時に使っていた小径だったのですが、ちまちまと手を入れているうちに、街道っぽい造りになってしまいました。

 途中に作った広場には丸太小屋もあるのです。


 ここが神のために作られた、グ・エディン・ナに作った憩いの場……

 ……なのですが。


「ヘルマよ、これはどうした事じゃ」


 創造神様が呆れるのも、仕方がありませんね。


 この惨状を見て怒りださなかっただけ良しとしましょうか。

 だって、食肉植物だったもののカケラとか、元は海洋生物だったものの何かとかが散乱していて。

 ハヴァとリリートゥがとっくみ合いの喧嘩をしている最中なのです。


「見ての通りですよ。ハヴァとリリートゥが喧嘩しているだけですよ」

「お前は何をしているのじゃ。喧嘩など、早々に止めさせんか」


 いーえ、無理ですね。

 ここまで拗れてしまったら、とことんやるしかないでしょう。

 それで生まれる『何か』があるかも知れませんし。

 そういうわけで、私はただの傍観者です。


「というわけで、創造神様もどうですか?」

「何を呑気な事を…… とにかく仲裁が先であろう」


 いやですよ。

 せっかくカルキノスが美味しく上手に焼きあがったのです。

 食べるタイミングを逸する訳にはいかないじゃないですか。

 創造神様も遠慮なく……


「むう、これはこの辺りに住むカルキノスの王であるな」

「そうなのですか?」

「大きさを考えてみよ、あれほどの個体は他におるか?」


 言われてみればその通りすね。

 量産型というか、普通の個体は赤瓜くらいの大きさです。

 それに比べて、これは軽自動車クラスですから。

 でも甲羅が厚いですね。食べるところがあまり……


「普通のカニとて、4割もあれば良い方じゃ。こいつはもっと少なかろう」


 でも、あの甲羅の厚さから考えると仕方がありませんかね。

 なにしろ、私の手の幅よりもあるのですから。

 よくもまあ、あれで地上であれだけの動きが出来たものです。


「あの2人の声が聞こえなくなったようだの」

「ちょっと様子を見に行ってきますね」


 ……わはは。

 どちらも体力切れで動けなくなっています。


「判定、ドロー! ……運動が終わったら、食事にしましょうか」


 鍋の中に放り込むのは、あたりに転がっているもので充分です。

 テッポウユリ(ロギフロラ)は根の部分が美味しいし、栄養もあるのです。

 食肉植物(セファロタス)はきっちり毒抜きをして。


 トゥゾイアは海に逃げ戻りましたか。あれはあんまり食べられる所が無いからどうでもいいや。とにかくカルキノスはメインの具材です。鍋の中身は、それぞれ山の幸、海の幸。そして両方を使ったものの3種類。

 食べ比べてもらえば、私の言いたい事は分かってもらえるでしょう。


 アダーマーは難を避けたつもりでしょうけれど、ちょっとだけ損をしたかも知れませんね。あとで何か……


「そろそろ終わった頃だっぺかね」

「……ずいぶんとゆっくり登場したものね、アーダマー」

「あれらが、ああなったら、変に近づかねー方が身のためだで」


 そろそろ体力切れで動けなくなっている頃だと思って、迎えに来たのね。


 ふふふふ。

 それが出来れば上出来です。

 食べ物を用意したから、皆で食べ比べてみなさい。


 そして、私が何を言いたいか、少しで良いから考えてみてね。



 今日の聖典


 ある時、神は言われた。

 私は山に住むもの、海に住むものを等しく作り出したが、あなた達はなぜ、

 片方のものを嫌うのか。姿かたちを理由に、罪や穢れを定めてはならない。

 神は天へと帰り、地上は夕となり、また朝となった。


 神はエラー無しを見て、良しとされた。

カニ抜きのカニ鍋。野菜抜きの野菜鍋。全部入り。

あなたなら、どれを選びますか?(笑)


次回更新は2月25、26日の予定です。

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