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創造神のリサイクル事業  作者: 水瀬 悠希
創造神はリトライをする
30/35

山のものも美味しい

 リリートゥが海の怪物を食べていたけど…

 女神様が言うには、あれも食べることが出来るものだとか。

 カルキノス、だったかしら。


「畑の作物を食い荒らすんですよね」

「んだな。棒でぶっ叩いても棒の方が壊れっかんなぁ」


 畑に忍び込んだカルキノスはアダーマーが追い払ってくれるけど、とっても大変なのよ。長い棒で突いて、海岸まで追い払うのが精一杯。

 道に大きな石で壁を作って、あいつらが歩きにくくしたけれど。

 今度は私たちが海岸に出るのがね……


「しょうがあんめぇ。畑の作物を食い荒らされるよりはよがっぺ」


 神様は言ってたわよ。


『全地のおもてにある種をもつすべての草と、種のある実を結ぶすべての木とをあなたがたに与える。これはあなたがたの食物となるであろう』


 たしかにそうよね。

 米の世話は大変だけど、私たちのお腹をいっぱいにしてくれる。

 赤瓜やヤシの実の中身は甘くておいしいの。こういうものは他にも沢山あるわ。

 でもね、赤瓜だけは用心しなくっちゃ。


「タコは赤瓜を狙ってるし」


 海から来たものは、畑の作物を狙っているの。

 特にタコ。女神様もお気に入りの大切な赤瓜を食い散らかすのよ。

 あのぐにゃぐにゃした体は、アーダマーが思いっきり棒で叩いても堪えた様子もないし。


「しょーがあんめ。神様も言ってたべ」


『すなわち命あるものには、食物としてすべての青草を与える』って。


 青草はね、別に食べてもかまわないのよ。

 でも、草の実を食べるのは駄目でしょ?

 神様は与えるなんて言ってはいないわよ。

 だから、タコは赤瓜を食べちゃダメなの。


「でも海には甘めぇもんがねーべよ」

「そうなの?」

「海の水を舐めてみればわがっぺよ。すんげー塩辛い味がすっぺ」


 薄めた海の水を使うと、ご飯も美味しくなるけど…

 そのままでは、たしかに塩辛いわよね。

 でも、タコって薄めていない海の水の中で暮らしているんでしょう?

 変な生き物だと思うのは、私だけじゃないと思うのよ。


「そりゃあそうだけんどもよ……」

「あんな所で暮らさなくてはならないなんて、何か悪い事をしたからよ」


 だから神様に怒られて、あんな所で暮らすようになったんだわ。

 あんなぐにゃぐにゃの身体も、神様の罰を受けたからに違いないと思うの。

 私たちは、そんな事は絶対にしないから。


 って、どうしたの、リリートゥ…


「タコに喧嘩を売ったら、海の中に引きずり込まれそうになったんだお」


 これもタコの仕業ですか! 赤瓜ばかりかリリートゥまでも。

 リリートゥをどうにかしていいのは、私だけなんです。

 それなのに、それなのに……

 タコを許すまじ!


「アーダマーにだっこしてもらったら、身体が暖かくなってきたお」

「それは良かったわね」


 さっきまでは身体の色も青白かったのですが、血の気が戻ってきたようです。

 カチカチと歯を鳴らすくらいに震えていた身体も、今では落ち着いてきたようですね。

 アーダマーに温めてもらったのが良かったのでしょう。


「じゃあ、私は米を煮てくるわね」


 身体が暖かくなってきたら、元気になってきたようだけど。

 だからと言って、弱った身体はすぐには戻らないのよ。


 ……仕方がないわね。


 今日だけはアーダマーをひとり占めしても良いからね。



 帰ってきた今日の聖典


 神は創った人を連れて行ってグ・エディン・ナに置かれると、見て美しく、

 食べるに良いすべての木を土からはえさせられた。

 神はまた言われた、「わたしは全地のおもてにある種をもつすべての草と、

 種のある実を結ぶすべての木とをあなたがたに与える。

 これはあなたがたの食物となるであろう。そのようになった。


 神はエラー無しを見て、良しとされた。

タコやイカなどは、体の大きさに比べて脳の割合が、かなり大きいそうです。

そのせいでしょうかね。タコは道具を使う事が出来るし、遊ぶ事も覚えます。

人に助けてもらったタコがお礼に来たなんて話もあるそうです。

その寿命は数年ですけれど、タコが長命ならば海洋の覇者になっていたかも。

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