産めよ増やせよ地に満ちよ
創造神である。
全てのリソースを使い尽した世界は、自然と消滅するものであるが…
ワシが気まぐれで降り立ってみた世界は、運命に抗い消滅をまぬがれたレアな世界じゃった。そこに生命を育む、小さな箱庭世界を創ろうと考えたのは、たんなる気まぐれに過ぎぬ。
それはまったき矮小なる世界である。なぜなら恒星系がひとつあるだけで、あとは何もない。
それだけに、世界の終わりも早いのであるが……
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ヘルマよ、何を頑張っているのじゃ。
人類創造を終えた以上、短命に終わるはずの世界を見守るだけではないか。
あとは、大きなイベントは無いはずじゃろう。
茶でも飲んで落ち着くがよい。
「創造神様的にはオッケーでも、私はこだわりたいです。彼らの… あの死んだタコのような眼差しが、何とも我慢できないんですよぉ」
それは差別というモノではないかな。
それを是としてしまえば、おまえたちの先祖がしでかした愚行と変わらぬぞ。
肌の色が違うとか、食べ物が違うというだけでケンカしてたからな。
たかだか人相が悪いというだけで嫌うとは何事であるか。嘆かわしい。
「それとこれとは別です。彼らは、いわゆる『目が死んでいる』んですよ。
誰だって、夢も希望も何もなければ、ああいう表情になるのでは?」
夢や希望、のう。それを与えるために、あれこれやってみたわけか。
「そうです。でも、うまくいかなくて……」
のう、ヘルマよ。彼らに夢や希望を授けたいのはわかる。
その行為は尊いものじゃ。だが、それらの根底にあるものは何なのか、考えたことはあるかの?
「根底にあるものですか? 夢や希望があって、はじめて何かをしようという、気力がわき起きるんだと思ってますけど」
それはな、欲望じゃよ。何かを成し遂げたい、という欲望の副産物として、こうであれば、こうなれば良いなぁ、といった意思が生まれる。それが希望じゃ。
諸説あるが、『タマゴが先か? 鶏が先か?』という命題じゃのう。
ふむ、時には神もたわむれる時というものが必要であるな。
よしよし、今回もヒトに自我と欲望を授けてやるとしよう。
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┃Command ? : CREATE FREEWILL
┃OK
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┃Command ? : ACTIVATE FREEWILL
┃OK
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┃Command ? : CREATE DESIRE
┃OK
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┃Command ? : ACTIVATE DESIRE
┃OK
「人間に自我と欲望を植え付けてみた。ほほぉ、目に見えて表情が変わって来たではないか。うむうむ、あれなら、遠からずヒトは増えていくであろう」
えっ… と。ヒトって、ああやって増えていくんですね?
いつの間にか、女が2人になってますが……。
あそこでアダーマーを組み敷いている、アレは誰です? ハヴァじゃないですよね?
創造神様ったら。そういうジャンルががががが……
いたたたた…… 久しぶりに来ましたね。
「あれはハヴァを創る前に、途中まで創りかけたオンナ? ではないか。
どうして動き出したんじゃろう。まさか怪奇現象のたぐいではあるまいな」
それはいいんですが、アダーマーは大丈夫ですかね?
なんか干物みたいになっていますよ。回復しておかなくちゃ。
ハヴァは、お肌がつやつやして幸せそうですね。
明日も畑のお仕事、頑張るんですよ。
今日の聖典。
神は男と女が産み増えていくのをご覧になられた。
人はその父と母を離れて妻と結び合い、一体となるのである。
人とその妻とはふたりとも裸であったが、恥ずかしいとは思わなかった。
神はエラー無しを見て、良しとされた。
これで主な登場人物が出そろいました。
オンナ? の正体は… 決まっているじゃないですか(笑)