外典:神は土のちりでヒトを造る
天地創造も2回目ともなれば、それなりに分かってきた事もあります。
前回はちょっと失敗してしまいましたけれどね。
たまたま、大きなドングリを食べたかっただけなんです。
「その結果として、全身が毒の塊のような大木を量産したのぉ」
「ううう・・・」
私が創造した巨ブナは、栄養分よりも毒の方が多いというか。
それも触ったら命が危なくなるレベルの猛毒だったのです。
結果として、創造神様がすべて駆除してしまわれましたが……
「海の生物ヨシ! 陸の生物…… ヨシ!」
今度の地球には、普通に虫とか動物もいますし、毒のない植物も順調に育っています。さあ、ここからがクライマックス。いよいよ人類創造のスタートです。
「重ねて伺いますが、最後に創造するのはヒトですよね。
創造神様の御姿を真似たものですよね? トゲとか触手は生えてませんね?」
「我々の姿を模して創造するのだから、当然であろうな。
おまえはすごく触手を意識しているな。 ……触手アリも検討するか?」
要りません! 却下でお願いします。
この前の調整で死滅したのなら、そのまま放置という決定でお願いします。
「安心せい。そのあたりは大丈夫じゃ」
いやに素直ですね。今までのパターンだと、色々ありそうなのですが。
何が原因でしょうか… ああ、そろそろお昼ご飯の時間ですね。
お昼ご飯の仕込みはバッチリです。
味付けはチキン味の一択なのですから、慣れたものです。
「そこじゃ! ご飯の味付けの改善を要求する!
チキン味の一択はやめて欲しいぞ、マジで」
なにおう? 却下だコラ! 創造神様がくれた調味料… 和風だし汁の素、ブイヨンキューブ、洋だしの素…… ぜーんぶチキン味なんですけど? そこからどうやって、美味しい芋煮とかを作れと。それに、料理スキルは並のレベルしかないんですよ。これで一体どーしろって、おっしゃるんですかっ!
「すまんっ! ほんっとうにすまん!
何故かわからぬが、この空間でワシが創り出す料理も、食材も、全てチキン味になるんじゃ。
頼むから張り扇を、いや、怒りをおさめてくれぃぃぃ」
つまり、この世界の特性上、創造神様もここでは十全に御業をふるえない、と。
消滅を待つばかりだった世界に、世界のスクラップをいくつも放り込んで、リサイクルしている最中ですからねぇ。特異点だったわたしが言うのも難ですが、世界をリサイクル出来ちゃった事が、すでに奇蹟ですよね。
あら、創造神様。ラストスパートですか。システムのバージョンアップも?
ご無理なさらずに……
┃
┃BLOAD "HUMAN_MALE_BODY.BIN",R
┃OK
┃CALL outward_appearance(DA1,SR2)
┃OK
┃CHAIN MERGE "5:Apostle", 6200, ALL
┃OK
┃
┃Command ? : ■_
┃
かたかたかた… かたっ かかかたっ…
かたたたたたた・・・・・・・
キーボードを打つ音が繋がって聞こえます。画面のスクロール速度も相当なものですね。残像すら見えませんよ。
今までの中で、一番早いんじゃないでしょうか。
「……これでヒトを創り出す準備が出来たのじゃ」
かたかたかた。 たんっ!
┃
┃Command ? : 我々に似せて人を造ろう
┃String formula too complex
┃
┃Command ? : CREATE MAN
┃Error 1202
┃■_
┃
このエラーはシステムオーバーフローですね。データーの入力に、機械の処理能力が追い付いていなかったようです。
必要最低限の機能を残して、プログラムを強制再起動した結果ですか。
ある意味では、このマシンは優秀ですねぇ。
ああ、丁度いい時間になりましたね。お茶でも淹れてきます。
コーヒー? キリマンとマンダリンのブレンド?
有るわけないだろ、ふ・ざ・け・ん・な。
第3のオトコが生まれる……(笑)




