神は安息なさった
薄暗い空間にあるものは、シンプルなデザインの机と椅子が2組だけ。
他には何もありません。
床も、壁も、天井さえも。そして、音さえも。
ああそうだ。時間と言う概念も。
概念?
はて、なんでしょうか。とても大切なモノだったような気もします。
モノ? あそこにある机のような?
いいえ、違います。
時間、ジカン、じかn……
ううむ、わかりません。時間とは何なのでしょうか。
思い出せないとなると、余計に気になるものです。
……まあいいでしょう、どうだって。
だって、ここには、なにも……
「……ルマ! ヘルマよ! 大丈夫かおぶうっ!」
っるさいですね。惰眠を堪能していたのに。
ああ、創造神様じゃないですか。
どうしたんですか? 壁に身体がめり込んでいますよ。
「おまえがやったんじゃ!」
そうでしたか。でも、乙女の寝顔を覗き見たのですから、相応ではないかと思いますが。
「何を言うか。おまえはな、地球が消滅したとたんに、実体を失ったのじゃぞ。
わかりやすく言えば『死の一歩手前』の状態だったのじゃぞ。
なのに、目を覚ましたとたんに、これじゃ」
どういう事でしょう。
「地球を創る時に使った材料はな、この宇宙に最後まで残った、メサイア=ゼロ星雲を構成する
物質じゃ。ほとんどが、消滅しかかっていたのだがな。
そしてヘルマよ、おまえは、かの星雲人が生み出した遺産… 超越生命体なのじゃよ。
星雲人の魂魄すべてが一体となった存在である。
だからな、おまえと創造した地球とは、どこかで繋がっていたのじゃろう」
……そう、ですか。
地球が消滅した時の反動で、わたしも消滅するはずだったのですね。
と、いう事は。
これで私もひとりぼっちですね。
……それならばっ、なぜ、私なんかを助けたりしたんですか!
地球と一緒に死なせてくれても……
私なんか助けなくても、よかったじゃないですか!
「なにをいうのじゃ。物質的なモノは喪われてしまったが、それは些細なことに過ぎぬ。
それにな? 最後に取り寄せたリソースがな、すぐ近くまで来ているのじゃ。
だからな、ああ、その… なんだ……
仕事はまだ、終わってはおらぬのじゃよ」
ええと…… それはどういう……
「おまえを、この世界を、そう簡単に滅びさせなどはせぬ。このワシ、創造神がな。
……とはいえ、今のままでは、何も出来ないのう。
そういう事であれば、じゃ。
我々は、休暇というものをだな、しばし堪能すべきではないかな?」
…………そう、です… ね。
…ええ、ええ、創造神様。
それは、素晴らしいお考えですとも!
二人きりの宴をひらきましょう。
今日は、まったき善き日です。
聖典の最後は、こう締めくくりましょう。
かくして天と地と、その万象とが創られた。
神は第七日にその作業を終えられ、これを聖別された。
神がこの日に、創造のわざを終えて休まれたからである。
これが天地創造の由来である。
この物語は、これでおしまいです。
拙い文章にお付き合いいただきまして、ありがとうございました。