神は自分のかたちに人を創造された(その3)
ヘルマです。
初めて聞いたビープ音もそうですが、このエラーは初めてみるタイプです。
すごく気になっるので、お昼ごはんが進みません。もぐもぐ。
創造神様は、わたしの代わりにグ・エディン・ナに行きました。完熟バナナを収穫するのだとか。
お食事もそこそこに、スキップしながら出かけてしまいました。
食器も片付けましたので、とっととエラーを片付けてしまいましょう。
┃
┃fatal error: 致命的なエラーが発生しました。
┃OK
┃
┃Command ? : _
┃
致命的なエラーのようですね。これは放置できません。
一般的には、最後にエラーなしだった状態まで遡って、チェックすることです。
最後に与えられたのは、欲望ですね。頻繁に使っています。
ファイルサイズも増えています。とりあえず、これを最初のころのように……
┃
┃Command ? : UNDO DESIRE
┃fatal error: 欲望は元に戻せませんでした。
┃ファイルは自我によってロックされています。しばらくしてから、もう一度実行してください。
┃OK
┃
こしゃくな! それなら自我を停止… あれ、出来ない。プロテクトがかかっている?
ああ、システムファイルの一部ですか。
それでは、タスクマネージャーを立ち上げて、強制終了… おっけー
あらら、勝手に再起動しちゃった?
かくなるうえは強制削除です。システムファイルなら、あとでリカバリーできるはず。
┃
┃Command ? : DELETE FREEWILL
┃fatal error: 自我を削除できませんでした。
┃このファイルは隠しファイルかシステムファイルが開いているために削除できません。
┃処理をキャンセルするかヘルプを参照してください。
┃OK
┃
えええええ? ウソでしょおぉ?
こっちのコントロールを受け付けないって、どゆこと?
勝手に動いてるとしか思えないわね。プログラムの暴走、ってやつですか。
ええと… 落ち着け、わたし。まずヘルプを参照しましょう。
┃
┃Command ? : HELP
┃欲望は元に戻せません。 このファイルはおそらく自我が開いています。
┃自由意志が削除できません。
┃このファイルはおそらく隠しファイルかシステムファイルが使っています。
┃処理をもう一度トライするか、処理をキャンセルするか、プログラムを終了してください。
┃OK
┃
創造神様ぁ、助けてぇ!
わたしの手には負えませんよぉ!
「なんじゃ、騒々しい。致命的なエラー? どれ、見せてみよ。色々とヤヴぁい事になっておるな。
アーダマー達は、色々とやってくれるわ。
何がって? ワシの言いつけを破って、あやつめ、バナナを全部、食ったんじゃ」
それで、手ぶらで戻られたのですね。ご愁傷様です。
なぜ、創造神様の言いつけを破ったんでしょうね。
ひょっとして、あれですか。農作業がキツくて、ついつい手が伸びてしまったのでは。
農作業は、他ならぬ創造神様の命令ですから、頑張り過ぎたのかも知れませんね。
「バナナの実は目立つからのぉ。欲望に負けてしまったか……
あれは知恵の実とも呼ばれておっての。食べれば善悪の判断くらいは出来るようになるのにのぅ。
今ではやりたい放題じゃ。
2人を探し出して説教してやろうと思っておったんじゃが、どうにも見つからん」
調べてみましょうか。
「うむ、やってくれい」
┃
┃Command ? : SEARCH GARDEN.EDN FOR ADAMAH
┃見つかりませんでした。
┃OK
┃Command ? : SEARCH GARDEN.EDN FOR LILITU
┃見つかりませんでした。
┃OK
┃
どちらも、グ・エディン・ナには居ませんね。創造神様が探しても見つからないはずです。
どういう事でしょうか。まさか不慮の事故でも?
それなら、コントロール不能になる事なんて無いはずです。
この状態では、探し出すことは無理です。どこに行ったのでしょう。
今日の聖典。
ヒトとその妻は、日の涼しい風の吹くころ、園の中に神の歩まれる音を聞いた。
そこで、彼等は神の顔を避けて、園の木の間に身を隠した。
神はヒトとその妻に呼びかけて言われた。「あなたたちはどこにいるのか」
彼等は、神の呼びかけに答えることをせず、その身を園の外においた。
神はエラーを見て、深く悲しまれた。
……なんてこったい。




