神は大空と海に住まう者をを創られた(その3)
ワシ、創造神。
ヘルマを地上に遣わしたら、わずか10分ほどで帰ってきおった。
今は、隅の方で結界に籠っておる。
……まあ、放っておけばそのうちに出てくるじゃろ。
何があったかのぉ。たしか、あのあたりに送り込んだはず……
あたり一面に、色々と散らかっておる。ほほう、食肉植物と格闘したのか。
とくぞ食われなかったものよ。 ふむ、カニもいたのか。カルキノスにしては大きいのう。
あれを持ち上げるのにクレーンが要りそうじゃ。
あの堅い殻を粉砕とか、いつものヘルマからは考えられぬ膂力じゃ。
「……お風呂に入ってきます。覗いたら…」
やかましい、イカ腹の分際で色気付きおって。
風呂は沸かしてあるから、とっとと身体を流してこんか。
回復ポーションを飲むのを忘れるでないぞ。
………
……
おお、ヘルマか。さっぱりしたようじゃな。
それで、下界はどうであったかな。
素晴らしい出来栄えであったじゃろう?
「たしかに、すんげー世界でしたよ。見たことが無い生き物がたっぷりです。
海の中では触手の塊の群れが、巨大なクジラやタコと出会いがしらに大喧嘩。
陸地では歩き回る食肉植物とかが闊歩していて、鳥に喧嘩を売ってましたよ。
この調子だと、虫とかもヤバい事になっていそうですね」
ふむん。
ヘルマは自覚していないようであるが、素手で闘うような事があっても、なかなかに強い。
それに、魔法も使えるようにしてあるからのう。
以前に創った世界の住人達の基準からすれば、達人級のツワモノと言うてもよいほどじゃ。
とはいえ、ワシでも予想していなかった生物が一気に出現しているのも事実。
可能性の総当たり進化、とでも言うべきであろうか。
やつらの異常進化は、生物兵器じみてきておる。
万が一、知性のカケラでも身に付けようものなら、大変なことになりかねん。
そうなったら、あれを地球の外に出すわけにはいかぬ。
いちおう、バックアップだけは取っておくとしようかの。
この容量ならば、手持ちの記憶結晶に入るな……
┃
┃Command ? : BSAVE "E:Messiah.BIN",&H……
┃OK
┃
┃Command ? : _■
┃
これでよい。
かつてどこかの世界の賢者が『まめなセーブはゲームを救う』と言ったが、名言であるな。
ここまで順調だったから、バックアップを取るのを忘れておったわい。
まあ、よいか。
「お昼ご飯のオムライス、まだ食べてなかったんですか? 冷めますよ」
んっ? ああ、すまんのう。ようやく区切りがついたのでな。
さっそく食べるとしよう…… ぶふぉっ!
野菜を細かく刻んだものしか入っていないではないか。
さっき地球で狩ってきた食肉植物?
毒抜きは済ませてあるから大丈夫とな? ふ、ふふふふふ。
ヘルマよ。ちょっとOHANASHIしようか。
……………
………
……
下界の生物バランスが、良くない方向に傾いておる。
今更、手を加えようにも、あれでは手を入れる事もできぬ。
かと言って、放置だけは絶対に許されぬ。うむむむむ……
うがーーーーーーーーー
「ちょ! 創造神様、何をするおつもりですか!?
それ、星のかけらじゃないですか。あの時に片付けたんじゃないんですか?
わかってます。創造神様の掃除って、四角い所を丸く拭くって感じですから。
隅の方にでも残ってたんですよね。
って、地球にぶつけたぁ?」
星のかけらとはいえ、直径10キロくらいの小さなモンじゃ。
当たっても大した事にはなら… なっちまったのぉ。
大地震と津波と… わはは、火山が噴火しまくりじゃ。
こりゃあ、ちょいと派手じゃのう。
陸上生物は半分くらい、海洋生物のほとんどが死滅する程度か。
まあ、この程度なら気にすることもあるまい。
これで生物バランスが整うであろう。
めでたくもあり、めでたくもなし、じゃな。