第十話
闇夜達は目を疑う光景に出くわした。
この真夜中に大勢の人が往来にいるだけでなく、人が人を襲っているのである。
先程まで光に吸い寄せられるように彷徨っているだけだったのが、今度は凶暴化している。
まるでこの世の終わりのようである。
「クソ! なんでこんなことになっちまったんだ!? これが民族をも抹殺する力というものなのか?」
闇夜達はとにかく人にぶつからないように蛇行運転をして、それでも人にぶつかりそうな時はスタンスティックで昏倒させるにとどめた。
細い道は逃げ場がなくなるので、可能な限り大きな幹線道路を使った。
そうしてどうにか東京タワーへとたどり着いた。
東京タワーは現在再開発中で、大きなフェンスに囲まれていた。そのフェンスを乗り越えるのは左足の使えない闇夜にとってはかなり骨の折れることだったが、スケキヨの手を借りて、なんとか乗り越えた。そのフェンスがあったおかげで、人を襲うようになった人々の侵入を防ぐ時間を稼ぐバリケードの役割を果たしてくれそうだったが、走光性を持った彼らは明らかに東京タワーに集まっており、バリケードを突破してくるのも時間の問題だった。
東京タワーの敷地に入ると、都内の五方向から来た光の柱が下に落ちていて更にもう一本光の柱が立っていた。
その合計6本の光の柱が集まっている場所にいたのが、裕子だった。
そしてその横に立っていたのが、加藤六輝と山の辺九美であった。
そして、東京タワーに来ると、闇夜とスケキヨの体からもエネルギーの柱が上がり、エネルギーの柱は8本になった。
「よく来たなあ、月島闇夜の小僧に青沼スケキヨ」
「加藤、貴様、裕子に何をした!? 何をするつもりだ!?」
「だからよー、おめえ、裕子裕子って馴れ馴れしいんだよ! おめえはこいつの彼氏かってんだよ!」
六輝は空気が震えるような衝撃波を放った。それは闇夜の頬を切って一筋の血を流させた。
「この力で何処かの民族でも消そうとしているのか?」
闇夜は頬から流れる血を拭いながら尋ねた。
「民族を消すぅ? ヴァカかおまえ! 言ったろ? 僕はヘイフォスみたいなそんなクソどうでもいい使い方しねーって。人の話聞いてね―のかよ? こいつの力はそんなもんじゃない」
「何!?」
「その前になんでお前にあちこち走らせたか、教えてやるよ。お前とスケキヨもな、他の6人と同じようなエネルギーを持った人種だ。因みにお前には『考』、スケキヨは『悌』の力が備わってる。闇夜が『考』ってのは笑えるよな。こんな浅はかな奴が『考』なんて。ハハハ」
「なんだって?」
「純日本人が特殊能力を持つなんて話はおとぎ話以外の何物でもない。それを信じていた極桜会の連中は本当におめでたい奴らだよ。ハハハ。もっと別のなにかが起因しているのさ。その証拠に純日本人でもない月島闇夜や青沼スケキヨに特別な力が備わっている。尤もその原因については目下調査中だがね。大方の学者が主張している、国土起因説が近いと思うがね。まあそんなことはクソどうでもいいさ。僕にとっては将棋の駒に過ぎないよ。
「それが、俺達にやらせたこととどう関係あるんだよ?」
「ククク、僕はね、そういう能力をもったお前らに5人に接触させることによって5人のエネルギーの解放をさせたんだよ。5箇所に一人ずつ置き、お前らに五芒星を描くように巡回させることによってエネルギーを開放させその中心地であるここ東京タワーに集めるように仕向けたわけだ。それを釣る餌を兼ねて『忠』の力を持つ東雲裕子を東京タワーに置いた。そしてあとはお前ら二人が助けに来るのを待つだけ。つまりお前は最初から負けてたわけだ。ヒャヒャヒャヒャ」
「貴様!!」
「このエネルギーの柱は人間の精神に様々な影響を与えるらしくてな。心の弱いものは凶暴化して人を襲う『人鬼』になったりするらしい。そういうのはこの光の柱に吸い寄せられるから、早くなんとかしないとここも危ないな」
「クソ、他人事みたいに……」
「じゃあ、僕の目的を明かすよ。お前、この東京タワーが地球のへそだってこと知ってたか?」
「地球のへそ?」
「そうだ。この東京タワーは、地球上の龍脈、つまり気の流れるルートが全部集まるところなんだ。東京タワーが建てられた理由は電波塔なんかじゃない。日本が戦争に負け、不安定になった龍脈の力を抑えると同時に、その力を最大限に活かし、高度経済成長のために地球の力が利用できる場所を探した結果ここに建てられたのだ。尤も、不自然な使い方をしたから公害なんてものが生まれちまったがね。まあそれはいいとして、もしそこにこの強力な呪術的エネルギーを伝わらせてみればどうだ? その膨大なエネルギーで地球は原始の時代まで遡らせることができる。そうすれば地球上の全生物はおろかもちろん僕や九美の肉体も死滅するだろう。しかし、僕らの遺伝子はそう簡単にはなくならない。そして、僕らの意思はその遺伝子の中に息づくはずだ。原始生命から地球はふたたび始まるが、そのときには既に僕らは存在することになる。そして僕らの意思は『次の』地球では永遠に君臨し続ける神になることになる。命を弄んで僕らのような存在を産んだ奴らには最高の復讐だと思わないか?」
「は?」
「なにそれ?」
「バカじゃないの?」
「お前、そんなことのためにこんなに大勢の人たち巻き込んでんの?」
「寝言は寝てから言えよ」
「それのどこが高邁な目的だって言うんだよ?」
「そんなことして嬉しいか?」
「幸せか?」
「気持ちいいか?」
「ほんとに満足か?」
「誇りに思えるか?」
「おまえ、死ぬんだぞ?」
「おやっさんやマリィさんが喜ぶと思うか?」
「おまえ、もしかして、自分だけが不幸とか思っているんじゃねえだろうな? お涙頂戴か? とんだやつあたりもいいとこだぜ。いいか? 教えてやるぜ。お前はな、確かに力はあるのかもしれない。でもたった一度の失敗で逃げ出して全部他人のせいにして癇癪を起こしているただの負け犬だ。自分のことを顧みず、ただ世間を恨み、ジャック・ザ・リッパー気取りで周りに刃を向けて迷惑をかけてるのはただの負け犬っていうんだよ!」
闇夜の言葉を一通り聞いて六輝はひたすら静止していた。
「俺に……」
「どうした? なんとか言ってみろよ」
「俺に……説教をするなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
六輝はエネルギーの柱を一本投げてきた。闇夜は強い雷撃に撃たれたかのようなショックに襲われた。
スケキヨは素早く布袋からバラのはなを十個ほど取り出して闇夜に投げた。すると、バラの花は闇夜の頭上でまわりだし、闇夜の左足の不具は回復した。
闇夜はすぐに雷撃から抜け出し、手印を結び呪文を唱えた。
「臨兵闘者皆陣烈在前!」
すると闇夜の杖がチェーンソーに変化した。
闇夜のチェーンソーは見た目より軽く、片手でも制御できるくらいであった。
スケキヨは更にクチナシの花を闇夜に投げて呪文を唱えた
「Let there be light !」
すると闇夜のスピードが20倍速になり、さすがの六輝も動きが負えなくなってきていた。
闇夜は六輝と九美二人を同時に相手をしても押している状態だった。六輝と九美は次々と手足が切り取られていった。しかし、彼らの細胞回復能力には目をみはるものがあり、いくら切ってもキリがないという状態であった。
ここで六輝と九美は一旦闇夜のいるところから離れた。そして闇夜が六輝たちを追ってくる直前に、サイコキネシスで8本のエネルギーの柱を手繰り寄せ、それで闇夜を捕縛した。
捕縛された闇夜は為す術もなく、抜け出そうにも締め付けが強くて抜け出せる状態ではなかった。そして闇夜自信からもエネルギーの柱が出て、それも締め付けを強くした。
そして、六輝はこれらのエネルギーの柱8本を使って先程の雷撃8本分を闇夜に流した。
「ぐあああああああああああああああ!!!!!!!!!」
闇夜の頭からは白い煙がモクモクと立ち昇っていた。スケキヨは何とか助け出そうと色んな花を試してみるが、全く効果がない。
「待ってろ、そこのチビ、こいつがオーバーヒートで爆発したら、次はお前の番だからな。ヒヒヒヒヒヒヒヒ」
闇夜がもう爆発してしまう、その直前に闇夜を縛り付けていたエネルギーの柱が全て闇夜の体から剥がされた。
気がつくと闇夜達の後ろにはフェンスを越えてきた仁・義・礼・智・信の5人が手中にエネルギーの柱を入れながら立っていた。
「危ないところだったみたいだな」
「やはり来てよかった」
「人命救助をやるってのはやはり粋なことよね」
「恩返しくらいはしないと」
「「左手」の分くらいは働かせてもらう」
5人共先程助けた当初の憔悴しきった状態とは比べ物にはならないほどはつらつとしていた。憔悴しきっていたのは単に栄養不足で、ブドウ糖を補給しただけで回復したそうである。栄養不足だったため抵抗力がなくなり、自分のエネルギーをつなぎとめておくことができなかったようなので、現在漸くそれを取り戻した次第というわけである。
「闇夜くん、これを彼女に」
『仁』から裕子のためにブドウ糖と気付け薬を貰った。闇夜は裕子のもとに走っていきそれを飲ませると、裕子も復活した。
「闇夜……あたし……お荷物……」
「そんなことない! よかった! 無事でよかった!」
闇夜は裕子の無事を確認し、束の間の平安を感じるのであった。そして再び今対峙している敵にフォーカスするのであった。
「さー、これだけ役者は揃ったわけだ。あとはお前がやられる番だ。お前らなんかあと5ページ以内にやられて即退場だぞ!?」
「クッ、何をわけのわからんことを言っているんだ? 石ころがいくつ集まってもダイヤには敵わない。ほざけ!」
「裕子はあの山の辺とかいう女をやってくれ。女相手と言うのはどうもやりづらい。逆にオレは加藤なら容赦なくぶちのめせる。頼むぜ」
「わかったわ」
闇夜は裕子にご神木で作られた木刀を渡した。
木刀にエネルギーの柱が宿り、青白い炎を灯した。
一方の九美はすでに臨戦態勢をとっており、両手には鉤爪がはめられていた。
裕子と九美はお互いに向かい合って走っていく。裕子が青白い炎をまとった木刀を振り下ろすと、九美は両方の鉤爪でそれを受け止めた。
「あんた、前からムカついてたのよね」
「お互い様だわ」
火花をちらしながらお互い押し合っていたが、九美が目を見開くと見えない斥力場が発生し、裕子は吹き飛ばされた。
裕子はもんどり打って背中を叩きつけられると、肺から空気が強制的に押し出され咳き込んだ。
裕子は呼吸困難から漸く脱すると木刀を地面につきたて立ち上がった。
「コイツラが反則技使うのを忘れてたわ。ならばこちらも反則技を使うまでよ」
裕子は独り言をいうと、木刀を背中に差し手印を結んでぶつぶつと呪文を唱えだした。
「狐火よ!」
裕子がそう唱えると、青白い炎が九美を取り囲み次第に狭まっていった。九美は逃れようと上空へ高く舞い上がった。
「甘いわ!」
すると青い炎は上空からも九美に襲いかかっていた。
「ぎゃーー」
青白い炎が九美の顔面に直撃した。炎は九美の髪の毛や皮膚を容赦なく焼き、あたりには髪の毛の焦げる独特の匂いが立ち込めた。
九美は断末魔の悲鳴を上げその場に倒れた。
その様子を見ていた裕子はひとまず安堵した。
「案外あっけない最後だったわね」
裕子が九美に背を向けてその場を立ち去ろうとすると、一瞬背中に激痛が走った。
九美はまだ生きていて、裕子にその鋭い鉤爪で一閃したのである。
「このあばずれ! よくもこんな真似をしてくれたわね」
九美の顔はひどい火傷を負い、髪の毛もチリチリになっていた。しかし驚異的な細胞復元能力でみるみるうちにその火傷は消えていき、髪の毛もストレートヘアーに戻っていき、もとの美しい顔へと戻っていた。
背中から不意に斬りかかられた裕子は自分の迂闊さに反省しながらもすぐに立ち上がり戦闘態勢をとった。そして九美に左側から切りかかっていった。
しかしいくら切りかかっていっても九美の周りの見えないバリアに阻まれて、青白い炎に包まれた木刀が九美の体に達することはなかった。
そのかわり、九美は鉤爪を構えることもなく前へ歩いていき、裕子を睨みつけては見えない力でふっとばしていた。
それでも裕子は果敢に九美に木刀を振り下ろしていった。
すると『忠』のエネルギギーの助けもあってか、九美のバリアにヒビが入り始めた。
焦った九美は、バリアが割れた瞬間を狙って鉤爪を裕子の脳天に叩き込んでやろうと考えていた。
そしてついに裕子の木刀がバリアを粉々に砕いた。
その瞬間を狙って九美は鉤爪で裕子を串刺しにしようとしたが、裕子はバリアを砕くと同時に煙幕の術を使っていて、裕子は木刀を残し姿を消し、九美には裕子を見失ってしまった。
「どこだ……」
周りは全く音もせずただただ視界が悪く、九美は次第に追い詰められていた。
九美は不意に空気の揺れを感じた。
「そこだ!」
しかし九美は一歩遅かった。上空から舞い降りた裕子は匕首を九美の脳天に突き立てた。九美の鉤爪は裕子の頬をかすった。
九美の背後に降りた裕子の頬から血が一筋伝う。裕子はそれを拭うとぺろりとなめた。
裕子の背後で、九美は右手の鉤爪を上空に掲げたまま全く動かなかった。
「ふん、図体がでかけりゃいいってもんじゃないんだから」
一方闇夜の方はスケキヨが先程ブーストに力を使いすぎて、不具を出さないようにするだけで精一杯で苦戦していた。
六輝は凄まじいスピードで闇夜を翻弄していた。
「オラオラオラ、さっきの勢いはどうした? 5ページ以内に終わらせるんじゃなかったのか? ホレ!」
「かは!」
六輝は右手を切り落としていたが、凄まじいスピードのボディブローで、闇夜の肝臓は悲鳴を上げていた。
「オン!」
闇夜が手印を結んでそう唱えると、カフグリップ付きクラッチは鞭へと変化した。
すかさず闇夜は鞭を六輝の左腕に巻き付けた。それと同時に十万ボルトの高圧電流を流した。
「あばばばばばば」
六輝は激しく痙攣し頭から白煙を上げて倒れた。
「はあ、はあ。手こずらせやがって」
闇夜はそう言い、振り返り数歩歩くと倒れてしまった。タイムリミットだ。スケキヨを見ると肌は真っ青で、体中にヒビのような模様が入っていた。スケキヨ自身が呪いの瘴気を貯めておく限界に達しており、闇夜の左足の不具を受け止められなくなっていた。闇夜の杖ももとの杖に戻ってしまっている。
「危なかったな……」
「何が……危なかった……の……だ?」
闇夜の後ろでくぐもった声がした。
六輝はまだ生きていた。
六輝の目は白濁しており、体中をデコボコとさせて体組織を再生しながら立ち上がった。髪の毛は真っ白で逆立っていた。左腕は爆発したかのように枝分かれして、一部が硬質化し鋭い刃物と化していた。
闇夜は立ち上がろうと杖をついた。しかし六輝の伸びた左腕にスパーンっと杖をはねられて転ばされた。
六輝はジリジリと闇夜の方に進んだ。裕子は九美と死闘を繰り広げている最中だった。
闇夜はなんとか杖の電撃ボタンで威嚇したが、六輝は全く意に介さない。
「かっこ悪いよな、こんなやられ方。ジタバタあがきながら八つ裂きにされるんだからな。無駄にあがかないでいっその事あっさりやられちまったらどうなんだい? ぼうや。見てて見苦しいぜ」
そして六輝は闇夜を公衆便所の隅まで追い詰める。
「てめえにふさわしい死に場所だな。念仏を唱えな!」
六輝はそう言うと刃のように変形した左腕を闇夜の首に振り下ろした。
ところがその左腕が闇夜の体に触れることはなかった。
それどころか闇夜の体が夜光塗料を塗った時計の文字盤のように淡く光っている。それどころか、闇夜の左足が動いている。闇夜が杖を使わず自力で立ち上がった。これは一体どういうことなのか?
六輝ははっとして金網の外に目を向けた。
そこにはコードネーム仁義礼智信の五人が手印を結んで読経している姿があった。彼らの力が闇夜に流れ込んでいるようだった。
「このやろう!」
六輝は闇夜に念波を向けた。
しかしその念波は闇夜に弾き返されてしまった。
「うおおおおおおおおおお」
六輝は最大出力でテレキネシスを闇夜に向けた。
「はああああああああああ」
闇夜はそれに応えるように応戦した。
二人の間で念波の押し問答が続き空間が歪んだ。どちらも互角の力で、勝負がつかない。
闇夜は呪文を唱えるとカフグリップ付きクラッチが手元に引き寄せられ、レーザーブレードへと変化した。
闇夜がテレキネシスとともにレーザーブレードで六輝に切りかかった。すると六輝は硬質化して鋭い刃物と化した左腕で応戦した。
一閃、二閃と刃を交えると両者は激しい鍔迫り合いとなった。
「むうううつうううきいいいいいいい!!!!!」
「あんんんんんやあああああああああ!!!!!」
両者一向に引かぬまま押し問答が続くと思いきや、闇夜はもう一本レーザーブレードを取り出した。二本のレーザーブレードを六輝の左腕に当てると、レーザーブレードの刃先はチェーンソーのように回転しだした。
「なにィ?」
すると六輝の左腕は豆腐のように切れていった。
「おああああああああ」
そしてすかさず闇夜は二本のレーザーブレードを六輝の首に当てた。
「おごごごごごごごおっごごごごごごごおごご」
六輝は大量の血飛沫をあげ、白目を向きながら血反吐を闇夜に吐きかけた。
こうして六輝は漸く沈黙した。
「ったく、もうちょっとスマートに行かねえもんなのか? 我ながら嫌気が差すよ」
と闇夜が顔にかかった血を拭いながら安心していると、いきなり六輝の首が闇夜に飛びついてきた。
「はははははは。バカめ。僕を見くびるなよ。言ったはずだ。僕は自分の遺伝子そのものに意思があるってことを。まずはお前に肉体を喰らって新しい体を手に入れて、それでからまた新しい相棒を……」
その時横から銃声がした。
マリィが拳銃で六輝の頭に例の特製の弾丸を撃ち込んだのである。
第二機動捜査隊の連中と藤原が光の柱の立ち上っている東京タワーに駆けつけたのであった。
六輝は一瞬何が起こったかわからなかったが、金網の外で硝煙の立ち上る拳銃を構えていたマリィを見つけ、漸く事態を飲み込んだ。
「え? ママ? うそ……だよね? あ、熱い……痛い……僕、死ぬの? やだ……死ぬの怖い……死にたくない……怖い……あああああ……ふぎゅ」
「自分の撒いた種は自分で刈り取らなきゃならないのよ。ナンバー99はできなかったけど。ほんとにごめんね」
六輝は完全に沈黙した。マリィは涙をこぼした。
六輝の首はドロドロと溶けていき、最後には赤茶けた液体になってしまった。
瀕死だったスケキヨは裕子の懸命の介護の甲斐があり、呪いの瘴気を体外へ開放することができ、もとの健康体に戻った。
こうして加藤六輝ことナンバー66と山の辺九美ことナンバー99のケースは幕を閉じたのであった。
しかし、凶暴化して『人鬼』になった人々をどうすればよいのか? という課題が残されていた。
明日で完結です。
17時頃アップします。




