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日常断片  作者: 藤野 羊
34/40

ぱっとしない

冬部と棗(冬部視点)

「不味いからやるよ」

 棗から放り投げられたペットボトルには、きらきらと透き通る朱色の液体が揺れていた。


 水音を立てて冬部の手に収まったボトルの中身は、八割以上残ったまま。

 ほんとうに一口飲んだきりという風情だ――代わりに飲めという意図は察せるものの、とりあえず幼馴染()に確認する。

「お前のその、たまに不味いもん寄越してくるのは何なんだよ」

さくは馬鹿舌だから気にせず処理するかなって」

「てめえ」

「僕は微妙でも、君には好みかもしれないし。美味しく飲める人間に消費される方がこいつも本望でしょ」

「適当なこと言いやがって……」

 薄いプラスチックのラベルには疲労回復と銘打たれ、どうやら身体によいらしい小難しい成分が羅列されている。

「スポーツドリンクか。何の味だ? これ」

「パイナップルとアセロラ」

「何だその組み合わせ」

「僕に聞くなよ」

 それはもっともなのだが。

 とりあえず蓋を開けた冬部は、その不審なドリンクをがぶりと一口に飲みこんだ。わりと喉が渇いていたので。


 ベースはアセロラの酸味と甘味だ。だが薄い。

 かなり遠くに、パイナップルの丸っこい甘さを感じる。缶詰入りの果物はこんなもんだったかと、冬部は記憶をあらためた。

 全体的に酸味よりも甘みが優って舌に残る。

 やけに人工的な甘さの既視感は、かき氷のシロップだった。けれどーー注釈を入れるなら、シロップの中でも最後の最後。溶けきった氷にだいぶん薄められた、半端に甘いだけの色水の味。

 どちらをも味わえるが、どちらの味もぱっとしない。


「……不味い」

「だろ?」

「だろ? じゃねぇよ。責任もって飲みきれ」

「やだ」

「てめえ」


※実在しない商品です

仮に似た飲料が存在したとしても、当該製品を中傷する意図はありません

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