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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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TF

掲載日:2017/02/12

 喉の奥から悲鳴にも似た呼気音を出しながらエルは目覚めた。辺りはまだ暗く、空は雲に覆われているのか星明り一つない。身体が熱い。病気にでもなったかのようだ。じゃり、と地面の砂を踏みしめながらゆっくりと立ち上がる。脳裏に

へばりつく、母親の変わり果てた姿。まるで夢だと頭が認識しているのか、ついさっきの出来事だったはずなのに、その光景は既に記憶の中でぼやけている。最期、自分に向けてきたあの黄色い瞳。

 記憶の中でそれと目が合った瞬間、エルは平衡感覚が一気に崩れ始めたのを感じた。天地がぐにゃぐにゃになったかのような感覚襲われながら小石の散らばる地面へと倒れていく。暗闇の中、いつ地面に身体がぶつかるのかが分からずにやたらと時が進むのを遅く感じながら。

「ひ、いっ、……!」

 地面に右側部をぶつけた瞬間、エルは息を詰まらせながら身体を仰け反らせた。しかしそれは身体を打ちつけた痛みによるものではなかった。それよりももっと強く、もっと響く、神経を直に引っ掻かれたような、我慢なんて到底出来ない痛み。

 エルの喉は味わった事のない痛みに強張り、呼吸をしようとする度にしゃくり上げるような声を漏らしながら必死に酸素を取り込む。身体を捩らせる毎に砂がじゃりじゃり音を立て、時折口に入ってその不快な食感を口の中で残していく。

 口の砂を吐き出す余裕もなく、身体の芯を突き上げるような激痛が胸から全身へと駆け巡る。身体が反射的に全身を硬直させ、痙攣させる。胃の奥から急激に何かがせり上がる感覚にエルは反射的に手で口を覆いながら上体を起こした。

 急に頭を上げたからか、頭からざあっと血の気が引くのを感じながらエルは震える手で覆われた唇が、普段味わう事のない硬い何かに触れた。暗闇の中で真っ暗な視界にも関わらずエルは思わず目の前で手を広げ、裏表させる。当然、何も見えない。ただ自分の手を自分で動かす感覚だけが伝わる。握り締めた時、また皮膚が感じ取る、殻のように硬いそれ。いや、硬いもの同士がぶつかっている――、

 みしぃ、と身体が軋む音が体内から直接耳に響くと同時にエルは激痛に唸りながら蹲った。同時に胃が痙攣し、我慢も出来ずにえずいたかと思うとエルは両手で胸を抑えながら酸っぱいそれを口から吐き戻した。半端に口が開いたままなのか、嘔吐した後も唾液が顎をじわじわと伝っていく感覚。

 ふと、どこからか甘い香りがする。

 そしてまた意識を奪いそうな程の波が押し寄せ、暗闇の中でエルの視界に火花が散る。まともに言葉も出せない。言葉……? エルはふと何かを喋ろうと試みたが、結果が出る前に背中と腰部を内から槍で突き刺したかのような味わった事のない痛みにその喉から咆哮が上がった。

 エルはめちゃくちゃに襲い掛かる苦痛に思考が止まり、意識は濁っていく。闇の中、自分の身体が分からなくなっていく。体内から何かが成長している。四つん這いになって堪える。布が破れていく音がする。震えている。身体が震えている。

 歓びに、打ち震えている。


 次の瞬間だったか、それから何分も経った後か。エルは向けられた灯りに照らされた。


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