10.先を夢見ても良いですか? side とある少年の殺し屋
シリウス兄ちゃんが、任務で森にいった。なんでも勇者の女の子を連れてくるらしい。
どうせ、箱入りの雑魚だろ。期待するだけ無駄だ。高い金で買う意味あるんだか。
「はぁーい!おじゃましまぁーす」
っつ!!全く気配を感じなかったぞ!
「むー、ねぇ、しーちゃん。こんな警戒した目。子供の目じゃないよ?」
その不思議な女は、不機嫌そうに、足元の黒猫に話しかける。
「そうするしか、生きる方法がなかったんだ。しょうがないだろ。」
「は?」
黒猫からは、シリウス兄ちゃんの声。
「ど、どうなってんだ?」
「初めまして。私はシスル。始祖の魔女よ。」
は、はぁ!?ま、魔女!しかも、始祖だって!
「ごめんね?私のミスでシリウスのことを使い魔にしちゃった」
「蘇生魔法をこの目で見れたんだ。感謝はあるが、怒りはねぇよ」
蘇生魔法……頭が痛くなってきた。というか、そんなすごい人が何の用だろう?
「で、お詫びに貴方達を解放してあげる。」
「……は?」
いくら、魔女でも隷属の首輪をどうにか出来るのか?
「訳が分からないって顔。そこは問題ないかな。問題は別のコト。ねぇ、ここから出ていって貴方達生きていける?今までと違う生き方を選択できる?」
唐突なようで、少し考えれば分かる事だった。
「無理だ。俺達はこれしか知らない。普通が分からない。殺す事に忌避感を感じないから。」
事実だった。自分に害をなす存在なら普通に殺すし、主に仇なす存在は主を守る為に殺す。
「はぁ。あのね?嫌なら嫌っていうんだよ。知らないなら教えてって言うんだよ。我儘言えるのが子供の特権。私が聞いてあげる。どうしたい?このままを望むの?」
そんなこと……
「嫌だ!こんなところにいたくない!人体実験は嫌だ!痛いのはもう嫌なんだ!」
俺の心からの叫びを聞くと彼女は微笑んで
「よく言えました。」
ぽんぽんと頭を撫でられた。
涙があふれて止まらなくなってしまったが、彼女は汚れている俺の事を気にせずに抱き締めてくれた。
「生き方が無いなら探せばいい。見つからないなら作ればいい。明日、またここに来るからやりたい事を探しておいて。」
そう言って俺の頭をもう1度撫でると、部屋を出ていこうとする。
「あ、ありがとうございます!」
彼女は振り向かずにひらひらと手を振ると出て行った。
「……皆、やりたい事はあるか?俺は今、やりたいことがで̀き̀た̀。俺は魔女のねーさんにーー……」
はい。書き溜めが消えました。
気が向いたら、また作って行きます