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決意

何ヵ月経ったかもわかりませんね(汗

こんなのでも楽しんでいただければ幸いです。

―想等へ。今日はPTAの会合があるので帰りが遅くなります。お父さんも残業があるらしいので想等の分だけ作って食べてください。帰りにコンビニに寄るので欲しいものがあったらメールください。母より―


俺が学校から帰ってきてリビングへ行くと、部屋の真ん中あたりにあるテーブルの上にこの書き置きがあった。テーブルの後ろに置いてあるソファーに倒れるように俺は座り、ポケットから携帯を出しメールを起動させ、登録してある母さんのアドレスでメールを打つ。

「欲しいものは、ないから、俺には何も、買ってこなくていいよっと。」

そう慣れた手つきでメールを打って母さんに送る。

俺の親は俺が小さい頃から共働きをしている。父さんはこの街では2番目か3番目くらいに大きい会社の会社員で母さんは中小企業の事務職をしている。2人ともこの街では有名なところで働いている。だからなのか2人はいつも忙しそうだ。

父さんはいつも夜の8時あたりに帰ってくる。母さんはだいたい夜の6時ぐらいに帰ってくる。でも両親とも残業があったりして、時間にはムラがある。だから、昔は学校から帰ってきても家には誰もいないのが日常だった。

最初は寂しかったが、俺が1人のときは優器の家が面倒を見てくれた。優器の家はいつも温かくて、優しく俺を受け入れてくれた。優器のお母さんの料理はいつも美味しくて、特にハンバーグは絶品だったな。

そんなことを思っていたら昔の記憶が俺の頭の中いっぱいに流れこんできて、なにかもの悲しかった。

「今日はハンバーグでも作ろうかな…」

そう思って、勢いよく立ち上がり、材料を見に台所へ向かった。


ピピピピッピピピピッピ

部屋中に俺を起こすための音が響き渡る。俺はこの音があまり好きじゃないのですぐに止めた。この音は俺を夢から現実に叩き起こすいわば悪魔の音だからだ。

嫌な音が消え、布団の温かさを体全体に感じる。そしてその温かさがまた俺を眠りへと導く。

カーテンの隙間から日が漏れて眩しいが今はただ眠りたいんだ…。

「優器ー!起きる時間でしょー!遅刻しちゃうよー!」

下の階から母さんが俺を起こしている。母さんの声が頭で何度も反復する。俺は渋々寝るのを諦めベッドから降りて、下に行く。

居間に行くと、ここと繋がってる台所で母さんが弁当を作っていた。

「おはよう、優器。」

「おはよう。」

「朝ごはん出来てるから、食べちゃって。」

「うん。」

台所のテーブルには焼いたベーコンとスクランブルエッグが一緒に乗った皿と湯気が出てる白ごはん、それに玉子が溶いてあるスープが並んでいた。

母さんは3食どれか手を抜いたりはしない。いつも俺達の食欲を刺激するかのような料理を作ってくれる。

そういえば、昔は料理人を目指してたって言ってたな…。

そんなことを思いながら台所に行く。テーブルに着き、手を合わせて「いただきます。」と言い俺は朝ごはんを食べ始めた。時計を見ると7:33を指していた。家から学校まで20分程度だからゆっくり準備してられるな。

「そういえば母さん、日曜日空いた?」

そう俺が聞くと、弁当を作りながらもこっちを見ながら「うん、ちゃんと空けてあるよ。」

そう笑いながら返してくれた。

「よかった。」そう言って少しだけ残ってる朝ごはんをまた食べ始めた。


「いただきました。」

また手を合わせてそう言うと、「洗い物、こっち持ってきてくれる?」って母さんが言うったから俺は「わかった。」と伝えて洗い物をシンクに持っていった。

俺が洗い物を置くと同時に、母さんが作っていた弁当の蓋が閉まる音が聞こえた。それを弁当袋に入れて「はい!」と両手で持って俺に渡してくれた。「ありがとう。」と言って俺も両手で受け取る。


着替えを済ませ、荷物を持って下に降りる。

母さんは居間で仕事に行く準備をしていた。

俺は居間の入口から顔を覗かせる。

「母さん、行ってくるよ。」

そう言うと、いつもの笑顔で「いってらっしゃい。」と返してくれた。


靴を履いてる時にスマホの通知音が聞こえた。

左手でドアノブを持ち、右手でスマホを持つ。ドアは開けず、立ち止まってスマホを見ると想等からのラインだ。

ラインには、

ながこくっうはにる:海3優1海1優3想1優2海2想2

想3

と書いてあった。

何だ、これ?イタズラか?何かのメッセージなのか?わからない。会って本人に聞こう。

この事を頭の中で考えながら、学校への道を歩き出した。


俺達が通っている学校は出入口が1つしかない。店とかがある道路を進んでいくと大きなY字の分かれ道にあたる。そこを左に行くと、すぐに大きな真っ直ぐの道が出てくる。ここは一本道だから、学校専用のような道なのだ。

門が1つしかないうえに一本道だからいつも大勢の生徒が賑わっている。ただ、あまりおしゃべりに夢中になっていると自転車に轢かれる可能性があるから、周りに気を配っておかないといけない。まぁ、どの道もそうか。


コンビニに寄り道し、そのまま学校への一本道を俺は歩いていた。

想等のラインは既読スルーになっちゃったが、それ以上のラインが来なかったからやはり会って確認しよう。

俺は今一度スマホの通知を確認し、ポケットにしまった。

ふと前を見ると、なんだか髪の毛を気にしていじくってる海里がいた。

海里はいつももっと早く学校にいるはずだが、今日は寝坊でもしたのか?

小走りで海里に近づいて肩をぽんっと叩いた。

「おはよう、海里。」

そういうとびっくりした顔でこっちを見てきた。

「お、おはよう、優器。」

そういってまた髪の毛を焦っていじりだした。

どうかしたのか?俺の顔には…何もついてないし髪型だって…そういえば珍しく結んでるな。

「海里、今日はめずら…」

ぐうぅぅぅぅ

「………」

「………」

俺の言葉を遮るように鳴った。腹が。海里の腹が。海里は顔を赤くして「い、いまのはっ!ち、ちがうの!ちゃんとご飯食べたし、しょ、消化してる音だって!!」

何も言ってないのにあちらから語りだしちゃった。本人はまだ顔を赤くしながら下を向いて歩いてる。

う~ん、髪型、空腹、いつもと違う登校の時間。あっ!なるほど、そういうことか…

「海里」

「なっ、なに?」

下を向いたまま返事をする海里。

俺はカバンの中からさっきコンビニで買った袋を出して、海里に差し出す。

「これ、食っていいよ。腹、減ってんだろ?」

「えっ、だ、だめだよ!それ優器が食べる分だもん!私は大丈夫だ…」

ぐうぅぅぅぅ

「………」

もう半分泣きそうになってるな、海里。

「いいんだよ。これは休み時間にでも食おうと思ってたやつだし、弁当はちゃんとあるから。遠慮せず食え。」

「…あ、ありがとう…」

差し出してた袋を受け取り、その中からメロンパンを出して、袋を開けてメロンパンを頬張る海里。

「美味い?それ。」

「うん!すっごくおいしい!ありがとう!今度お礼するね!」

「パンぐらい、いいって。」

「ダメ!それじゃ私の気が収まらないから!ね?」

「わかったよ。それじゃあ今度勉強でも教えてもらうよ。」

そう言うと、自信に溢れながらも、優しい笑顔で

「まかせて!」

と海里は言った。


正門が近くなってきた。

すると海里の友達が門の前で話をしていた。

それに気づいた海里が「あ!美華と紫音だ!」

と呟いていた。

美華は海里ぐらいの長さの髪でいつも髪を下ろしてる子だ。いつも成績がずばぬけて良く、落ち着いている子だ。

紫音はショートの活発の子だ。美華とは反対で勉強はあまり得意ではないが、スポーツがすごい。

陸上部なのだが1年で1回二年の時に2回もの全国大会に出ている。走る力だけなら俺は勝てる気がしない。

3人は1年のときに同じクラスになり、それからずっと仲が良いらしい。

「あ、俺今日日直だった!悪い海里!先行っていいか?」

「うん、いいよ!思い出してよかったね。」

「あぁ!ありがとう!」

走り出そうとして少し進んで、言い忘れてたことに気がつく。

「海里!」

きょとんとした顔で俺を見る海里。

「その髪型、十分可愛いよ!朝時間がある時でもたまにはそれで来ればぁー。じゃあね!」

照れてる海里を後に、俺は走り出す。


「おはよう。紫音、美華。」

「お!おはよう!海里!」

「おはよう、海里。」

私達はいつもの挨拶を交わして、歩き出す。

「美華ぁ~。宿題見してよぉ~。たのむよぉ~。」

「ダメよ。それでは勉強の苦手な紫音のためにはならないもの。」

「そんなこと言わずにさぁ~。」

私はこの3人で過ごす時間が優器といる時間ぐらい楽しい。

他愛もない話。他人からからすればそうだけど、私達にとっては大切な1つの会話。

「美華の言う通りだよ。ちゃんと解いてやらないと力にならないよ?私達が教えるから!一緒にやろ、紫音?」

「わ、わかったよ…」

そうしてまた新しく3人の大切な会話が始まっていく。

「あ」

つい口に出しちゃった。あまりにも急に思い浮かんだから。ポケットからスマホを出してラインを見る。

「どうしたぁ~?海里ー?」

優器に想等のラインのこと聞くの忘れちゃってた。想等から来た謎のメッセージ。朝寝坊しちゃって急いで来たから考える時間なかったな。

直接本人に聞こうかな。スマホをしまって歩き出す。

「ううん、なんでもないよ!」

私達は正門を超え、学校の中に入っていった。


正門を超えた少し先で俺は学校を眺めていた。

俺達の学校は正門を通ると、中庭があり、その中心には大きな時計塔がある。青く塗装されていて、立派な時計だ。

中庭のすぐ左にはテニスコートがある。放課後になると、テニス部の人達が練習をしている。

反対側には駐輪場があり、駐輪場を通りすぎるとグラウンドがある。体育などでよく使ってる普通のグラウンドだ。一週250メートルあるこのグラウンドは多くの生徒の汗を吸ってきている。

俺もその1人だが、ソフト部や、陸上部ほどではない。

学校を眺めている俺を何人もの生徒が追い越していく。追い越していく生徒達は止むことがない。

俺達の学校にこんなにも人がいるんだと、初めて思った。

この学校に3年間も通っていて、こんなことを思うなんて思いもしなかった。

こんなことを考えていたら胸のあたりが苦しくなった。悲しみとも、寂しさとも違う感情が溢れてきた。こういうのをなんと言うんだろうか…。

知らない。わからない。感情を言葉で表すのがこんなにも難しいなんてことも初めて思った。

…?

何で俺は自分の感情を言葉で表そうとしたんだ?

俺の気持ちを誰かにわかってもらいたかったのか?

でもそれはダメだ。

誰にも俺の心の叫びを聞かせてはいけない。

もし聞けば、それは「混乱」と「恐怖」を呼んでしまう。

「何してんだ?想等。」

「!!」

「ど、どうしたんだ?」

あぁ、よかった。優器じゃない。

声をかけられて優器か海里じゃないかと思ったが違ってよかった。

「何でもねぇよ。」

「じゃあ教室行こうぜー。」

「ああ。」


優器、海里。お前達は…お前達だけは…


守ってみせる。


次から本格的にストーリーが進みます。

何ヵ月経つかわかりませんが…

今後ともよろしくお願いします!

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