第8話目━━それを略すとYMS!
人間の食せるものはなんでも食べれるネコテンの、とらが猫専用の飲み物しか飲まない理由は、
「味が微妙にマニアックだから」
らしいです。
好みの角度が繊細なんだな。
「じゃあ、にゃも、天界におつかいに行ってくるね」
今日は梅雨の時期だから、雨が降っている。
黄色いレインコート(猫用)を着用した猫の天使、ネコテンの“とら”は、あたし人間の女の子“万織”に、家の玄関まで見送ってもらっている。
「うん!いってらっしゃい!」
笑顔で手を振るあたし。
「お迎えに上がりましたぜ とら。」
なぜなのかとらを天界と人間界の行き来させる(運ぶ?)、役目をおっているのは、相変わらずシャリオッド━━通称シャリオ君なのでした。
あ、言うの忘れてたね。ちなみに、羽はみんな生えてない。
人間の姿そのものと同じ風貌なのだ。守護天使さんも。格好は、
「シャリオ、白い襟つきシャツにジーパン姿多いよな。白いシャツの中は黒か紺のVネックシャツだよな。にゃもも、そのセンスは良いとみてる。似合うよな、万織!」
「うむ。てかシャリオ君、スタイル良いよね」
「褒めてもなんもでねーぜ!」明らかに嬉しそうな表情で、左手を腰に手をあて右手で『グッド!!』の形にする、シャリオ。なぜかバチコーン☆と片目をつむる。
ネコテンは、「ヤングミートソース」というタレみたいなソースを摂取しないと、天使としてのちからが出ず、飛べにゃい。その他もろもろの猫の天使としてのちからも、これがないと湧かない。
ヤングミートソースを買いに、天界に行くんだってさ。
「あー。しっかしまー、ヤングミートは、どんな味なんだ?とら」
シャリオ君がとらに問う。
「ああ、なんかな、味お肉だ。ハンバーグ食べてるみたいな感じ。油加減は、普通だ。」
「とらのいう普通って、どういう基準?」
シャリオがまた問うた。
とらが答える。
「油の量=ツナ缶<ケントッキー<フュミチキ
正論だろ?ちなみに、ツナ缶の油は、にゃもきらない派だ。」
きれよ。心のなかで万織は密かにツッコミを入れた。
「ケントの肉もフュミリーマートの肉も、同じじゃねぇ?」
私が否定する。
「いいや、フュミマのチキンは、放っておくとすごい油出るから、ケントッキーより少しだけ油吸ってるんじゃないかなー。」
「ケント放っておくと、どうなるんだろうな?」
「さぁ?」
「にゃも、お腹すいてきたー」
ぐぎゅぐるるるぅー
とらの小さなお腹が破壊的な音を出した。
「ヤングミート、買いに行ってくるか。あ、万織も天界来るか?ついでに」
「……そんな商店街についでに寄ってくかのように言わないでください。」
天界!?行ったことねーぞ。
「俺の商店街は天界にあるからな。同じ感覚だ」
「万織も行こーよ!」
とらが万織を手で招く、が、黄色いレインコートの帽子がだんだんとさっきからずり落ちてきてて、とらの視界はフードに妨げられた。
「あっっ、天界来ちゃった!なんかここ雲のなか?なあシャリオなんで雲のなかなんかで止まってるんだ?夢?これにゃも実はずっと寝てて、寝オチ!?」
シャリオは腕を組んでとらを見下ろし笑いを堪えている。
「……っ!ふ、くくっ」
「とら、ここ雷様の黒雲のなかだよ。あたしもシャリオ君に天界連れてってもらうことになってね、今とらの横にいまーす」
「おーい!おいおいおいおい!なにやってんすか!!ドS二人組!とらをいじめなーい」
げ。タンペランス氏登場。みられた!
「シャリオはまあなんとなく分かる図だが、万織までだとは思わんだ……」
とらのレインコートのフードを上げてあげて、とらの視界を広げるタンペランスさん。
「にゃにっ!?どゆことだ!?」
周りを見渡し、キョロキョロするとら。
「可哀想にとら……」
タンペランスさんがとらを抱き上げる。
「よーしよしよし」
「え?なんかタンペランスの様子がおかしい……」
冷や汗浮かべるとら。
「とら、レインコートについてる帽子が顔の前に落ちてきたんだよ。……じゃ、タンペランスもみかねて人間界に姿現したことだし、買いものしにちょっくら、天界行こうか万織!」
「押忍!」
じゃあ、どうやっていくのか分からんが、ちょっくら天界行ってきます。
つづく。