第1話目 ━━あー平和だ。面白いなぁ
とある一軒家の庭で、夕暮れの刻にあたしと虎猫は、ダベっていた。
この虎猫、人みたいに喋れるんだなー。
風貌は黄土色している。
人称は、『にゃも』。
猫を頭なでなで。
猫を頭なでなで。
猫ちゃんなでなでしてたら顔見上げてきた。
顔見上げてきて「にゃもの首輪、善かろう?」と、問うてきた。
問うてきたからあたしはこう答えた。
「やはりな、虎猫の首輪といえば赤地の革に金の鈴な。これ王道そして善いと思うのだよ。」
こう答えたら、
猫が二時の方角を見てこう言った。
「王道といえばな、猫缶は油加減こってり系のほうが、にゃもはタイプなのだ」
16時の夕暮れ。
一匹の虎猫“とら”とあたし“万織”はまだ沈まぬ夕日を見ていた。
心地よい
風は南から
来るもんだ
「一句、できたな。さすが万織だな」
「最近、あったかくなってきたからな、やっとあたしの部屋の掃除ができたんだ。それまで寒いからな、お母さんに暖房使わせてもらえなくて、掃除は御預けしたんだー。」
「にゃるほどな。確かに、寒いのは、不快だな。━━にゃもも、一句作ってみる。」
「おう、頑張れ!」
「━━━━うむ。頑張る。」
ところでさ
あの雲かたち
ゴムみたい
「……もうひと息!」
「う、えぇ……えーと、」
ところでさ
あの雲いろが
イカのバター醤油焼きみたい
「ああ、夕方だからな。」
「だろ!?でも、もうひと息ほしいところだな。こういうの、なんて言うんだっけ」
「字余りな。」
「そうそう、字余りな。」
「うーむ、もうひと息、ほしい、か。」
「要るぞ、もうひと息。」
「欲しいか?」
「うん、欲しいぞ!」
「よーし、あたしがチャレンジしてみるぞ」
「が、頑張れ!!」
春の風
およぐ雲は
モンシロチョウ
「おーー!」
「季語がダブってんなー」
「キビシーな!自分で作っといて!!にゃもの一句なんか、『ゴムみたい』と『イカのバター醤油焼きみたい』とか言っちゃったぞ!」
「嗚呼、確かにイカのバター醤油焼きはゴムみたいだ。とらは、面白いなぁ」
そろそろ夕日が沈み始める。
それを一軒屋の庭で、眺めながらダベる、あたしと一匹の虎猫。
あたしの名前は万織で、虎猫の名前は、とら。
一人と一匹の、気まぐれな猫的会話を繰り広げる日々。
そんなゆるーい物語は、始まったばかりだが、どうなることやら。
※まだアクシデントの予定はまったくありません。