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ぶつだんはワープ穴☆  作者: 有羽妃
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色即是空

「目に見える物質以外のものを、テクノロジーで見ようとするのが科学なら、心で見ようとするのが宗教であり、スピリチュアルってわけだ」

「スピリチュアル……」

「たしかにすこしばかりうさんくさいものもあるし。目に見えないのをいいことに、嘘っぱち並べるやつもいる。でも、古代からある宗教っていうのは、おおむね本質を突いてるな。解釈で歪んでる部分や間違っているところはあるが、今見ても、悟ってるやつは悟ってたんだなっておもうよ」

「本質──」

「般若心経なんか、かなりおもしろい。『色即是空』なんて言われると、ぎょっとする。短い漢文だから、一字の解釈次第で意味が変わるし、注釈本なんてあてにならないけど、とりあえず有り難がって唱えていればいいんだ、って構造と、あのお経が放つシンプルで高次な波動がすばらしい。意味がわからなくても唱えているだけでいいなんて、すごい発明品だとおもわないか。禅の思想といっしょに海外にまで広がっているのも道理だし、必然だな。わかるやつにはわかる、っていう」

「般若心経かぁ。経本買って帰ろうかな」


いっしょになって話を聞いていたらしい青年が、ぽつりとつぶやく。

経本くらいなら、サユリにも売ってやれるはずだ。

山とある経本の区別などつかないが、般若心経と書いてあれば、字くらいは読めるに決まっている。


「お経本なら、あちらに……」

「お嬢ちゃんも唱えるといいかもだけど。でも、うさんくさいとおもいながら唱えるんじゃ、意味ないかな。好きな雑誌やらマンガやら見て、ステキ、とか言ってる方がよっぽどいい波動が出るとおもうよ」

「──それって。問題は気分、ですか」

「そうそう。気分の問題。俺が、ワンルームに不似合いな仏壇をすすめるのも、半分くらいは気分の問題」


サユリはぎょっとして、男性と青年の顔を見比べた。

そんなことを言ってしまっていいのだろうか、とおもうが、青年はべつに失望した顔はしていない。

先刻承知だと言わんばかりに、男性に信頼しきったまなざしを向けている。



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