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ぶつだんはワープ穴☆  作者: 有羽妃
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宝探し

そうして、サユリから経本もいっしょに入れた紙袋を受け取ると、青年は黒檀の仏壇の方を名残惜しそうに見た。


「じゃあ、今度の日曜日に来ますから。そう伝えておいてください」

「お嬢ちゃん、どうもありがとう。笑っていれば、いいことあるからね」


男性は、つられるような笑顔で手を振って、青年とともに店を後にした。

間もなく帰宅した母に、お客さんが仏壇を買いに来たんだ、と言ってもまるっきり信じてはくれなかった。

でも、大事なときに留守をしていたことともども、それほど頭にはこない。

それどころか、実際のところは売っていないのだから、見て帰った、と言った方が正しいけど、などと考え直す余裕まであった。

土曜日に帰ってきた祖父母と入れ替わりに、サユリは母とともに車で自宅に帰った。

いちおう、日曜日はぜったいに家にいてくれと祖父にしつこく念押しはしたものの、結局、仏壇が売れたのかどうかは知らない。

海外旅行のお土産は、豪華さとは無縁な絵ハガキの数々だったが、サユリは心底うれしかった。

祖母が、行った先々で、せっせと孫に見せたい景色の絵ハガキを買ってくれている光景が、目に浮かぶようだったから。

いつか自分でもこことここに行こう、と美しい景色を見ているだけで夢がふくらむ。

夢があることを考えていいのだと言ってくれた男性は、今ごろはどこか外国の空の下、だろうか。

若い青年の方は、豆本の般若心経を愛用してくれているだろうか。

たったひととき、名も知らない彼らといっしょにすごした時間は、サユリにとって本当に夢のようなできごとだった。

話してもらったことのすべてを詳細におぼえているわけではない。

でも、笑顔でいること、『喜び』を振る舞うこと、物を大事にすること、忘れられない教えはたくさんある。

そして、「生きてる内に悟っちまえ」という、あのことば。

死ねば、誰でも、自分がほんとうはどう生きれば良かったのかを悟れる、と言っていた。

どう生きたくて、生まれてきたのか。

死んだあとに悟って、しまったとおもって、そして自分も、もう一回生まれてきたのだろうか。

そんな自覚はさっぱりないけれど。

ただ、このまま、目に見えるものや、常識や、不安とか恐怖とか、そういうものに囚われていてはいけないのだろうな、とはおもう。


「アセンション……か」


階段をのぼる方法。

エスカレーターやエレベーターに乗る方法。

そして、最速の、ワープ穴。

ワープ穴は、よかった。

思いだすだけで笑えるくらい、けっさくだ。

仏壇は、高次へのワープ穴──

そんな愉快なことに、どのくらいの人間が気づけているのだろう。

今日も、日本のどこかの小さな仏壇屋さんで、誰かが、時代に埋もれた宝探しをしているのかもしれない。



最後まで読んでくださってありがとうございました。


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