タイムカプセル
仏壇は、ワープ穴──
そう言われただけでは、気分の問題としかおもえなかった。
けれど、理由を聞けば、なるほどとおもう。
豊かに、安らいで、健やかに暮らすために必要なものだ、というのも納得だ。
こんなふうに言われたら、もし実家のマンションに仏壇が鎮座していたとしても、邪魔になんておもわないだろう。
でも、実家にはないし、唯一友だちの家で見たのも、洋風家具のようなおしゃれで今風な仏壇だった。
必要な理由を、しきたりだ、のひと言で片付けてきたのかもしれない。
それだと、古いしきたりなんて要らないとおもうし、外見のおしゃれさだけで選びたくもなるだろう。
すべては、波動、なんて視点を持っていなければ、金輪際気づきようがないことなのだから。
「もうひとつ、おまけの理由」
サユリは男性の顔を見た。
まだあるのか、という心の声が聞こえたように、男性はにまにましている。
「ほんっとうにふしぎなことだけど、広告ばんばん出したり、いわゆる売りつける手法をとらずに、売れるに任せてきた仏壇屋って、急激な時代の変化の中で取り残された──と言っちゃ悪いけど、そこだけまるでタイムカプセルか何かのように、きちんと丁寧に物が作られていた時代の、国産の上質な商品というのが、当時のままふつうに売られているんだよな」
それは、つまりは古い物ってことなのでは、とサユリはおもった。
でもまあ、存在自体が古くさいのであって、どーんと扉を全開で置かれた金仏壇など、まぎれもなく金ぴかだ。
古いかもしれないが、ボロくはない。
サユリにはわからないが、今も高次な波動というのを放っているのかもしれない、とおもう。
「仏壇も見るからに格調高いが、仏具も、職人の手で作られたものがごろごろしてる。手掘りの金物やら、漆器やら、見る人間が見たら、いっこでいいからわが家に連れて帰りたい、とおもうような品物が、その波動からしたら今時信じられないような値段で売られてたりする。どうなってんだ、とおもうけど、時代が変わったからって処分されることもなく残っているのは、商品の持つ力だよな。これだけきちんと作られているものは、いつか価値を見出す人間がきっと出てくる、っておもわせる力があるからだろう」
サユリは、男性と青年のすがたを見比べた。
彼らという客を祖父が迎えていたなら、どんな反応をしただろう。
この日のために店を開けていたんだ、とおもったかもしれない。
店を閉めて旅行になど行けない、と言い張ったのは、こんな日が来るとおもっていたからなのだろうか。




