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ぶつだんはワープ穴☆  作者: 有羽妃
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アセンションの装置

「それで、どうだった? やっぱりこれがいいか?」

「はい。これだな、って気がします」


問われた青年が、神妙な顔でうなずいた。

黒檀の仏壇、というだけなら、他にもある。

サユリには、他とどうちがうのかがわからない。

もちろん、形がちがうことくらいはわかるが。

彫刻やら、細工の凝っている方が手が込んでいて高いのだろうな、ともおもう。

ところが、値段を見れば、そう一概にも言い切れないようだ。

サユリに、どこで造ったかとか、値段のちがいだとかを訊かれてもまったく答えられない。

その点で言えば、ハートだか直感だかで選んでもらえるのは有り難かった。

解説を求められないのは、本当に助かる。


「何かこの、中の扉のここんところの彫刻がツボです」

「そうか。これって、普段はこうやって、戸はたたんで開けたままで置いとくわけだけど。まあ、内側だけ閉めたっていいさ。どっかの宗派で祀るわけじゃないし、罰とか祟りとか、そんなもんねーからな。おまえが、アセンションの装置として、こいつにいかに貢ぐかってだけの話だ」

「わかっています」


またもや、知らない単語が出てきた。

アテンション、プリーズ、的な。

どういう意味か、見当もつかない。

ただ、サユリにも、こいつというのは仏壇のことで、つまりは仏壇を何かの装置だと言ったのだということだけは、わかった。


「アテンションって、何ですか」


素直に訊いてみたら、男性が振り返った。


「お嬢ちゃん、いい質問だ。アテンションじゃなくて、アセンションだけどな」

「…………」


大したちがいではないではないか、とサユリはおもった。

注目の装置、ではたしかに変だが、仏壇という物体がやたらと目を引くことはたしかだ。


「アセンションってな、上昇って意味。ここでいうアセンションとは、波動の上昇だ。低次から高次へ。高次な波動を持つものほど、目には見えない。目に見えないものに、少しでも近づこうっていうのがアセンション。悟りを開くとか、神に近づくとか、まあひと言で言うなら、そういう境地をめざすこと」

「は、あ……」

「いっしょにいて安らぐ人っていない? ぱっと見、好感が持てる人とか。高次な人を、けっこう直感で見分けてるとおもうけど」


サユリは男性を見た。

ひと言で言うならオジサンだが、会話を避けたいとおもうようなオジサンでないのはたしかだ。

どんな職場にしろ、こんなひとが上司だったら、嫌な気はしないかもしれない、ともおもう。

それが好感だ、と言われれば、わかるような気はする。

それに、頭で考えているというよりは、なんとなくそう感じるのだ、という方が正しかった。

そういうのを、直感と呼ぶのだろうか。



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