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──ギムウェルムに来て7日目。
今日は、ギルドで黒龍の素材と報酬を受け取り、この国を経つ予定でもある。
「──荷物はこれでよしっと。んじゃそろそろギルドへ行こうか」
「ええ」
宿に置いていた荷物を纏め、異空間収納へと収めた俺達は、一週間お世話になった宿を後にし、冒険者ギルドへと向かった。
☆
「──おい、あいつだろ? 黒龍を一人で倒した奴ってのは」
「ああ、そうらしいな。それに、あんな可愛い子と一緒にいるなんて……ちょっと顔がいいからって調子に乗りやがって」
冒険者ギルドへ入ると、中にいた冒険者達の視線が一気に俺達へと向いた。
ひそひそと話し声が聞こえるが、その内容は黒龍を倒した俺への興味や、嫉妬である。
まぁ、もう慣れたけどね………
はぁ………
──俺達は昨日と同じく、受付へと向かい、ギルドマスターの私室へと案内される事になった。
コンコンッ
「マスター、アラン様達がお見えになりました」
「入ってくれ」
「失礼します」
ギルド職員に案内され、俺達はギルドマスターの私室へと入る。
「お前達、何度も足を運ばせてすまないな」
「いえ、大丈夫ですよ。それで早速なんですが、素材の方は解体出来てるんでしょうか?」
「ああ、黒龍は既に解体を済ませてるから安心してくれ。それで、これが肉の半分の買い取り分で、500万メル入ってる。確認してくれ」
そう言われ、渡された袋を確認すると確かに大金貨が5枚入っていた。
それにしても、肉を半分売っただけで500万メルって高すぎないか!?
昨日の報酬と合わせて、4000万メル以上稼ぎ、一気に金持ちになってしまったな。
「あの、黒龍の肉はそんな高く売れる物なんですか?」
「そうだ。ドラゴンの肉は滅多に市場に出回らなく、希少価値が高い。ましてや黒龍ともなると、その巨体から取れる肉の質や量も断然良いからな。今回売って貰った肉だけでも、王族や貴族達が買い占めて、すぐ完売するだろうな」
ほうほう。
そんなに美味しいのか。
これは自分達用に半分は残しておいて正解だったな。
「では、他の素材も渡すからついて来てくれ」
俺はこくりと頷き、ウォーレンさんの後をついていく。
──そして俺達は、解体場の横にある倉庫に入り、黒龍から取れた素材を異空間収納へと収納していた。
ただ少し疑問だったのが、肉や肝などはどう保管しているのか少し気になったが、ちゃんと巨大冷凍庫のような物が存在しており、少しホッとした。
この時代の冷凍庫は技術で作られている訳ではなく、氷魔法を付与した魔石を使っているみたいだけどね。
「──これで、全部ですね。ありがとうございました。流石に解体は出来ないんで、助かりました」
「いや、こちらから頼んだ事だ。気にしないでくれ。──それで少し話しは変わるんだが、お前達はいつまでこの国にいる予定だ?」
「この後経つ予定ですが、それがどうかしたんですか?」
「この後ってもう経つのか!? うーむ。いや、国王がな、国の危機を救ってくれたお前達に一度会いたいと言ってるんだが………なんとかならないか?」
国王!?
なんだがとてつもなく面倒な事になった……
それにお姫様の件もあるし……
「あまり時間は取らせない。少しでいいから、会ってくれないか?」
ここまで言われたら仕方ないか……
バレたらバレたらで謝ろう……
「はぁ……分かりました。リアラもそれでいいか?」
「へっ!? あ、う、うん……」
リアラも王様と会う事になるとは思わなかったらしく、かなり緊張しているみたいだな。
「すまない。時間も余り無いみたいだし、早急に馬車の手配をするから、ギルド前で待っていてくれ」
「はい、分かりました」
そして、俺達はウォーレンさんの言われた通りギルドの前で馬車を待つ事に。
☆
「──あ、あの!」
「ん? 君は、あの時の?」
ギルドの外で馬車を待つ俺達に、一人の女性が声を掛けてくる。
その女性とは、昨日森の中で俺が助けた女性だ。
歳は俺達と変わらなく、ほんのりと小麦色に焼けた健康的な肌に、肩に掛からない程度のショートボブで、目はクリクリとしており、その組み合わせが小動物を思わせ、つい撫でてあげたくなるような、体育会系美少女だ。
「ニアって言います! 昨日は、森の中で助けて頂いて、ありがとうございました!」
女性は感謝を述べ、勢いよく頭を下げた。
「いえいえ。俺はアランって言います。もう怪我は大丈夫?」
「はい! アランさんのお陰様で、かすり傷一つもありません!」
胸の前で両手の拳を握りながら、力説するかのように元気良く彼女はそう告げた。
「歳も変わらないし、アランでいいよ。それに敬語も無しでお願いね」
「うん! なら、僕の事もニアって呼んでよ!」
そう告げると、ニアは手を差し出す。
てゆうか、まさかの僕っ子!?
僕っ子美少女が本当に存在するとは……
さすが、異世界と言うべきか。
「ああ、わかったよニア」
俺はニアの手を握り、握手をする。
やっぱりニアは、見た目通り活発な子みたいだ。
「………アラン?」
隣を見るとリアラは頬を膨らませ、不機嫌そうに、こちらをジトっと睨んでいる。
やべっ。
すっかり二人だけで、話し込んでしまった。
「はぁ……まぁ、いいけど。あの、私はリアラって言います。私にも敬語とかいらないから、よろしくねニア」
「うん! こちらこそ、よろしくねリアラ!」
お互いの自己紹介も済み、リアラの機嫌も元に戻ったみたいだ。
「それで、アラン……いきなりで申し訳ないんだけど、お願いがあるんだ……」
「ん? どうした?」
「僕もアランのパーティーに入れて欲しいんだ!」
「え? パーティー?」
「だ、ダメかな?」
ダメと言うか、俺達冒険者ですらないんだけど……
「えっとねニア? まず、私達冒険者じゃないの」
「ぇえええ!? でも昨日、魔素の異常現象で森にいたよね? 緊急クエストを受けて来たんじゃなかったの?」
「いや、俺達は色々あって、ギルドマスターのウォーレンさんから頼まれただけなんだよ。冒険者ではなく、旅人だよ。それに今日この国を出る予定だしね」
「そ、そうなんだ……」
さっきまで活発だったニアが、今は一気に落ち込んでいた。
なんだか、気の毒だけど仕方ないよな。
「そ、それなら、僕も、旅に連れて行って欲しい!」
「「ぇぇえええええ!?」」
俺とリアラは、まさかのニアの発言により驚きを隠さずにいた。
「………ダメかな?」
目を潤ませながら、ニアは覗き込むように俺にそう告げる。
こんな顔されたら、ダメとか言えないじゃないか……
「………理由は?」
「強くなりたいから………かな……」
とても哀しげな表情で、彼女はそう答えた。
(ニアにもきっと色々と理由があるんだろうな……)
正直、こんな顔されたらほっとけないよな。
「うん、わかった。リアラも、それでいいよね?」
「ええ、そうね。私も、問題ないわよ」
リアラもニアの表情を察したのか、問題なく受け入れてくれたようだ。
「本当!? 二人共、ありがとう!」
旅の同行を許可すると、さっきまでとは打って変わり、ニアに笑顔が戻る。
やっぱりニアには、笑顔が一番だよな。
──それからは、今後についてニアへと話す。
俺達が今から王城へ向かうと知ると、ニアはかなり驚いていた。
ひとまず近くのカフェでニアは待っていると告げ、この場は一旦解散した。
それから程なくして、ようやく馬車が到着する。
「すまないな、二人共。時間がないのに、待たせたみたいで」
「いえ、大丈夫ですよ」
「助かる。それじゃ二人共、王城へ向かうから、乗ってくれ」
「「はい」」
そして俺達は、馬車へと乗り込み、王城へと向かったのだった。