アースガルドの常識
「……知らない天井だ」
俺はとりあえず、お約束な言葉と共に起き上がる。
なんか虚しいな……
──それはさておき、気がついた俺は周りを見渡す。
恐らく小屋の中であろう、ベッドの上で俺は目を覚ました。
一応、服も来ているし裸じゃなくて良かった。
白のカッターシャツに、黒のズボン。
学生服を脱いだ時の格好と似ているが、まあいいだろう。
因みに、これらは私服なのでステータスを確認してみるが装備扱いにはなっていなかった。
まぁ、当然か。
そして小屋を見渡すと、少しボロいがキッチンが付いていた。
キッチンには、皿や調理器具など一通りは揃っているが、調味料などは無かった。
小屋の片隅には、結構大きめな木箱があった。
俺は木箱を覗いてみると、生活用品のタオルや歯ブラシ、調合する際に必要なすり鉢や、薬を保存するような小瓶等が入っていた。
それに、赤い石が入っていたので俺は鑑定を使って見る事に。
<着火石>
魔力を通すと小さな火が出る。
焚き火などに使われる。
なるほど。
この世界のライターって事だな。
他にはお金の詰まった袋と、【バームウェルムの知識】と書かれたかなり分厚い一冊の本を見つけた。
そこには、この世界の一般常識や知識が書かれていた。
まず、この世界には【アースガルド】と呼ばれる大陸がある。
そこには『人間』『獣人』『エルフ』『魔族』と言った異種族が存在する。
それ等の種族は、過去戦争などして争ってはいたが今はそれらしい戦争もなく、全ての種族が共存している。
まあ、平和って事だ。
うむ。素晴らしい。
俺はてっきり魔王と人間達が争っていると思ってたからなあ。
そして通貨については世界共通みたいだ。
銅貨一枚で10メル
大銅貨一枚で100メル
銅貨十枚で大銅貨一枚と言った感じだ。
これは銀貨以降でも同じだ。
銀貨:1000メル
大銀貨:10000メル
金貨:100000メル
大金貨:1000000メル
白金貨:10000000メル
日本とほぼ同じ物価なので、大金貨は100万円、白金貨は1000万円と言った計算になる。
アースガルドの平均月収は20万メル。
小屋にあった袋の中にはぴったり20万メル入っていた。
これで街へ行っても一月は困らないな。
そして俺は、二時間ほどバームウェルムの知識を読んでいてある程度の常識や知識は身につけた。
とりあえず分かった事を纏めると、こんな感じだ。
※アースガルドと呼ばれる大陸
※他種族が共存している
※通貨価値
※MPは自然回復する
自然回復量は通常一時間で10%
※職業外のスキルや魔法は覚える事は可能だが、専門職の人間より覚えるペースが遥かに遅いし、スキルレベルを鍛 える事にもかなりの時間を有する。
※職業にはそれぞれ、下級職、中級職、上級職ある。
薬師や僧侶は下級職だ。
一定の職業レベルを上げる事で自動的に中級職、上級職へと切り替わる。
※職業専用のスキルを使えば、その職業に就いている場合は少しだが、経験値が貰える。(商人なら物を売る、薬師なら調合するなど)
※職業は転職する事は可能だが、転職する際、教会に10万メルの寄付が必要。
転職した場合は下級職レベル1からになる。
それまでに獲得したスキルや魔法は引き継ぎ出来るが、ステータスは引き継げない。
普通の人は魔法やスキルが欲しいからと言って、職業を引き継ぐ事はしないそうだ。
ステータスが下がるので、せっかく覚えた魔法はMPが足りなくて使えなくなるからだ。
わざわざスキルの為に高い金を払い、転職する人は少ない。
※職業のランクが上がる事により自動的に職業レベルは一に戻るが、ランクが上がる度にステータスに大幅補正が入る。
※上級職には上限レベルはない。
過去に、英雄と呼ばれた人物達の上級職の最高レベルは65。
一般的には下級職が大半を占めており、ベテラン冒険者やエリートと呼ばれる人物は中級職が多い。
※職業レベルが一定になると新しいスキルを覚えるが、ス キルレベルが上がる事はない。
スキルレベルはそのスキルを使用する事で上昇する。
魔法やスキルレベルをMAXにすると、職業ランクにより上位の魔法やスキルに変わる事がある。
※一般人の平均ステータス(村人)
名前:◯◯ 性別:◯ ◯◯歳
職業:村人Lv1〜5
HP:15〜25
MP:5〜10
物攻:4〜7
物防:3〜6
魔攻:1〜3
魔防:2〜5
敏捷:3〜6
※サブ職業を持つ俺だけは、転職は出来ないみたいだ。
※ステータスは訓練すれば、上昇する。
まだ全てを読んだ訳ではないがこれは、かなり良い情報を知れたと思う。
そして、サブ職業がある俺は転職が出来ないみたいだ。
まあ元々、変えるつもりはないからいいけどね。
とりあえず異世界だし、ある程度の力は付けて置かないといけないよな。身を守る力も必要だし。
それに俺は、第二の人生この異世界での目的は旅をしようと思ってる。
理由は極めて単純だ。
ただこの世界を見てみたい。ただそれだけだ。
薬師で病気を防ぎ、僧侶で怪我を治す。
旅をする際、病気と怪我が一番心配だからな。
それに旅は、男の浪漫だろ………?
俺の第二の人生だ。とことん、異世界を楽しむ予定だからな。
「旅をするならまず、多少は強くならないといけないよなぁ。よし、まずはこの小屋を拠点に少し鍛えるか」
そんな事を呟きながらも、俺はひとまず小屋から出る事にした。